青年期 42

更に翌日。



朝早くからお姉さんとダンジョンに修行に行き、夕方に帰ると実家で家族揃って夕飯を食べた。



その後…



「おっと、そろそろ帰る時間だな」


「あ、もうこんな時間…」


「楽しい時間はあっという間ですのね」



夜も遅くなってきた頃、俺が時間を見ながら言うと弟と妹も時計を見て時間を確認する。



「じゃ、俺はエーデル達を寮に送ってそのまま宿屋に戻るから」


「ええ」


「必要ないとは思うが…気をつけてな」


「お兄様よろしくお願いします」



俺の手を上げながらの帰りの挨拶に母親が手を振って返し、父親も挨拶を返すと妹がワクワクした様子で軽く頭を下げた。



「とりあえず王都の外に出よう。魔物の姿を見られたら面倒だし」


「そうだね」


「分かりました」



俺が指示を出すと弟と妹は素直に聞いて俺の後をついてくる。



そして王都を出て直ぐに俺は変化魔法を使って分身し、送迎は分身に任せて本体の俺は宿屋へと帰った。



「へー、そっか…そんな手もあるんだ」


「今の俺ならお前らを送った後に解除すれば往復の手間が省けるからな」


「なるほど」



弟が意外そうに呟くので分身の俺が理由を話すと妹は納得したように返す。



「一応飛ばされないようにこのロープを腰に巻いてくれ」


「分かった」


「一本のロープで…ですか?」



さっき本体の俺から受け取ったロープを弟に渡して指示を出すと弟は腰にロープを巻き、妹が不思議そうに確認してする。



「おう。振り落とされないように念のため…だな」


「分かりました」



分身の俺が理由を話すと妹は弟からロープを受け取って同じように腰に巻いた。



「んじゃ……背中に乗って」


「すごい…!本当にドラゴンになれるんだ…!」


「ドラゴンの背に乗れるなんて…!まるで夢のようですわ…!」



10m級のドラゴンに変身した後に地面に伏せながら言うと弟と妹は興奮しながら分身の俺の背に乗る。



「行くぞ」



分身の俺は手をゴブリンの爪に変化させてロープを結んだ後に確認を取り…



スレイプニルの脚力で斜めに跳躍してから飛行した。



「うーわー!すっごい!こんな速いの!?」


「こんな速度で飛べるなんて…!流石はお兄様!!」



当然ワイバーンの技である空力操作で風とかの影響を受けないようにしてるので、弟と妹は楽しそうに大声ではしゃぎ出す。



「これでも抑えてるんだがな。あんまり速度を出しすぎると目的地をすぐに追い越して旋回しないといけなくなるから」


「そうなの!?」「そうですの!?」



分身の俺が説明するような感じで言うと弟と妹が同時に驚いた。



…それから10分ほどで俺もこの前まで通っていた学園が見えた。



「降りるぞ」


「え?うわあああ!!!」

「きゃああああ!!!」



寮の近くの山の上で弟と妹、分身の俺をスライム化させて落下すると二人とも悲鳴を上げる。



「…あれ?」


「…え?」



が、地面に衝突してもプルンと少し跳ねて転がる程度で着地したので二人は不思議そうに周りを見て自分の手を見た。



「いやー、すまんすまん。スライム化してるって説明すんの忘れてた。まあでも実際に体験したからいいか」


「…いや、事前に説明してよ…本気で死ぬかと思った…」


「本当ですわ…周りの景色がスローに見えて地面が徐々に迫って来てましたもの…」



分身の俺が笑いながら謝罪すると弟が疲れたように…呆れたように呟くと妹も同意する。



「ほう?リーゼ、その感覚を忘れるなよ。…って言っても無理か」


「「え?」」


「…どういうこと?」



分身の俺の発言に二人は不思議そうな顔をした後に弟が怪しむような感じで聞いてきた。



「なに、今のは死ぬ直前の『超集中』ってヤツだ。生き残る選択肢を探すために周りがスローに見えるほど脳がフル回転してるって事で…つまりソレを意識的に出来るようになれば、みんなとは違う世界を生きる事になる」



まあ負担も凄いから使い過ぎるとぶっ倒れるが。と、分身の俺は説明した後に欠点である危険性を補足する。



「…みんなとは、違う世界…」


「と言ってもたとえ見えていても身体が動かなければどうしようもないわけで。それに…順応もしない内から無理やりついていくと身体の負担も大変な事になる」


「…リーゼは強い力を身につけようとしてる…って事?」



妹の呟きに分身の俺が注意するように話すとイマイチよく分かってなさそうな弟が確認をしてきた。



「簡単に言えば、な。まあとりあえず俺は帰るぞ」


「あ、うん」


「ありがとうございました」



分身の俺は適当に返した後に別れの挨拶をして分身を解除する。

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