学生期 11

「…おっ!君は!」



第二階層でクラスメイト達を見守りながら周りをウロウロしていると、下の階層から上がって来たんであろうハンターのパーティに声をかけられた。



「あ。『イーグルクロー』の」


「久しぶりだな。…こんな所で何を?」


「なんだか今日はやけに人が多いな」



俺が手を上げて挨拶を返すとパーティのリーダーとメンバーのハンターが周りで戦ってるクラスメイト達を見ながら不思議そうに尋ねる。



「今は野外学習でクラスメイト達の引率中です」


「野外学習だって?」「「引率?」」「クラスメイト?」


「はい」



俺の返答にハンター達が驚きながら聞いてくるのでクラスメイト達を見ながら肯定した。



「まさか、学生になったのか?」


「てっきりそのままハンター業に専念すると思ってたんだが…」


「なんで?『学校なんか行かない』って言ってなかった?」


「ちょっと世間体のために…親に言われまして」


「「「「なるほど」」」」



ハンター達の興味津々からの問いに俺が理由を話すとみんな納得する。



「だがまあ君ほどの実力者ならば引率者に選ばれるのは当然か」


「ははは、下の面倒を見るのもハンターの義務ですから」


「そうか…もしかしたらあの中からもハンターを志す者が現れるかもしれんからな」



リーダーが現状を納得するように言うので俺が笑ってハンターの心得を話すと、パーティメンバーの一人がコボルトと戦ってるクラスメイト達を見ながら楽しげに言う。



「でもあの人数の面倒を見るのも大変じゃない?」


「そうでもないですよ。みんな学校でちゃんと訓練を受けてますし」


「そっか。みんな学生さんだもんね」



他のメンバーもクラスメイト達を見ながら聞くので俺が否定的に返すと納得したように呟いた。



…そしてハンターのパーティであるイーグルクローのメンバー達が少しの間クラスメイト達を見ていると…



「…さて、そろそろ行くか。さっさと街に戻って武器を研いでもらわねば」


「ん?そういえば今日はいつもの斧じゃないんですね」



リーダーが時計を確認して帰還するような事を言うので俺は持ってる武器を見ながら尋ねる。



「ああ、今日は依頼でミノタウロスの角を取りに来たんだ。斧じゃ角は切れないから」


「ああ、だから珍しく槍を持ってるんですね」


「攻撃範囲を少しでも広げようと思って槍にしてみたんだが…やはり使い慣れない武器は難しいな。見ての通りだ」



リーダーの返答を聞いて俺が納得すると刃が少し欠けたりして中々に消耗してる槍の刃先を見せながらおどけるように肩を竦めた。



「今回の依頼はとある貴族からでな。なんでもミノタウロスの角を使って兜を作りたいと思っているそうだ」


「それで私達に直接依頼が来てねー…やっぱり貴族から直接だと断り切れないから…」


「あのミノタウロスをあと何回倒せばいいのか…はぁ…」



俺が聞く前に他のメンバー達が愚痴のように今回の事情を話し出す。



「ミノタウロスの角なら俺、持ってますよ」


「本当か!ぜひ譲ってくれ!」


「やっぱりコレ次第ですね」



俺の発言にリーダーが喜んで譲渡を持ちかけてくるので俺は笑いながら指で金のポーズを取りながら交渉する。



「うぅむ…少し待ってくれ」


「どうぞどうぞ」



リーダーが少し考えるように言うとパーティメンバー達で話し合いを始めるので俺は話が纏まるまで待つ事に。



…それから待つ事約10分後。



「…アルケニーの糸5束とダチョーの羽根20枚…で、どうだろうか?」


「おお、アルケニーの糸!…でもダチョーの羽根は要らないかな…」


「…じゃあ、アルケニーの糸、10束で!」


「10束!それならいいかな」



リーダーは金銭ではなく素材との物々交換を提案するので俺が難色を示すと、他のメンバーが別の条件を提示するので俺はソレを呑んだ。



「では交渉成立という事で!…コレが糸10束だ」


「じゃあコッチは角で」


「…確かに。感謝する!非常に助かった!」


「いえ。ダンジョン内での助け合いはハンターやシーカーの義務ですから」


「では!また会おう」



お互いに物を出して交換するとお礼を言われたので俺は謙遜しながらハンターの心得を言い、リーダーは嬉しそうに手を上げて去って行く。



「なあリデックー、今の人達は?」


「ああ、ハンターの人達。なんか最下層のミノタウロスを狩りに来てたんだと」


「ミノタウロス!?ってあの化物の!?」


「じゃああの人達かなりの実力者って事か!?」



コボルトとの戦いが終わった男子生徒がハンター達の後ろ姿を見て尋ねて来るので、俺が説明すると他の男子生徒達も驚きながら確認してくる。



「そうなるな」


「マジか~…くぅ~!サイン貰っとけば良かった…!リデックさぁそういう事はもっと早く言ってくれよ…!」


「いや、お前ら戦闘中だったし」


「そうだけど…!」



俺の肯定に男子生徒の一部が悔しそうに言ってくるので教えるのが遅れた理由を話すも納得いかなそうに返す。



「まあこれからもダンジョンに入る野外学習が何回かはあるだろうし…会えるチャンスはまだあるって。多分」


「…そうだな。今度会った時は頼むぜ!」


「はいはい」



俺がフォローするように返すと男子生徒は気持ちを切り替えたように言いながら頼んでくるので適当に返事した。



「っと…そろそろ時間か。おーい!暇してる奴ら集まれー!」



俺は時計を見て予定を思い出したのでコボルトと戦い終わったクラスメイト達に集合をかける。



「どうした?なんかあったのか?」


「移動時間を考えたらそろそろ学校に戻る時間だ」


「えー!マジで!?もう!?」


「せっかくダンジョンに慣れてきてこれからだ、ってのにもう戻る時間かよ…!」



クラスメイトが集まってくると男子生徒の一人が尋ねるので予定を伝えると他の男子生徒達が嫌がるように言う。



「と、いうわけで…まだコボルトと戦ってる奴らに加勢してみんなを集めてきてくれ」


「よっしゃー!最後の戦いだ!みんなやるぜ!」


「「「おおー!!」」」



俺の指示に男子生徒の一人が士気を高めるように叫んで拳を高々を上げると他のクラスメイト達も揃って声を上げ、まだ戦ってる最中のグループの所へと走って行く。



「おらぁ!この獣人が!人間様に逆らおうなんて10年早いぜ!」


「人間の方が上手く武器を扱えるに決まってんだろ!この物真似野郎が!」



…元々4対1の戦いからクラスメイト達の加勢で一気に8対1の酷いリンチ状態になり、ただでさえ劣勢だったコボルト達はもはや為す術なくやられていった。

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