少年期 4

「では先に進みましょうか」


「はい」



変化魔法のデメリットについての話が終わったのかおじさんが行動を促すので先に進む事に。



「…いた。今度は二体」


「あ、坊ちゃま。もう服は脱がなくても大丈夫ですよ」


「…え?」



ゴブリンを見つけたので俺がシャツを脱いでズボンを脱ごうとしたらおじさんがとめてくる。



「変化魔法は服ごと変化しますので、それを応用すれば破れた服を元どおり直す事も出来ます」


「へ?」


「多少魔力を消費しますが…まあ誤差の範疇でしょう」



なのでこれからは裸にならずとも大丈夫ですよ。と、おじさんはにこやかに笑いながら説明した。



「そ、そんな事が…?…試してみます!」



俺は疑いながらもとりあえず試すためにゴブリンの所へと突撃する。



「ギッ!ギシャー!」


「ギャー!ギャ!」


「うーん…ホントに大丈夫かな?」



俺は二体のゴブリンに爪で引っ掻かれたり、牙で噛み付かれたりしてるが痛みは全くなく…



かすり傷一つすら付いてない状態で棒立ちしながらボロボロになっていく服を見て不安になりながら呟く。



「…すごい…」


「部位鍛錬を極めるとあそこまで…」


「あれぞ正に『歯が立たない』『爪痕すら付かない』状態ですな…」



一切の防御行動や回避行動をせず、二体のゴブリンの激しい攻撃を棒立ちで受けてるのに全くのノーダメージの俺の様子を見てお姉さん達は驚きながら呟いた。



「…そろそろかな」


「「ギッ…!!」」



もう服がボロい布切れ状態になってるので俺は両手でそれぞれのゴブリンの首を掴む。



そして親指と中指に力を入れて握力で絞めるとゴブリンが直ぐにオチたのかほとんど無抵抗のまま身体が消えて素材が落ちる。



「あっ!」



落ちた素材の中にまた魔石らしき紫の六角形の石が二つあり、お姉さんが指を差して声を上げた。



「ま、ままま…また魔石です!しかも今度は二個も!魔石が複数同時に出た事例なんて聞いた事がありません!今回が初ですよ!初!」



お姉さんは興奮した様子で駆け寄ってくるとすぐさま魔石を拾って他の素材も拾う。



「老師、服はどうやって戻すんですか?」


「魔物から元に戻った時のように変化魔法を使ってみて下さい」



俺がおじさんに確認すると方法を教えてくれたので早速試すと…



「…おお!おー!凄いです!流石老師!」



もはや雑巾にも使えるかどうか分からないほどにボロボロの上着やズボンが元の綺麗な状態に戻るので俺は興奮しながら喜び、おじさんを褒める。



「そんな事より見て下さい!魔石が3つも!」


「あー、うん。じゃあ次行こうか」


「流された!?なんでこの異常事態に気づかないんですかー!」



お姉さんは興奮しながら更に増えた魔石を加えて合計の数を言ってくるので俺が適当に流して歩き出すと地団駄を踏んで叫び、急いでついてきた。



「いた!ゴブリンだ…よーし…」


「ギ?」



またゴブリンを発見したので俺は今度は関節技を極めるために真正面から歩いて近づく。



「ギー!ギー!」


「えい」


「ギッ!?」



俺がある程度近づくとゴブリンが爪で引っ掻いてくるので手を掴んでアームロックの要領でまずは右肘をへし折る。



「意外と簡単に折れたな…次」


「ギャッ!」



パキッと小枝を折るよりも簡単に折れたので今度は左腕を腕十字で折った。



「…なんと。魔物にも効くのか…!」



次にゴブリンに脚関節を極めて両足を折っていくと男が驚きながら呟く。



「確認終了…ていっ!」



両手両足の骨を折られ、靭帯までも切られて動けないゴブリンに俺が最後に下段突きで顔面パンチを叩き込むと姿が消える。



「…ああ~…今回は魔石無しですか…」



ゴブリンが消えた後に残ったのは爪だけだったので…お姉さんは素材を拾いながら残念そうにがっかりしながら呟いた。



「では坊っちゃまも魔物との戦いに慣れてきたようですし…次の階層に進みましょうか」


「はい」



おじさんの提案に俺が肯定するとどうやら先導してくれるらしく、おじさんは俺の前を歩き始める。



「次の階層…第二層に居る魔物はスライムです」


「『スライム』?」


「はい。凶暴性は無く、襲われる事もほとんどありませんし攻撃方法も『体当たり』や『のしかかり』といった原始的で単調な事しかしません」



おじさんは歩きながら次に戦う魔物の事を教えてくれた。



「ですがゴブリン同様油断は禁物です。スライムの体当たりは骨が折れたり内臓を損傷したりするぐらいには威力が高く、のしかかりで体液をかけられて大怪我を負うケースも少なくありません」


「体液で大怪我…ですか?」


「はい。その体液は消化液のようなモノであり、ソレが素肌に触れると火傷や凍傷…感電に似た症状を引き起こし…最悪壊死する可能性があります」


「え、壊死…?」



おじさんの説明に俺が不思議に思いながら聞くも、そのまさかの解説に俺は驚きながら呟く。



「装備にかかれば腐蝕もしますし…意外とスライムはハンター達から敬遠されてる魔物なんですよ?」


「そうなんだ…」


「スライムはほとんどが水分で構成されていて、中心の魔石を守るように体液が満たされており外側は薄い皮膜で球体状に守られています。なので魔物の弱点である魔石が常に見える位置にある事になり、倒す事自体は簡単なのですが…」



お姉さんが補足するとおじさんはスライムの見た目と倒し方について話し始める。



「やはり近接戦闘だと武器の腐食が嫌がられるので、蹴飛ばしたり投げ飛ばす事で壁にぶつけて倒したり、油をかけた後に火を点けて燃やして倒す…といった方法もあるそうですよ」


「な、投げ飛ばす?」


「皮膜なら素手で触っても問題無いので二人掛かりで持って壁に向かって投げるとか」


「なるほど…あ、ゴブリン」



おじさんの講義や説明を聞いて俺が納得してると進路上にゴブリンを発見したので今度は裸絞めで倒す事に。

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