学生期 7

…そして数ヶ月後。



「お兄様、聞きたい事があるのですが」


「ん?」



夕食後に自室で翌日の昼飯の仕込みをしてると妹が疑問を尋ねるように話しかけてくる。



「魔法の事を勉強すればするほど変化魔法の扱いの異様さが際立つのですが…なぜお兄様はわざわざ変化魔法などをお選びになったのですか?他にも選択肢はあったハズですのに…」


「リーゼ!もう少し言葉を選びなさい!兄さんに失礼だろう!」


「おいおいエーデル。そんなに怒るなよ」



妹が変化魔法を下に見ながら蔑むような感じで疑問を聞いてくると弟が叱りつけるので俺は宥めるように言う。



「リーゼ。俺が変化魔法を選んだのは、変化魔法には魔法適性とかが関係無かったからだ。あと楽に簡単にお手軽に強くなりたかったってのもある」


「…まさか、お兄様に…魔法適性が、無い?そんなハズは…!だって…」


「…マジか。エーデル、ゴメン」



俺の返答に妹は信じられないかのように驚くので俺は、口止めされてたのか…と思いながら弟に謝った。



「いや、遅かれ早かれだ…僕達も、いずれリーゼにも伝えなければ…とは思っていたから」


「どういう事ですの?一体なにを…」


「うーん…リーゼ、エーデルが父さんの後継ぎで次期当主だって事は分かるよな?」


「は、はい」



弟がため息を吐きながら仕方ない…といった様子で呟くと妹が困惑したように聞くので、俺はちょっと説明に困りながら確認する。



「なんで長男の俺じゃなく次男のエーデルだと思う?普通なら嫡男が後を継ぐのが当然で、ソレが常識なのに」


「それは……そう考えたら…」


「…兄さんには魔法適性が一切無いんだ。魔力持ちなら大なり小なり違いはあれど誰しも何かしらの魔法適性は持ってるハズなのに」



俺の問いに妹が我が家の後継者事情のおかしさに気づいて呟くと弟が気まずそうに説明した。



「まあその代わり膨大な魔力があるけどな。適性が一切無い魔力持ちは普通の魔力持ちに比べて魔力量が桁違いに多い…ってのはまだ習ってなかったか」


「で、でしたら…なおさら、なぜ変化魔法なんかを…?」


「適性が無い魔法を無理やり使うと魔力の消費量が数倍に増え、詠唱も長引き、更に威力が本来の8割ほどしか出ないって欠点があるんだよ。…僕も兄さんに聞いてから調べたんだけど」



適性無しのなけなしのメリットを挙げると妹は余計に疑問に思いながら聞き、弟がその際のデメリットを話す。



「そんな…じゃあどんなに魔力が多くても、使いようが…」


「だから適性が関係無い変化魔法が俺には救いの糸に見えたわけだ。…でも適性無しでの変化魔法の使い手は現状俺だけっぽいけど」


「そりゃ普通はハンデを抱えても属性魔法や強化魔法、回復魔法を選ぶからね」



この国じゃ変化魔法の使い手は兄さんだけだし。と、弟は俺の返答に反論すると呆れながら言った。



「前の家庭教師ももうこの国には居ないからなぁ…オンリーワンってカッコ良くね?」


「ただの奇人か変人、それか狂人でしょ」


「兄様の方が私よりよっぽど酷い」



雰囲気を変えるように俺がおどけながら聞くと弟もそれを察して鋭くツッコミを入れ、妹が笑う。



「まあさっきも言った通り変化魔法って周りから蔑まれるわボロクソ言われてるわ忌避されてるわ…で、印象とかめちゃくちゃ最悪だけど…実は意外と便利なんだぜ?」


「いやソレ、フォローし切れてないよ」


「じゃあお兄様。その便利な変化魔法とやらをなにか見せて下さります?」



俺の感想に弟がやっぱり呆れたように返すと妹がいじわるとかイタズラするような感じで笑いながら促す。

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