南の戦場編
青年期 5
…それから一月後。
学校のクラスメイト達はみんな卒業したらしく、年も明けたので俺はハンター兼傭兵として本格的に活動する事に。
「…おお…結構あるな」
…ギルドの建物に行って傭兵の仕事を探すと、やはり内戦の影響か予想外に募集が増えている。
「どこに行くんですか?パルパティ侯爵の所は報酬が高いって聞きましたけど」
「…内戦に参加するのはやめとこう。自国民同士で戦うと終わった後に色々と面倒だからね」
「そうですね。では今隣国の侵攻を食い止めてる辺境伯か侯爵の所に?」
お姉さんの問いに俺が内戦を避ける事を告げると国境を守ってる貴族を選択肢に挙げた。
「…どっちにしようかなー」
「余裕があるのは辺境伯の所ですが…」
内戦でなければどこでもいいので俺が悩んでいるとお姉さんが片方の状況を教えてくる。
「まあアッチは精強揃いの西方騎士団がいるからね」
「侯爵の所は南方騎士団が不在らしいので激戦になってるらしいですよ」
「内戦で駆り出されてるんだっけ?そんな事してるから付け入られるというのに…」
俺が納得しながら言うとお姉さんは逆に騎士団不在で大変になってる状況を告げるので俺は呆れながら呟く。
「まあでも激戦の方が稼げそうだし、防衛線を突破されたら面倒そうだから侯爵の所にでも行こうかな」
「分かりました。馬車を手配して来ます」
「…え。一緒に来るの?」
傭兵としての初仕事を決めると何故かお姉さんも当たり前について来ようとするので俺は不思議に思いながら確認した。
「?はい。坊ちゃんが怪我されたら大変ですし」
「…まあついて来てくれるんならありがたいか。危ないから戦場には出ないようにね」
「分かりました。ありがとうございます」
…俺の親からお目付け役でも任されたのかお姉さんが当たり前のように不思議そうに返すので…
俺が同行を了承して釘を刺すように注意するとお姉さんは笑顔でお礼を言う。
「…じゃあ行こうか」
「はい」
俺はギルドから紹介状を貰い、出発を告げて建物を出る。
「えーと…南の国境だと…」
「この王都からだと…馬車で早くて一週間ぐらいですかね」
俺が国内の地図を見ながら行き先を確認するとお姉さんが移動時間を予想した。
「…結構かかるね」
「関所をスムーズに通過出来ればの話なので…足止めされたりするともっとかかっちゃいますよ」
「あー…平時ならともかく今は移動もままならないか…よし」
お姉さんの話を聞いて俺は変化魔法で変身して移動する事に決め、修行場所へと向かう。
「…今日は行かないんですか?」
「行くよ。今から」
修行場所に着くとお姉さんが不思議そうに聞いてくるので俺はそう返して変化魔法を使う。
「わー!坊ちゃんドラゴンにも変身出来るんですか!?」
「まあね。とりあえず乗って」
体長5mほどに抑えた赤い鱗のドラゴンに変身するとお姉さんが驚きながら喜ぶので、俺は地面に伏せながら指示をする。
「…ドラゴンに乗るなんて初めての体験です…!」
「振り落とされないようにこの紐で腰や足に巻いといて」
「分かりました」
俺の背中の上ではしゃぐお姉さんに俺は手をゴブリンの爪に変え、安全対策でロープを渡すと指示通り腰に巻き始めた。
そして俺はそのロープの端を受け取って腹の所で結ぶ。
「じゃあ行くよ」
「はい!」
飛ぶ準備が完了したので俺はスレイプニルの脚力でロケットスタートをするように斜め上に飛んで翼を動かし、速度を上げながら飛行する。
「うーわー!速いですねー!」
ワイバーンの技である空力操作でお姉さんに風とかの影響を受けないようにしてるとお姉さんは楽しそうに大声を出しながらはしゃぐので…
「もっと速度を上げる事も出来るよ!」
「ぎゃー!」
手をワイバーンの翼に変え、4枚の翼を羽ばたかせて更に速度を上げたらお姉さんが悲鳴を上げた。
…直ぐに元の巡航速度に戻して空を飛ぶ事、約一時間後。
「…アレか…降りるよ!」
「はい!」
目的地が見えてきたので俺はお姉さんに合図して変身を一旦解き、自分とお姉さんをスライム化して落下する。
「うわわわわ!嘘でしょー!!」
上空からの急な落下にお姉さんは悲鳴を上げるが、地面に落ちてもプルンプルンとちょっと跳ねて少し転がる程度だった。
「…あれ?痛くない…」
「スライム化してたからね。地面に叩きつけられてもビチャっと一瞬水溜りになるだけですぐ人型に戻るよ」
「…なるほど。流石にちょっと怖かったです…」
「…ちょっと…?」
スライム化を解くとお姉さんが不思議そうに呟くので無傷の理由を教えると困ったように笑って呟き、俺はアレがちょっとか…?と思いながら呟く。
「でも早く着きましたね。…え!まだこんな時間!?」
お姉さんは嬉しそうに言って時計を見ると驚愕する。
「ははは、新幹線よりも速いからね」
「…?でも王都から国境付近まで一時間ってとんでもない移動速度だと思うんですが…」
「まあドラゴンに変身すれば音速なんて簡単に超えられるし。今回は多分その半分ぐらいだと思うけど」
「ええー…」
俺が笑いながら前世の記憶の交通機関と比較するも当然通じず…
驚いたように聞いてくるお姉さんに軽く話すと、わけが分からない…といった様子で呟かれた。
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