青年期 6

…その後、町へと向かい警備の兵に紹介状を見せると侯爵の下へと案内される。



「…傭兵か、良く来てくれた。現在の戦況は思わしくない…今は一人でも兵が欲しいところなのだ」



デカイ家の庭で大きなテーブルに大量の書類を広げていたおっさんは俺が渡した紹介状の中身を見ると現状の説明を始めた。



「おい。連れていけ」


「はっ!コッチだ」


「…じゃあまた夜に」


「はい。怪我しないように気をつけて下さいね」



…どうやら別の兵が案内してくれるらしいので門から出た後にお姉さんと一旦別れて俺は兵にそのままついて行く事に。



「…ここで指示を待て」


「はいはい」



町の端の方に人がいっぱい集まっていて…ソコの近くで案内してくれた兵がそう言って来た道を戻って行った。



「…お前さんも傭兵か?」


「ん?そうだけど」



俺が適当なところに座って待ってると一人の男が話しかけてくる。



「鎧はどうした?防具は忘れたのか?」


「いや、邪魔だから着けてない」


「…『邪魔だから』…?おいおい、これから行く場所は遊び場じゃないんだぞ。悪いことは言わねぇ、戦場に出るまでまだ時間はあるはずだから今すぐに買いに行って来い」



…男もハンターなのか、いつもと同じく私服姿の俺に警告をすると事前の準備を促してきた。



「もしかしてハンター?」


「…ああ、そうだ」


「やっぱり?ただの一般人とかじゃこんな優しい言葉をかける余裕が無いからなぁ…俺も同じハンターだから心配しなくていいよ。ありがとう」



俺の問いに男は険しい顔で肯定するので俺は嬉しく思いながらも男の警告を拒否るように返してお礼を言う。



「ハンターならばなおさら準備の大切さが分かるだろう?」


「…そうだね。じゃあ買いに行こうかな」



男が不思議そうに確認してくるので俺はポーズとして防具を買いに行く振りをするために立ち上がる。



「そうした方が良い。今回の出撃には間に合わずとも、きちんと準備を整えてから次回の出撃に参加した方が生存率は上がる」


「防具買うだけでそんなに時間かかるかな?まあいいや」


「おい!お前!どこへ行く!もうすぐ出撃の時間だぞ!持ち場から離れるな!」



男のアドバイスに俺が疑問で返しつつその場を離れようとしたら他の兵士に注意されてしまった。



「…だって。間に合わなかったみたいだね」


「…しょうがない。後ろの方で援護に徹していれば運が良ければ生きて帰れるはずだ」



俺が笑いながら言うと男は諦めたようにため息を吐いてなおも戦場でのアドバイスをくれる。



…それから10分ほどで更に15人ほどの傭兵達が来るとついに現場指揮官みたいな兵士がやって来た。



「傭兵諸君、よくぞ集まってくれた!我々の役目はこの先の戦線の防衛である!敵国であるソバルツの侵攻が激しく今現在防衛線は後退を余儀なくされている状況だ!…そして今回の我々の作戦は戦線の薄くなっている場所の補強である!」



兵士は声を張って俺らの仕事内容を説明し始める。



「激戦は必至であるが、諸君らの奮闘に期待する!では出撃ぃ!!」


「…え?終わり?」



兵士が檄を飛ばすといきなり命令を出し、集まっていたみんなが町の外に出て行くので俺は不思議に思いながら周りを見た。



「どうした?今更後悔してるのか?」


「いや…部隊の編成とかしないの?」


「ははは!まさか!寄せ集めの傭兵にそんな事するわけがないだろう。もしかして傭兵業は初めてか?」



男の笑いながらの問いに俺が確認すると笑われて逆に確認し返される。



「確かに初めてだけど…なんで?いくら傭兵だからって普通は隊を作って運用するもんじゃないの?」


「簡単だ。その時間も惜しいほどに切羽詰まっているという事だ」


「ええー…待機中の時間で最低限の隊の編成とか出来たと思うんだけど…」


「ソレを指示出来るほどの人材が居れば、な」



俺が疑問を聞くと男は余裕が無い、と答えるので反論するも戦場での人材不足を告げた。



「…なるほどね」


「おいソコ!モタモタするんじゃない!貴様らの行動の遅れで防衛線が崩壊したらどうする!」


「…急ぐぞ」


「はいはい」



男と話をしながら歩いてると後ろから別の兵に怒鳴られてしまったので歩く速度を上げ、町から数kmほど離れた場所へと向かった。

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