学生期 弐 20

「…なるほど、敵対勢力の貴族、王族、指揮官、指導者とかのトップを魔物化させれば組織はガタガタになるし、ソレを繰り返せば国でも潰す事が出来るのか…えっぐぅ…」


「おそらくお嬢さんや坊ちゃまの予想通りの事が歴史上で実際に起こったんでしょう。ですから先人達は後世のために一切の記録や記憶、情報などを消し去ったのだと思います」



俺の困惑しながらの呟きにおじさんは変化魔法の歴史が不自然になってる理由を予想で話した。



「…そう考えたら変化魔法の使い手が嫌われてる理由にも説明がつきますね…」


「一人でもやらかす奴が居たら『みんな出来るんじゃないか?』って使い手が一括りにされちゃいそうだもんなぁ…」


「ですから坊ちゃま、どうかその技は墓まで持って行って下さい。それが国の…世界の安定や平和のためでございます」



お姉さんが納得したように呟くので俺も同意するとおじさんが頭をさげながら諭すように『極技その2』を封印するよう言ってくる。



「そだね。エーデルやリーゼに見せなくて良かったよ」


「まあ、口が堅い身内の者になら使っても大丈夫だとは思いますが…」


「じゃあ私はセーフですね!良かったぁ~」



俺の了承におじさんはダブスタのようにいきなり使用条件の基準を緩くし始め、お姉さんが喜ぶ。



「…それで良いの?」


「ええ。そもそも変化魔法一筋の私でさえ他人に変化魔法をかけるという発想は出てきませんでしたし、もし仮に思いついたとしても技術的に難しいかと思われます」


「つまり『使うなら相手を考えて使え』って事ですね?」


「そういう事です」



俺が確認するとおじさんは肯定しながら理由を話し、お姉さんの要点をまとめた問いに頷きながら返す。



「しかし…坊ちゃまはどのようにしてこのような歴史に葬られた禁忌の技を会得したのですか?並大抵の修行で身につく技術ではないはずですが…」


「えーと…分身が変化魔法を使ってるのを見て『他人にかけられたら面白いな』って」


「なるほど…そんな手が…確かに他人に変化魔法をかけるための初歩段階としては『分身』という選択肢はこれ以上に無いほどの最善の方法ですな。あまりに効率的過ぎる。いや、素晴らしい!」



おじさんの問いに俺が若干困りながら返すと、おじさんは目から鱗…といった感じで驚きながらも興奮しながら褒めてきた。



「…坊ちゃまほどの発想力があれば魔物化した魔法使いさえも元に戻す技術を確立する事が出来そうですな。ぜひとも魔法協会へと入って研究してもらいたい」


「…出来るかな…?多分超難しいと思うよ?」



おじさんが無茶振りのような期待を寄せてくるので俺が難色を示しながら返すと…



「坊ちゃんならきっと出来ますよ!成功すれば二度目の偉業達成ですよ!そこまでいけば今世紀最大の発見と発明を行った偉人として、はるか後世まで名が残るレベルですし!」



お姉さんは嬉しさや喜びが余ったのはめっちゃハイテンションで興奮しながら背中を押してくる。



「…でもソレが出来るようになるには結局また自分が魔物化していく様を見るワケでしょ?完成するまでソレを何回も見るハメになるのはキツイって」


「…分身の魔物化までもを既に試しているんですか!?」


「どうなるか気になったからね。結果、魔物扱いになるから魔石や素材を取れる事が分かったよ」


「…な、なん…と…もはや、私などが理解出来ない次元へと至っているみたいですな…」



俺が断るように手を振りながら言うとおじさんが驚きながら確認し、結果を話すと呆然としたように呟いた。



「…じゃあ私の分身を魔物化させますか?目を瞑っていれば多分大丈夫…?」


「いや、身内が魔物化していくのを見るってのもキツイでしょ。先生は俺や老師が魔物化していくのを冷静に見れる?」


「……そうですね。浅慮でした、すみません」



お姉さんの提案に俺は拒否しながら確認するとお姉さんは想像した後に謝る。

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