少年期 5

…第二層に向かって進んでる最中に居たゴブリン達を絞め技で倒していくとポロポロ魔石が落ち…



「いやー坊ちゃんやりましたね!魔石の取り方を発見するなんて偉業ですよ!偉業!今世紀最大の世紀の大発見ですよ!」



その様子を見ていた男が魔石が落ちる条件に気づくとお姉さんが興奮しながら喜ぶ。



「しかし…魔物相手に絞め技で挑むのは危険ではないのか?リデック君のような特殊な訓練を積んだ者でないと犠牲者が出ると思うのだが…」


「た、確かに。そうですね…坊ちゃんは部位鍛錬の結果、ゴブリンごときの攻撃では傷一つ負わない鋼の肉体が出来たからこそできる芸当であって…普通の人にはちょっと…いえ、かなり厳しい条件かもしれません」



男の指摘と反論にお姉さんは考えを改めたかのような事を言う。



「…どうやらコレは秘匿事項として報告する必要がありますね…情報を拡散すると金に目が眩んだ犠牲者が大量に出るでしょうし」


「…まず間違いなくやるだろうな。『絞め殺す』という条件は簡単で緩く思える。が、ゴブリンには手足に鋭い爪がある…それゆえにそう上手く事は進まないだろう」



お姉さんと男がなにやら難しい会話をしている間に下に降りる階段を発見。



俺は早速次の階層へと降りる事に。



「…いた」


「スライムの弱点は火です。蒸発させれば消滅しますよ。あと皮膜を斬り、体液を減らして核である魔石を狙う…という手もありますが」



スライムを発見するとおじさんが倒し方を教えてくれるので…



「…えいっ。…っ!いっ…!!!」


「坊ちゃん!?」「坊ちゃま!?」



俺が貫手でスライムの中に手を突っ込むとあまりの激痛に思わず声が出て、お姉さんとおじさんは俺の行動を見て驚愕した。



「…てぇっ…!!」



気合いでスライムの中にある魔石を掴んで手を引き抜くとスライムは形を保てずビチャ…と水たまりのようになって消える。



「馬鹿ですか!?馬鹿なんですか?あなたは!!」



お姉さんは怒ったように俺を罵倒しながらも心配そうな顔で駆け寄ってきた。



「さっきの話聞いてました?『スライムの体液は素肌に触れると危険だ』って言ってたじゃないですか!」


「…でも、火傷や凍傷、感電ぐらいなら部位鍛錬でもやってるし、イケるかと思って…痛たたた…」


「確かに『属性に耐性をつけるため』って言って火だるまになったり氷漬けになったり電気を浴びてたりしてましたけど!でもそれとこれとじゃ…!」



まくし立てるように怒るお姉さんに俺が言い訳しながら痛みを堪えてると、文句を言いながらもすぐに回復魔法を使ってくれる。



「なんて馬鹿な事を…!この場にお嬢さんが居たから良かったようなものの、処置が少しでも遅れたら腕が壊死して命の危険にも繋がるんですよ?いくら若いからといってここまで一線を超えた無茶をされると流石に容認しかねますぞ!」


「老師、逆です。先生が居たからこそ試したんです。この場に先生が居なければ流石にこんな事はしませんよ」



珍しくおじさんが怒りながら説教をかましてくるので俺は言い訳ついでに反論した。



「…本当ですね?その言葉に嘘偽りはありませんね?」


「はい。当たり前です。俺だって命は大事ですし、死ぬまで五体満足でいたいです。そのための修行ですので」


「…よろしい。坊ちゃまのその言葉…信じますぞ」



おじさんの確認に俺が嘘偽りなく本音で答えるとソレを察したのかアッサリ引き下がってくれる。



「…素人考えですまないが、皮膜を切って体液を減らした後に魔石を取ったらダメなのか?」


「ダメ、というか…その場合だと取った魔石も魔素に変わるので取る意味が無くなっちゃうんですよね」



男が不思議そうに疑問を聞くとお姉さんは慣れたような感じで反論した。



「…そうなのか?」


「はい。どうにか魔石を取れないか…とハンターやシーカーのみなさんが色々な方法を試した結果、理論上は坊ちゃんみたいに『直接手を突っ込んで取らないと無理』って結論になりました」


「…そうか。すまないな」



男の確認にお姉さんが説明すると男は納得したように呟いて謝罪する。



「でもまさか本当にソレをやってのける人が居るなんて…世界は広いですね~」



お姉さんは俺から丸い形の魔石を受け取ると掲げるように見ながら、呆れながらも感心したように言う。



「一応は修行しに来てるわけだからね。コレも部位鍛錬の一環という事で」


「…スライムの体液が平気になったら魔石取り放題って事ですよね…?…やりましょう、坊ちゃん!回復は私にお任せ下さい!」



俺の言い訳のような反論にお姉さんは少し考えるとやる気になり、さっきとはうって変わって後押ししてきた。



「ちなみに。スライムの素材は皮膜と体液です。その皮膜や体液を採取する場合には地面や壁に吸収される前にピンセットやスポイトで回収する必要があります」


「へー」


「スライムの体液は希釈したり加工すればジュースや飲料水に、皮膜はゼリーや食べ物として人気ですので危険性の割に素材は高値で買い取ってくれますよ」



ただし、素材回収の難易度は高いですが…と、おじさんは豆知識のように説明した後に補足のように注意事項を告げる。



「…じゃあそのジュースやゼリーを食べてもスライムに変化できるようになるんですか?」


「いえ、そこまで加工された物はもはや別物になりますので無理ですね。スライムの場合は少量の体液を水で薄めて飲むか…皮膜の一部を飲み込む、または魔石を削って粉末状にして飲む方法で変化できるようになります」



俺が疑問を聞くとおじさんは否定しながらちゃんとした方法を教えてくれた。



「魔石をそんな事に使うなんてもったいない!皮膜を食べましょうよ!味は無いですが喉越しはツルンとして食べやすいですし」



私が回収しますので!と、お姉さんは魔石を使う方法を拒否しながら別の方法を提案する。



「じゃあそれでいきますか」


「はい!」



お姉さんの提案を受け入れる事にして俺は先に進むことにした。

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