学生期 10
「…さーて、さっそくダンジョン内に入る…前に復習の時間だ」
…担任との話し合いの結果、俺らが第一陣で先に入る事になったので…俺は念のために魔物についておさらいするように言った。
「復習?」
「そんなのいいからさっさと入ろうぜ!」
「ダメだ。お前らも将来ハンターになるんならダンジョンに入る前にそのダンジョン内の魔物について知っておく必要がある」
俺は男子生徒の催促を拒否して復習の必要性を説く。
「でもこのダンジョンって初心者用だろ?じゃあわざわざ復習しなくても大丈夫じゃないか?」
「甘い!おい、お前!このダンジョンの一階層にいる魔物は何か知ってるか?」
「えーと…確か、ゴブリン…だろ?」
男子生徒の発言に俺は切り捨てるように返して別の男子生徒を指差しながら聞くと不安そうに答える。
「そうだ。そこ、ゴブリンの特徴は?」
「あ、私?…確か、ゴブリンには鋭い牙と爪があって、知能もそこそこ高くて機転が利き、手先が器用…であってる?」
「そう。そして仲間意識があって群れでハンターを囲んで戦う場合もある…つまり単体では弱くても『囲まれるとヤバイ』って事だ」
俺が女子生徒を指名して尋ねると授業で習ったんであろう情報を話すので補足説明してると…
「なんかずっと授業サボってるあのリデック君が魔物について話してるって違和感凄いんだけど」
「ってか一切授業受けてないハズなのに妙に詳しくない?」
担任が引率するグループにいる他の女子生徒達が笑いながら話し合う。
「…さて、ゴブリンについて復習したところでこれからダンジョンへと入る。もう一度言うが、痛い目を見たくなければ単独行動はするな。一人にも絶対になるな。分かったな?」
「「「はーい」」」
俺の再三の念押しの注意しながらの確認にクラスメイト達はあまり聞いてないかのような返事をした。
「…あ、そうそう…一応何かあったら直ぐに呼んでくれ。初手の対応が遅れて大惨事…ってのも初心者や新米ハンターあるあるだからな」
「お前なんでそんなハンターの事に詳しいんだよ?」
「まさか…ハンターの知り合いがいるな?だから魔物やダンジョンに詳しいんだろ?そうだろ?」
「まあそんな感じ」
俺はみんなを先導するように扉を開けてダンジョンに入る前に最後の注意を告げると、男子生徒達が弄るように言うので流すように返す。
「おおー…!ココがダンジョンの中か!」
「なんかドキドキして来たな!」
「じゃあここから先は自由行動って事で」
「「「おー!!」」」
第一階層に降りてみんなをグループごとにバラけさせると担任が残りの人数を引き連れて階段を降りてくる。
「じゃあ私達は反対側に行きます」
「分かりました」
担任は残りの生徒を引き連れて別の方へと歩いて行くので俺もクラスメイト達を見守りながら適当にダンジョン内を歩く事に。
「ははっ!なんだ、意外と楽勝だったな!」
「おーい。油断すんなよー」
「分かってるって!」
さっそくゴブリンを倒した男子生徒が初戦の感想を言うので俺が通り過ぎながら注意するとウンザリしたように返事をした。
「きゃっ!」
「大丈夫か?」
「うん。ちょっと驚いただけ」
「この!」
「ギャッ!」
…やはりグループ行動をしているとゴブリン単体では全く歯が立たないらしく、クラスメイト達は結構な余裕を持ってゴブリンを倒していく。
「ははっ、リデックが散々脅かすからどんなにヤバイんだとビビってたのにめっちゃ弱いじゃん!」
「そりゃゴブリン一体に対して3人から4人でリンチしてるからな。逆の状況を想像してみろよ」
「…ヤバイな。確かに単独行動は危険だ」
男子生徒が笑いながら調子に乗った発言をするので俺があえて嫌な言い方をして返すと男子生徒は気を引き締めるように言う。
ーーーー
「…リデック君。そちらはどうなってますか?」
ダンジョンに入って数十分もするとゴブリンが見当たらなくなり、みんなで固まって歩いていたら担任がやって来て状況を尋ねてくる。
「はい。怪我人はまだ出てません。みんな結構余裕を持って簡単に倒してますね」
「そうですか。それは良かった。…では次の第二階層まで降りても大丈夫そうですか?」
俺の報告を聞くと担任は安心したように返し、少し考ると俺にも判断をあおいできた。
「…うーん…まあ大丈夫でしょう。この人数ならコボルトに囲まれる危険も低いでしょうし」
「分かりました。では第二階層に降りる階段の前で合流という事で」
「はい。おーい、聞いたか?これから次の階層に進むんだと」
「おっしゃー!じゃあ早く行こうぜ!」
俺が肯定的に返すと担任は進む事を決めて指示を出すのでソレをクラスメイト達に伝えると男子生徒が喜ぶ。
…そして先に階段の前で待機して後から来たクラスメイト達と一旦合流する。
「みなさん揃ってますね?では行きましょうか」
「ちょっと待って下さい」
「?どうかしましたか?」
担任は直ぐに第二階層へと降りようとするので俺が止めると不思議そうな顔で尋ねた。
「次の階層に進む前に魔物の復習をした方が良いです」
「…まあ君が言うなら」
俺の提言に担任は受け入れるように言ってクラスメイト達の後ろへと移動する。
「じゃあ次の第二階層に行く前に、どんな魔物がいるか分かる奴いるか?」
「コボルトだろ。獣人型の」
「お、良く分かったな」
「馬鹿にしてんのか。それぐらい分かるっつーの」
「じゃあコボルトの特徴は?」
「…えーと…ゴブリンと同じだろ?確か知恵があって手先が器用とか」
俺が聞くと男子生徒が答えるので意外に思いながら褒めるとツッコミを入れるように返すので、更に問うと急に雑で適当な事を言い出す。
「惜しい。コボルトは武器を使って戦う上に仲間同士で連携もする。更に仲間を呼ぶから見つけたら短時間で倒すように。じゃないとどんどん仲間が集まってくるから気をつけろよ」
「だからなんで普段授業サボってるクセにそんな詳しいんだよ!」
「さて、じゃあ行くか」
「いや無視かよ」
「まじめにやれって事だろ」
俺の説明に男子生徒がツッコミを入れてくるがシカトして進めると不満そうに言うが別の奴がフォローするように笑いながら返した。
「コボルトはゴブリンよりもちょっと強いからな。油断して怪我しないように気をつけろよ」
「へいへい」
「へーい」
俺が階段を降りながら注意するも男子生徒はふざけたような返事をする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます