少年期 12

…そして二年後。



「…リデック君。もはや俺が君に教えられる事はもう無い。後は技の練度を高めていくだけだ」


「え?」



ダンジョンから出ると男が急に嫌な感じの褒め方をした。



「本当はもっと早くに言うべきだったのだが…今日の動きを見て確信した。このままいけば近い内に君は俺を追い越すだろう」


「そんな…」


「なので誠に勝手ながら今日で君の家庭教師は辞めさせてもらう」



男は気まずそうな顔で言いづらそうに辞職を申し出る。



「まだ師匠には教えてもらいたい事が…!」


「もう俺に教えられる事は何一つ無い。だからだ!だからこそ、俺は君の師匠であり続けるために…君の前を歩き続けるために修行し直して新たな技を習得せねばならんのだ!…そのためには今のように家庭教師を続けながらでは無理なのだ…分かってくれ」



俺が引き留めるように言うも男は辞める理由と決意を口にして俺の両肩に手を置いて諭すように告げた。



「…分かりました」



流石にここまで熱く語られてしまったら同じ男同士、尊重しないわけにはいかず…しょうがなく残留を諦めて送り出す事に。



「ふっ…この歳になって強くなるための修行など周りには笑われるだろうが…君に『人には限界が無い事』を教わった。何年経とうと俺は必ずまた戻ってくる、君に更なる技を授けるためにな」


「…はい」


「ではまた会おう」


「はい。また」



男の発言に俺は寂しさを感じながら返事をすると別れの挨拶をして手を差し出すので俺は若干泣きそうになりつつ別れの握手をした。



「…寂しくなりますね」


「うん」



去っていく男の背中を見ながらお姉さんも若干泣きそうなのを我慢しながら言うので俺は肯定する。



「…坊ちゃま。私もお暇を頂きたいのですが」


「「えっ!?」」


「私も彼と同じく、もう坊ちゃまに教える事が無くなりましたので…更に研鑽を積もうと思っています」



男を見送った後のおじさんの発言に俺とお姉さんが驚くと男は理由を話す。



「う、うん…分かりました」


「自分勝手な都合で申し訳ありません。ですが、坊ちゃまを見てると『こんな私でもやれば出来るのではないか?』という衝動に駆られるのです」


「…戻って来ますよね?」


「はい。必ずや新しい知識や技術を身につけ、坊ちゃまに伝授致します。約束です」



おじさんの謝罪しながらの発言に俺が確認するとおじさんは『約束』を口にした。



「分かりました。それが聞ければ十分です」


「では坊ちゃま。また次に会う日までお達者で」


「うん。またね」



男と同じようにおじさんも別れの挨拶をして手を差し出すので俺は挨拶を返しながら握手する。



「…まさか先生も居なくならないよね?」


「え、私ですか?…私は今のところ坊ちゃんの下を離れる理由がありませんし…」



おじさんの背中を見送りながら確認するとお姉さんは不思議そうに聞き返し、考えながら否定的に答えた。



「そう?良かった」


「それより、あの二人…戦利品の一部を受け取る前に去っちゃいましたね」



もったいない…と、お姉さんは地面に広げられた魔物の素材を回収しながら呟く。

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