青年期 40

…翌日。



朝から父親から呼び出しを食らったので家に帰ると…



「兄さんお帰り」


「お兄様!騎士になられたんですって?」



珍しく弟と妹が二人一緒に帰って来ていた。



「ああ、お前ら帰ってたのか。なんか知らんが西の国境から王都に戻るや否や叙任式の案内がきてな」


「…ココから西の国境まではどんなに早くても3日はかかると思うんだけど…叙任式って確か防衛に成功した翌日だよね?」


「えーと…報酬貰った次の日だから…多分そう」


「…おかしくない?」



俺が適当な感じで説明すると弟に確認され、曖昧な感じで肯定すると納得出来ないようなな感じで聞く。



「…確かに…もしかしてお兄様が参加出来ない状況なのを知ってて嫌がらせを…?」


「さあ?とりあえず叙任式のやつは南の国境を防衛した功績で、って話だったから本来ならもっと後にやる予定だったんじゃね?たまたま俺が王都に居たから直ぐにやっただけで」



妹の予想に俺も適当な感じの予想を話す。



「でも兄さんはどうやって王都にすぐ戻って来れたの?」


「変化魔法でドラゴンに変身して飛んだ」


「ドラゴンに!?」


「ドラゴン!?」



弟が不思議そうに疑問を聞いてくるので方法を話すと妹にも驚かれる。



「急げば音の速度なんて簡単に超えられるし、普通に飛んでも王都までは一時間もかからんかったぞ」


「い、一時間で国の端まで移動できるの…?」



俺の説明と体験談を聞いて弟は驚愕しながら呟いた。



「帰る時に寮まで送るか?多分10分15分で着くと思うけど」


「いいの!?やったー!」


「流石お兄様!是非お願いしますわ!」



実際に体験させるために俺が提案すると弟と妹は嬉しそうに喜ぶ。



「帰るのは明日の夜か?」


「うん。本当は移動時間を考えて昼過ぎには帰る予定だった」


「結構遠いからな…5時間ぐらいだっけ?」


「それぐらい。早いと4時間半ぐらいで着くけど」



俺の確認に弟は予定を話すので距離や時間を考えながら尋ねると笑いながら肯定する。



「あとお兄様、お昼ご飯のことなのですが…」


「何か食べたいのがあるのか?」


「お兄様が作る物ならなんでも!」



妹が話題を変えて遠慮するように言うので俺が尋ねると俺の料理を要求された。



「なんでも、か…じゃあ簡単に馬肉の刺身と猪の水炊きとかかな」


「あ、今回は揚げ物は無いんだ」



俺の適当に決めたメニューを聞いて弟が少し残念そうな顔で言う。



「この前の叙任式の時に父さんに魔物の肉をほとんど渡したから手持ちにカースホースとブルボアとアラジカの肉しか残ってなくてな」


「…仕方ないだろう。普段から毎日のように確認されている上に式典の場で直接催促されてしまったのだ…」


「私も夫人達と顔を合わせる度に確認されるのよ。こちらから連絡すると毎回言ってるのに…」



俺が揚げ物を除外した理由を話すと父親が言い訳をするような感じでため息を吐きながら呟き、母親も愚痴るように呟いた。



「まあ学園でもウチの飲食店で食事した事を自慢気に話す伯爵家の先輩とかもいるし…」


「私も年齢性別問わず『どうやったら予約が取れるのか』と、よく聞かれますの」


「へー…俺が在籍してた頃は俺は一度も聞かれた事ねぇけどな…」


「…そうなの?」



弟と妹も両親に共感するように学校での事情を話すので俺が意外に思いながら言うと弟は驚いたように聞いてくる。



「おう。まあそもそも貴族の子息令嬢達とはほとんど接点が無かったんだが」


「ああ…兄さん一般クラスだったから…」


「ある意味羨ましい…侯爵令嬢や伯爵家のご子息達に印象を悪くする事なくやんわり断るのはとても面倒な事ですし…」


「分かる分かる。暗に特別扱いしろって言うならまだマシな方で直接特別扱いしろって言ってくる人もいたりするし」


「あの人達は『材料が足りない』と何度言っても理解しようとしませんもの」



…弟と妹は両親と同じくお互いに愚痴で盛り上がり始め、いつのまにか俺一人だけ蚊帳の外状態になってしまった。



「…あ。そういえば兄さんに聞きたい事があったんだけど…」


「なんだ?」


「噂では兄さんが兵を率いて防衛した…って聞いたんだけど、どこまでが本当なの?」



愚痴を言ってスッキリしたのか弟は話題を変えるように聞き、俺が聞き返すと侯爵の所での話を確認してくる。



「俺は噂の内容を知らんからどこまでって言われてもな…とりあえず初日に人材不足で傭兵達の指揮を任されて、確かその翌日に全ての兵の指揮を任された」


「…そんなことある?」


「流石はお兄様…!凄い…!」



俺の話を聞いて弟が驚きながら聞くと妹は目を輝かせながら褒めてきた。



「まあ最後は一騎打ちで終わりよ。辺境伯のトコでもそうだったけど」


「あ!それ!疑問に思ってたんだけど、一騎打ちなんて戦場で実際に起こるものなの?」


「俺の方から何回も申し込んでるからな。流石に相手も最初は無視するけど敗勢になると万が一を狙って受けざるを得なくなるし」



雑に話を締めくくると弟が食い気味で聞いてきたので…



俺は一騎打ちに至るまでの経緯と状況を軽く説明する。



「へー、そうだったんだ」


「俺としてはお互いに兵の損害が出る前に、最初の申し入れの時に受けて欲しいんだけどな。それまでの時間も無駄になるし」


「流石にそれは無理でしょ」



意外そうに呟く弟に効率重視の希望的な考えを言うも微妙に笑いながら否定された。



「戦争とか戦いってのはそんな単純なモンじゃねぇからな…大将同士の一騎打ちで勝負がつくんなら軍とか不必要になっちまう、ってのが…な」


「軍略、戦略、戦術…人数が揃う事で意味を持って効果的になる事もあるからね」


「ふっ…お前達が居ればもしもの時の領内も安心だな」



俺と弟が戦いについて話しているとその様子を見ていた父親が嬉しそうに笑う。



「まあ兄さん一人居れば十分だよね。僕の出番なんてあるかな?」


「相手が搦め手を使って来た場合にはお前の出番だろ。もし俺が誘き出されて離された場合は戻るまで防衛しないといけないんだぞ」


「それだって少しの間だと思うけど…まあ何があるか分からないからね」



弟の笑いながらの仕事を押し付けるような発言に俺が反撃すると少し反論するように呟いて俺の意見に賛同する。

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