学生期 参

学生期 参

…そして半年後。



三度目の入学式が開かれる時期になり…俺達も進級してついに三学年に。



なので学校生活も残すところあと一年となった。



「俺らもついに上級生か~…なんかあっと言う間だな」


「そろそろ進路決めないとヤバイかも…」


「…騎士団、正規軍、治安維持部隊…あとハンターにシーカーか。まあ俺は無難に正規軍かな」



入学式が終わって教室に戻ると男子生徒達が将来の事について話し合い始める。



「リデックはそのまま家に帰るんだろ?」


「分からん。一応弟が卒業するまではハンターとか傭兵やろうかなー、って考えてるけど」


「教育係とか指揮官か?まあお前には向いてそうだな」



男子生徒の問いに俺は適当な感じで答えると他の男子生徒が頷いて納得しながら返す。



「お前なら教師とかでも出来そうな気がするけどな」


「いやー、流石に教師は厳しくねぇか?もっと勉強しないといけないし」


「この一年で勉強すりゃあ良いじゃねーか。授業サボらずに、よ」



男子生徒が予想外の事を言い出すので俺が否定的に言うと、 別の男子生徒が弄るようにニヤニヤ笑いながら言う。



「じゃあ俺には向いてねぇな」


「いや諦め早すぎだろ!」


「「「ははは!」」」



俺は諦めるように返すと男子生徒にツッコまれてみんなが笑う。



「そういう事で、早起きして眠いからいつもの場所に行くわ」


「はいはい」


「早起きしても結局サボるんなら早起きした意味ねぇな」



俺が席を立ちながら言うと男子生徒達は慣れたような対応をするので、俺は教室を出て修行場所へと向かった。





ーーーーー





「…ん?エーデル?なんでココに?」


「兄さん、また薪貰って良い?」



修行場所に着くと珍しく弟が居たので今の時間は授業を受けてるハズじゃ…?と思いながら声をかけると、弟は大量に積み重なってる薪を見ながら確認を取ってくる。



「ああ…今年もか」


「うん。足元を見てるのか値段を吹っかけてるのか…全然値段を下げないらしくてね」


「そりゃ大変だな」


「…来年には兄さんが居なくなるから、今年中になんとかしないと…」



俺が思い出すように聞くと急に何倍も値上がりした薪の価格高騰問題を話すので、了承するように返すと弟は本格的に対策を考えるような事を呟き出す。



「で、いつも通り午後だろ?」


「うん。兄さんの邪魔にならないよう午後の授業が始まってから取りに来るよう伝えてある」


「分かった」


「じゃ、僕は戻るから」


「おう」



俺の問いに弟は回収の時間を話すと中等部の校舎へと戻って行った。



「…エーデル様が今の時間にココに来るのって珍しいですね?」


「薪を取りに来たんだって」


「ああ、なるほど。一昨年ぐらいから急に高騰したらしいですからね」



お姉さんがやって来ると不思議そうに聞くので俺が理由を話すと納得する。



「アレってなんで急に値段上がったの?エーデルは業者が吹っかけてるとか言ってたけど」


「えーと…理由はいくつかありますが、一番の原因は派閥争いによる影響…みたいです」



俺が分身して鍛錬を始めながら聞くとお姉さんは思い出すように考えながら答えた。



「派閥争い?」


「はい。敵対派閥への嫌がらせとして関税の大幅な引き上げなどを行ってるそうなので、今は特に食料品以外は流通が滞ってる状態みたいですね」


「食料品は大丈夫なんだ?」


「流石にソコが制限されると武力衝突まで発展してしまうので、なんとか抑えてるみたいですよ。…まあ今の状況を見ているとソレもいつまで続くか…」



意外とお姉さんは国内の情勢に詳しいみたいで俺の疑問に説明して教えてくれる。



「あとストライキや兵を集めてたりで働き手が不足してるそうです」


「ストライキって…こんな時に何やってんだか…」



いや、逆に今だからこそか?と、俺は呆れたように呟いた後に考え直すように言う。



「この状況がいつまで続くか分からないので、理事長は『薪割り』を授業に取り入れるかどうかを考えてるみたいですよ」


「…なるほど。生徒に薪を調達させれば予算を削減出来るし、身体を鍛える事にもなるから一石二鳥というワケか」


「でも薪割りまでの過程をどうするか…で悩んでるとか」



お姉さんの説明に俺が納得すると困ったように笑いながら問題点を話した。



「普通に木を倒して切ればいいんじゃないの?」


「…坊ちゃんは簡単に出来るからそう簡単に言いますけど、普通は出来ないから業者を呼ぶんですよ?」



俺が不思議に思いながら言うとお姉さんは呆れたように返す。



「まあ結構大規模でやるとしたら植林とかもしないといけないからな…簡単な話じゃあないか」


「植林とかもそうですけど…そもそもこんな木を素手で切り倒すのがおかしいんですって」


「『切り倒す』と言うより『蹴り倒す』じゃない?一応手だけでも出来るけど」


「…どっちでもいいです」



お姉さんの指摘に俺が訂正を入れるとまたしても呆れたように流してくる。

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