青年期 28
「がっ…!」
「ぐっ!」
「っ…!」
「くそっ!なんだこいつは!?」
「敵はたった一人だぞ!前は何をモタついてるんだ!」
いつものように周りの敵兵達を気絶させて倒していると、やはり敵は倒れた兵を踏み越えてまでは進軍せず…
邪魔になっている兵を退かすまで時間がかかるので敵軍の後ろの方から怒号のような声が聞こえてきた。
「どけ!貴様ら道を開けろ!…たった一人で我が軍を足止めするとはやるじゃないか。先程の一騎打ちの申し出を受けよう」
「へぇ?じゃあ俺が勝ったら全軍撤退してもらえる?」
「我にそんな権限は無い。せいぜいこの前衛部隊を退がらせる程度だ」
雑兵達をかき分けるように出てきた騎兵が俺に一騎打ちを申し入れて来るので俺が確認すると騎兵は否定するように自分の管轄を話す。
「十分。俺が負けたらアッチの砦は返す、代わりに俺が勝ったらソッチの部隊は引き上げさせてもらうよ」
「…ほう?砦を占拠したという話は本当か…面白い!貴様ら!これより一騎打ちに入る!少し退がれ!」
俺が了承して三番目の砦を指差しながら負けた時と勝った時の条件を話すと…
騎兵は笑って兵士達に命令し、一騎打ちのための距離を空けさせる。
「では行くぞ!」
俺が準備する間もなく騎兵は合図を叫ぶと薙刀のような槍を片手に馬を走らせた。
「ふっ!」
「うおっと…」
「ふっ…やりおる!」
騎兵の槍の横薙ぎに俺は鉄の棒で受けると真っ二つにされそうだったので後ろにブリッジしながら避け、バク転するように立ち上がる。
「今度はどうだ!」
「ははは」
「なにっ!?」
旋回して戻って来た騎兵が槍を下から振り上げるように振ってくるので、俺は笑って後ろ向きに仰向けに受け身を取るように地面に倒れながら避けた。
「馬上からじゃ倒れてる兵には攻撃は届かないよ」
「小癪な…」
俺のアドバイスに騎兵は楽しそうにニヤリと笑いながら呟き、槍の持ち方を変える。
「もう避けられんぞ!」
「甘い!」
「なっ…!?ぐっ…!!」
俺はタイミング良く騎兵が振るった槍の間に飛び込むようにジャンプして槍の中間を両手で掴み…
流石に人一人分の重さが追加された事で槍を手離すかと思ったのに騎兵は槍を全く離さず、掴んだまま落馬した。
「ていっ!」
「がっ…!」
「…槍を長めに持った事が災いしたね…この勝負俺の勝ちだ!」
俺がすぐさま立ち上がって鉄の棒で頭を叩くと気絶して槍を手放すので、俺は聞こえてないであろう敗因を告げて槍を拾って掲げながら一騎打ちの勝利を宣言する。
「な…!」
「なんだアイツ…化物だ…!」
「逃げろ!」
「おい!押すな!」
すると敵兵達は俺に恐れをなして逃げ始めた。
「…お」
俺が倒れてる騎兵を見ながら捕虜として連れて行くかどうか悩んでると…
何故か騎兵が乗っていた馬が戻って来て俺の前で止まるので、俺は馬に騎兵を乗せてロープで軽く縛る。
「…よし。行け」
俺が馬を軽く叩いて指示するとヒヒーン!と鳴いて逃げ惑う敵兵の下へと走って行った。
「…さて。俺も戻るか」
敵兵達の混乱してる様子を見て俺はそう直ぐには攻めて来ないだろう…と判断して一番目の砦へと戻る事に。
「ただいまー」
「戻って来たか!」
「無事そうでなによりだ!」
「…相変わらず無傷なのか…流石だな」
俺が砦の中に入りながら挨拶すると知り合いのハンター達が駆け寄って来る。
「敵の追撃が無かったおかげで騎士団の負傷者達も全員収容する事が出来た」
「そう?それは良かった」
「しかし本当にたった一人であの大軍を食い止めるとはな…」
「流石に武器を拾う余裕までは無かったけどね」
知り合いのハンターの報告に俺が適当に返すと男が感心した様子で呟くので軽くボケるように言う。
「…その槍は?」
「ああ。一騎打ちで勝ったから戦利品として貰って来た。貰う?」
「…うーん…ちょっと大きいかな…?」
「…おそらくこの大きさだと騎兵用だろう。普段使いには適していないな」
他のハンターの問いに俺が槍を渡しながら言うと受け取った後に感想を呟いて他のハンター達に渡していく。
「…あの状況でも一騎打ちを受ける奴がいたとはな…」
「俺もびっくりしたよ。でも司令官とかのトップじゃなくて部隊長とかの指揮官だったけど」
ハンターの一人が槍を返しながら呟くので俺は受け取ってしまいながら戦った相手の事を話す。
「なるほど。流石にそうだよね」
「だけどそのおかげで敵は直ぐに攻めて来ないのか」
「なんかかなり混乱してた。俺が倒した人の率いてた前衛達は逃げようとしてて、その周りの人達は攻めようと前進したいのに前の逃げようとする人達が邪魔になってて動けない…みたいな感じで」
「ほう、どうやら一騎打ちがかなり効果的だったようだな」
知り合いのハンター達が納得するので現場の様子を教えると別のハンターが面白そうに返した。
「多分今日いっぱいまでは時間が稼げるだろうね。問題は明日以降どうするか…」
「砦を防衛するにしても大軍で包囲されてしまってはな…」
騎士団を囮に敵の拠点を奪ったはいいが、それ以降の事までは考えなかったので俺が考えながら呟くと他のハンター達も同様に考え始める。
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