学生期 弐 18
「…それで坊ちゃま、学業を疎かにしているとは本当ですかな?」
「まあね。なんせ老師達に習った事を一から復習なんてやってられないし」
部屋の中に入るとおじさんがさっきの話を確認して来たので俺は肯定して理由を話した。
「はぁ…学業を受けるのは学生の本分だと言うのに…」
「と言っても魔法学や魔物学以外の授業はちゃんと受けてるよ。老師の言う通り勉強は学生の本分だからね」
「…本当に分かっているのならよろしいのですが…空いた時間では鍛錬を?」
おじさんがため息を吐きながら嘆くので俺が補足するように言うと困ったように呟いて尋ねる。
「うん。午前中はずっと鍛錬に充ててたから、そのおかげで変化魔法の極技を使えるようになった」
「…変化魔法の…極技…ですか?」
「まあ老師の前で『極技』は言い過ぎかな?奥義みたいな技って事で」
俺の返答におじさんが不思議そうに尋ねるので俺は訂正するように言い方を変えた。
「いやー、見たらびっくりしますよ。…多分」
「ほお…ソレはどんな技か興味が湧きますね」
お姉さんは得意げに言うもおじさんも変化魔法の熟練者だと言う事を思い出してか若干不安そうに付け足し、おじさんは意外そうな顔で返す。
「んじゃ…」
「!?」
俺が変化魔法でスライム化した後に分裂するようにして二人に分かれ、変化魔法を解くとおじさんは驚愕したような表情になる。
「「コレが変化魔法の極技…いや違う奥義だ。とりあえず『分身』」」
「…分、身…ですか?」
「ややこしいから戻るけど」
「なんでも坊ちゃんは最高15人まで分身を増やせるそうですよ」
俺の説明におじさんは呆然としたように呟き、俺が一人に戻るとお姉さんが補足するように話した。
「一応増やすだけなら今は最高31体までイケるよ。でもそこまで増やすと魔力が平均の1/3ぐらいまで減るからあんまり実用的じゃないけど」
「…32人で平均の1/3って事は…やっぱり坊ちゃんも他の適性無しの人達と同様に一般の魔法使いの10倍以上の魔力を持ってるんですね」
俺がお姉さんの情報に訂正を入れながらその場合の欠点を話すとお姉さんは計算しながら俺の魔力量について言及する。
「…坊ちゃま、その分身という技は一体どのような方法で?」
「あれ、もしかして老師も知らなかった?」
「はい。このような技は見たことも聞いた事もございません」
おじさんの問いに俺が知識でマウントを取るようにドヤ顔で得意げに聞くとおじさんは素直に頷いて肯定した。
「…って事は…」
「ドッキリ成功ですよ!やりましたね!坊ちゃん!」
「いえーい。老師の事だから普通に知ってて『あ、ソレか』ぐらいに特に珍しくもないみたいな感じで流されたらどうしよう…ってちょっと不安だったんだけど、成功して良かったー」
俺がお姉さんを見ると喜びながらハイタッチを求めてくるので、俺は喜びのあまり内心を打ち明けながらお姉さんとハイタッチする。
「…『分身』という事はもしやスライムが関係していたりしますか?」
「流石は老師。一目見ただけで分かるとは…スライム化からの分裂です」
「『分裂』…スライムのそのような行動は文献の記述でしか知りませんが…坊ちゃまならきっとダンジョンでの経験でしょうね」
おじさんの確認に俺が褒めながら肯定して解説すると考え込むように呟いた後に笑顔で納得した。
「多分老師なら早くて一週間…遅くても一月ほどでは出来るようになると思う」
「おお…!という事は…その技を伝授してくれるのですか…!?」
俺が予想しながら話すとおじさんは驚いたように意外そうな感じで確認してくる。
「うん。老師ならいたずらに広めるような愚行はしないだろうし」
「…坊ちゃまの信頼を裏切らないよう誠心誠意努めていきます」
俺の釘刺しにおじさんは床に膝を着いて頭を下げながら誓いの言葉みたいな事を言い出す。
「じゃあ早速。まずはスライム化します」
「分かりました」
「そして分裂します。ココが最初の難関ですが…」
俺が極技のレクチャーをするとおじさんは言われた通りに変化魔法を使ってスライム化し…
「…なるほど。中々に難しいものですな」
すぐさま分裂に成功して笑いながら難易度を告げた。
「流石は老師。こうも簡単に最初の難関をクリアするとは…ですが、ここから先…分身体を作るのが最後にして最大の難関です」
俺は半年以上かかりました…と、俺はおじさんに自身の経験談を話しながら注意する。
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