幼少期 3
…それから毎日のように部位鍛錬や筋トレといった修行を続ける事、約一年後。
6歳になった俺は部位鍛錬や筋トレだけでは物足りなくなり…
母親におねだりして投げ技や関節技を覚えるべく柔術を使える柔道家の家庭教師を呼んでもらう事に。
ーーーーーーーー
「坊ちゃん、いきますよ」
「うん」
「えい!えい!えい!」
「…何をしているんだ?」
…俺のおねだりから一月後。
他国から呼ばれた男はお姉さんに硬い木の棒で頭や肩、背中などを叩かれてる俺を見ながら不思議そうに尋ねてきた。
「修行、中です!えいっ!えいっ!」
「痛いっ!脚の方は痛いよ!痛っ!」
「やめろ!」
お姉さんが答えながら力いっぱい叩いていると徐々に下の方に下がり…太ももや膝の裏を叩かれて痛がる俺の様子を見て男がお姉さんを止める。
「はあ…はあ…」
「ううっ…脚の方はまだまだだ…」
「大丈夫か?」
お姉さんは打ち込みをやめて息を整えているので俺が痛みを我慢しながら呟くと男が心配した様子で声をかけてきた。
「…ありがとうございます。ココに来たって事は、お兄さんが新しい家庭教師ですか?」
「…お、お兄さん…いや、やはり君が子爵夫人の言っていたリデック君か…孤児院の人からはココで修行していると聞いてたが…」
…どう見ても30後半から40前半…もしかしたら中盤?にしか見えないおじさんに社交辞令的なお世辞を言うと、嬉しそうな顔をして確認するようにお姉さんを見る。
「ふう…男手が増えてくれて助かりました。もう私が坊ちゃんの相手をするのは大変で…」
「ありがとう、アーシェ」
お姉さんは男を見て呟くと回復魔法で治してくれるのでお礼を言う。
「いったい何を?虐待のようにしか見えなかったが…」
「ハタから見たらそうでしょうね…坊ちゃん曰く『部位鍛錬』と言われる修行法らしいですけど」
「部位…鍛錬?」
男が不思議そうに聞くとお姉さんも同意しつつ説明するもやはり男は不思議そうな顔のまま尋ねた。
「なんでも身体を痛めつけて回復する事によって骨や皮膚を硬く丈夫にしていくそうです」
「ふむ…変わった…特殊な鍛錬法だな。似たような方法は聞いた事あるが…」
「ホントですか?坊ちゃんの変態的な性癖や嗜好からくる修行だと思ってましたが、意外と似たような鍛錬法はあるんですね!」
「…そんな風に思われてたんだ…」
お姉さんの解説に男が顎に手を当てながら考えるように返すとお姉さんは驚いた後に失礼な事を言い出し、俺は微妙な顔をしながら呟く。
「だって他にこんな馬鹿らしい事をやってる人なんて聞いた事ないですし…」
「そうだけど…まあいいや。師匠、俺に技術を教えて下さい」
お姉さんが言い訳でもするように理由を話すが多分誤解は解けてるだろうと、俺は男に技の伝授を申し出る。
「し、師匠…?俺が…?」
「はい。よろしくお願いします」
「そ、そうだな…ではまずは投げ技の基本から教えよう。投げの基本は『掴む』『崩す』『払う』だ」
男は困惑したように自分自身を指差しながら聞くので俺が肯定すると照れ臭そうに基礎知識を話し始めた。
「なるほど。握力が弱ければ途中で切られ、重心を崩せなれば投げる体勢に移行出来ず、地面から身体の一部を離す事が出来ければ投げる事が出来ない…というワケですね?」
「…君、今いくつ?」
俺が納得しながら理由を自分なりに解釈しながら確認すると男に年齢を尋ねられ…
「6歳です。6歳と一月ほど」
「…本当に?どう考えても6歳の知識と理解力じゃないんだが…」
そう答えると疑うように困惑した様子で呟かれる。
「ありがとうございます」
「…まあ最低限の知識はあるようですから早速実践に移るとしましょうか。まずは私が手本を見せます」
俺がお礼を言うと男は仕切り直したように返すや否や目にも止まらぬスピードで俺の服の胸ぐらを掴む。
すると急に浮遊感に包まれ…気づいたら俺は空を見上げていた。
「…コレが基本の『投げ』。本来なら背中や頭を地面に叩きつけるところなんですが…手加減はうまくいったでしょうか?」
「…はい。全く痛くないです…気づいたら地面に転がされてました」
男の説明と確認に俺は何がなんだか分からない内に投げられていた事に混乱しつつ答える。
「しかし…なぜ柔術などを習おうと?」
「特に意味は無いんですけど…強いて言えば武器が無くなった時に素手でも戦えるようにしたいと思って」
「なるほど。ですが柔術はあくまで対人戦…それも武器を持った相手にはあまり有効ではありませんが」
「師匠の今の動きが出来るようになればほとんどの相手は一瞬で制圧できると思います」
「そ、そうですか…光栄です」
男が理由を聞いてくるので『前世の記憶が…』というのをボカして説明すると納得しつつも現実的な事を言うので俺が褒めて返すと男は照れた。
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