学生期 弐 15

…それから二週間後。




国内の学校対抗戦が始まる日になり、俺らの初戦の試合会場は本校なので…



試合開始の30分前に初めて代表者達が会場に勢揃いした。



「よろしくお願いします」


「ふん。お前か…一般クラスごときの指示は受けん」


「もっとマシな奴が居ただろうに…なぜ指揮しかできん奴を選んだのか…」


「戦えんのはしょうがあるまい。しかし邪魔だけはするなよ。大人しく逃げ回っておけ」



俺が挨拶をするもみんな俺よりも家格が上の人ばかりなので、予想通り不機嫌だか不愉快そうな対応で終わる。



…そして30分後、試合が始まるとみんなそれぞれで独自に動き出し…



俺が何もしなくとも二時間ほどで勝利した。






ーーーーーー







…その後の試合も俺は全く必要とされず、個々の実力に物を言わせたゴリ押しだけで国内対抗戦に優勝。



結局俺は居ても居なくてもマジで関係無かったようだ。




…その翌日。




「リデック君、おめでとう!君も世界戦の代表者に選ばれたよ!」


「…は?」



午後の授業中に別の教師に廊下に呼び出されたかと思えば喜びながら意味不明な報告をしてくる。



「私達の国の代表としてぜひ優勝目指して頑張ってくれ!」



教師は俺の手を取りながら応援の言葉を言うと呆然としてる俺をその場に放置して戻って行った。



「おう、リデック。なんて?」


「…良く分からんが…なんか世界戦の代表者に選ばれたんだと」


「はあ!?」


「世界戦の代表に!?」


「お前が!?」



席に戻ると斜め向かいの男子生徒が尋ねてくるので、俺が不思議に思いながら返すと周りの男子生徒達が驚きながら立ち上がる。



「世界戦?」


「国内の代表って…リデック君が?」


「それホントか?なんで?」


「コッチが聞きたいわ。俺、学校対抗戦では座って瞑想してただけで何もしてねぇのになんで選ばれたんだ?」



教室中がザワザワと騒がしくなる中、左斜め前の男子生徒が真偽を確認するので俺も不思議に思いながら尋ねるように返す。



「まあでも選ばれて良かったじゃねぇか。世界戦って確か来週からだろ?」


「頑張って優勝目指して来いよ」


「選抜メンバーが全員大人しく俺の指示に従ってくれりゃあ優勝もあるかもしれんが…まあ無理だな」


「んな事言うなって」



クラスメイト達の応援の言葉に俺が呆れながら言うと笑いながら返された。



そして放課後。



「兄さん聞いたよ。国の代表に選ばれたんだって?凄いじゃないか」


「流石はお兄様です」


「…ああ」



午後の授業が終わり自室に戻ると先に帰宅していた弟と妹がまた祝うような言葉をかけてくるので俺は適当に返事をする。



「でもなんで俺なんだろうな?国内の対抗戦では活躍どころか動いてすらいないのに」


「やっぱり指揮力じゃない?いざという時の保険とか」



俺がソファに座りながら疑問を言うと弟は笑いながら予想を話す。



「保険ねぇ…俺の力が必要になる時はもう手遅れじゃねぇかな?」


「流石にみんなも不利な状況を察したら兄さんの指示に従うんじゃない?」


「その頃には指揮とか作戦でどうにかなる範疇を超えてると思うが…ま、なるようになるか」



これ以上は考えても無駄だと悟り俺は弟との話を切り上げて夕飯の準備をする事にした。




翌日。




「坊ちゃん世界戦の代表者にも選ばれたそうですね。おめでとうございます」


「みたいだね…理由は分からないけど」



いつもの修行場所で鍛錬してるとお姉さんがやって来て祝いの言葉をかけてくるので俺は軽くあしらうように返す。



「…理事長は『貴族だけじゃなく国の平均的な強さを他国に示すため一般クラスから一人推薦する』って言ってましたけど」


「つまりは『見栄』か。一般クラスでまだマシだった俺に白羽の矢が立った、と…なるほどね…」



お姉さんは少し考えて俺を選抜した理由を話すので俺は納得しながら嫌味混じりに呟いた。



「まあ…しょうがないですよ。坊ちゃんが擬態や偽装なんてやめたら確実に満場一致で選ばれるでしょうけど、今の状態じゃ…」


「そもそもその状態なのに選ばれる、ってのが嫌なんだけど…政治とか貴族の駒にされてる感があるし」



微妙な感じで笑うお姉さんのフォローに俺はため息を吐きながらこういうのは今まで避けて来たのに…と思いながら返す。



「一応他にも何人か一般クラスからの候補は居たようですけど…やっぱり出身が…」


「…他の代表者達の反感を買わないように曲がりなりにも貴族出身である俺って事か。実力は隠せても出身は隠せねぇからな…」



まあ隠そうとも思わないけど。と、俺は色んな思惑の末に選ばれた事に嫌気がさしながらまたため息を吐く。



「でも本当に嫌なら辞退できますよ?」


「…ココで辞退したら絶対『せっかく選ばれたのに何様のつもりだ』って色んな所から反感を買うから無理。もう予選敗退を祈って観光気分で行くしかないね」


「あ、それいいですね!」



お姉さんが気を遣ったように提案するも俺は教師や貴族達からの反応を予想しながら否定的に返し、ポジティブな考えを言うとお姉さんは嬉しそうに賛同する。

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