少女失踪事件

"昨日、夕方頃に14歳の少女が失踪しました。通報があったのは今朝6時頃で、現時点で手がかりはなく、警察は誘拐の可能性も含め捜査しています。"

一人の少女が映る一枚の写真と共に全国に報道されたこの事件をこれから捜査しに行く探偵がいた。

とある探偵事務所に所属するノア氏だ。

ノア氏は探偵の中ではまだまだ無名の者だったが、少女の母親に依頼され、15時頃捜査に向かった。

「お忙しい中、娘のためにありがとうございます。」

妙に落ち着いた様子の少女の母親が言った。

『いえいえ。では早速ですが、先に少し失踪当時の状況を教えて頂いてもよろしいでしょうか。』

「はい。娘がいつも学校から17時までには帰ってくるんです。私が仕事から帰るのは21時頃でして。家に帰るといつもは晩ご飯を用意して待ってくれているのですが、昨日は娘がいなかったんです。娘の部屋には教科書や学校の鞄があったので一度は帰ってきているはずなのですが、近所を探してもどこにもいなくて。」

『では次に、娘さんのお部屋を見せて頂けますでしょうか。』

「はい、こちらです。」

母親は素直に応じる。

部屋は巾木と床に凹むように多くの傷がある。

『巾木と床の傷は?』

ノア氏が母親に尋ねる。

「家具を動かす時に傷ついてしまったんですよ。」

『そうですか。巾木まで傷がついているのに壁紙に傷が見られませんね。』

「あ、今朝貼り替えたんですよ。お客さんが来るのに傷があるなんてみっともないかと思いまして。」

動かすだけで床や巾木が傷つくようなものは金属製のもの以外有り得ない。

そして特に金属製の家具はないと思われる。

急に壁紙を貼り替えるのも違和感がある。

『壁紙、折角貼り替えたところ申し訳ありませんが、剥がしてもよろしいでしょうか。』

母親は少しの沈黙の後答えた。

「はい。どうぞ。」

壁には傷と共に黒色の跡がいくつか見つかった。

そしてノア氏は最後にひとつ質問した。

『最後に、この臭いはなんですか?』

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