青年期 31
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…その後、俺も傭兵達に報告と指示をして三番目の砦へと移動、待機をお願いし…
俺は青年と一緒に城塞へと帰還した。
「…やはり負傷者の数が多いか…」
「次の行動までどれくらいかかりそうですか?」
「半数で良ければ明日直ぐにでも。全員揃うとなると…早くても一週間前後ぐらいはかかりそうだ」
城下町にある大きな建物の医療施設に運ばれた騎士達の数を確認した青年が難しい顔で呟くので、俺が確認すると行動人数での報告をしてくれる。
「…うーん…俺らが早かったおかげで重傷者が少ないのが幸いか…」
俺は負傷者の情報が書かれた報告書を見ながら呟く。
「…しょうがない…騎士団の人達を城の庭へと集めてもらえますか?」
「構わないが…どうするんだ?」
俺がため息を吐いて指示をすると青年は了承した後に不思議そうに尋ねた。
「自分の同行者が凄腕の回復術師なのでお願いしてみます」
「…あの一緒にいた女性か…そうか、ヒーラーだったのか…よし、直ぐに移動させよう」
「お願いします」
お姉さんの事を話すと青年が納得したように呟いて行動に移すので俺もお姉さんを頼るため宿屋に戻る。
「ただいまー」
「お帰りなさい。早かったですね」
「実はまだ仕事は終わってないんだ…騎士団の負傷者を治すために回復魔法をお願いしたいんだけど、出来る?報酬は払うから」
「坊ちゃんが私を頼るなんて珍しいですね…それほどの事態なんですか?」
俺が挨拶しながら部屋に戻り、仕事をお願いするとお姉さんは軽く驚いたように呟いて意外そうに確認してきた。
「いや、ただ単に早く終わらせたいだけ」
「分かりました。坊ちゃんのお願いとあれば」
俺の否定的な返答にお姉さんは笑顔で了承して椅子から立ち上がる。
「負傷者の人数はどれくらいですか?」
「直ぐに復帰できる軽傷者が2000名ぐらいで、無理すれば出れるけど少し時間がかかりそうな軽傷者が1800名、中傷者が500名ぐらいで重傷者が100人前後…ってトコかな」
宿屋から出て城の方に向かいながらお姉さんが確認するので俺は報告書を思い出しながらザックリと答えた。
「全部で4000名ほどですか…うーん…一発で治すとなると魔石が無いと厳しいですね…」
「魔石?」
「はい。魔石無しだと結構無理をしないといけなくなるので…まあ坊ちゃんの頼みとあれば多少の無理でも無茶でもしますけど」
お姉さんの難しそうな感じでの呟きに俺が不思議に思いながら聞くとお姉さんは軽く説明した後に笑って返す。
「別に今は無理させる状況でも無いから出来る範囲までで良いよ。で、魔石はどれくらい必要?」
「今回は重傷者の数が少なく、怪我の程度もそこまでじゃなさそうなので…ゴブリンの魔石一つあれば十分です」
「そう?はい」
「ありがとうございます」
俺が断りを入れて確認するとお姉さんが考えながら答えるので俺はゴブリンの魔石を取り出して渡した。
「おおっ!?もう集まってる…」
「え。事前に集めていたんじゃないんですか?」
「うん。宿屋に戻る前にお願いしたから」
「へぇー…!だったら凄いですね!」
城の中に入ると既に騎士団の人達が勢揃いしていたので俺が驚くとお姉さんが不思議そうに聞き、否定的に返すとお姉さんも驚いたように騎士団達を見る。
「…彼女が君の同行者か」
「はい」
「え…!?ヴォードル辺境伯…!?」
「では早速で済まないが…よろしく頼む」
「は、はい!」
青年が話しかけてくるとお姉さんが驚いて固まり、青年の言葉に緊張した面持ちで返して魔法の詠唱を始めた。
「お」
「おお!」
お姉さんの魔法が発動すると手に持っていた魔石が粒子状になって消え…
地面にどでかい魔法陣が現れて俺らと騎士団の人達を囲う結界のようになったかと思えば緑と白の光に包み込まれ、直ぐに結界と魔法陣が消える。
「痛みが…疲労までもが一瞬にして消え去った!なんて力だ!」
「俺は何にも感じなかったけど?」
「そりゃ無傷の人には効果はありませんよ」
青年が自分の手を見て驚くので俺がお姉さんに向かって笑いながら言うとお姉さんも笑いながらツッコミを入れるように返す。
「怪我が…治ってる!?」
「信じられん…!折れた骨が…!」
「激痛が…一瞬にして…!」
騎士団の人達も回復した自分の状態に驚愕したような反応をした。
「素晴らしい…!確かに凄腕だ。これほどの回復魔法を扱える魔法使いがまさかこの国にもいたとは…」
「回復魔法においてはこの国で先生の右に出る者はいないと思いますよ。少なくとも自分は未だに先生に並ぶほどの使い手を目にした事がありません」
「えっへっへ…坊ちゃんにそこまで褒められると照れますね」
青年が納得したように褒めるので俺もお姉さんの実力を保証するように褒めるとお姉さんは照れながら笑う。
「しかしこれならば明日にでも作戦を実行出来る。報酬はいくらだ?言い値で払おう」
「あ、大丈夫です。私は坊ちゃんの頼みを聞いただけですので」
「いくら?」
「お金は結構ですよ。いつも美味しい物を頂いておりますし」
青年の問いにお姉さんは遠慮するように言うので俺が聞くと笑顔で報酬を断るように返した。
「そう?ありがと」
「いえ、じゃあ私は戻りますね」
「うん。俺も夕飯までには帰るよ」
俺がお礼を言うとお姉さんは宿に戻るのでそう伝えて手を振って見送る。
「では我々騎士団も準備をさせるか…また明日、砦にて」
「はい」
青年も作戦に備えて準備をするようなので…
俺は一旦砦へと戻って城塞から移動して来る正規兵達を確認する事にした。
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