死にかけた豚ポーターは深層から這い上がる〜痩せてイケメンになったがメンヘラはいりません〜
あに
第1話 ポーター
「トーチ」
明かりを灯すとそこは今までと違う雰囲気をした洞窟内だった。
「いったい何が起きたんだ?」
頭が割れるように痛い。身体中が傷だらけだ。
俺はようやく組んでもらえたパーティーでダンジョン探索していたが、気づいたらこの場所にいた。
「…思い出せない」
何が起こって俺がここにいるのかがわからない。とにかく据えた臭いで今にも吐きそうだ。
「ここから出ないと」
下は崖になっているのか道が途切れている。
「ぅ……」
下を覗くと仲間が死んでいた。そうか、俺たちは上層から落ちて俺だけがここに引っかかったんだな。臨時のパーティーで挑んだので仲間と呼べるほど親しくはなかったが、俺は手を合わせる。
荷物持ちの俺だけこんな形で取り残されてしまった。
「ハハッ、いくらなんでも深層じゃ無いよな」
トーチを消して身を潜める。明かりゴケのお陰で少しは見えるがどう考えても良い状況では無い。
俺は十八の卒業したばかりでようやく冒険者になれたばかりの下っ端だ。そこでようやく荷物持ちとして雇ってくれたパーティーにこき使われながらやっとの思いでダンジョンに潜ったのに。
「これじゃ死んだ人達には悪いけど、ついてくるんじゃなかった」
装備だって皆んなより格下の革鎧に鉄の剣。しかもまだ覚醒してないから魔法はトーチとウォーターの二つしか使えない。
俺にもゴブリンくらい倒させてくれていたら違ったと思うのに。
いや、いまからでも遅くないだろ。しっかりしろ!なんとか外に出るんだ。
荷物持ちだから荷物の中にポーションがあるはずだ。
俺は荷物を漁ると低級ポーションを見つけて飲み干す、そして傷が癒えるのを待つ。
「クッ」
低級ポーションだとこんなもんか、頭の痛みが少し楽になって切り傷がマシになっただけだ。
とりあえず上に向かう。足を動かし、壁に寄りかかりながらでもなんとか上を目指す。身体中がズキズキと痛みを発しているが、なんとか上に行かなければ。
「うおっ!」
壁にもたれかかって移動していたので横穴があることに気づかずに俺は転んでしまった。そこには卵が四つあり、一つを俺が身体で潰してしまった。
途端に頭の中で響く声がして、
『特殊モンスター討伐を確認、スキルツリーの解放、スキルの習得、個体修正、ステータス更新』
「うがあぁぁぁぁ」
身体中が焼けるように熱い。俺はその場にある卵に関係なく転げ回り結局全ての卵を潰してしまった。
『特殊モンスターの討伐を確認、スキルツリーの解放、スキルの習得、強化個体への修正、ステータス更新』
「うががぁぁぁぁぁぁぁ」
異常なほど熱く苦しく痛い、まるで身体が書き換えられているようだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
どれだけ時間が経ったのかわからないがこの卵のお陰で俺の覚醒が済んだようだが、こんなに痛いものなのか?
「身体が痛く無い?頭もあんなに痛かったのに…それよりステータスか」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
レベル102 職業 ポーター(無職)
力 S
体 S
速 S
知 S
魔 S
スキルポイント1020
スキル 軽魔法(トーチ ウォーター ホール クリーン)重量軽減 罠解除 鍵開け
ユニーク インベントリ 第二職業解放
称号 起死回生 ドラゴンキラー
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「な、なんだこれ」
なんの卵だったんだ?ここにいちゃまずいんじゃ無いか?
すぐに外に出るが遅かった。
『グウオオオオオオオオォ』
「ド、ドラゴン」
俺が潰したのはドラゴンの卵?!
『クオォォォォォォォォ』
「や、やばい!」
ドラゴンは口の中にブレスを溜め込んでいた。
俺は急いで走るが勢い余って壁にぶつかりそうになり壁に足をつけジャンプする。俺の体じゃ無いように速くて、頭がついていかない。
『ゴオオォォォォォォォ』
「うわぁぁぁ」
ブレスは下の方で吐かれていて、俺は空中でそれを見ている。おかしな事になっている。このままではドラゴンの真上に落ちてしまうのでジタバタするが無理だった。
「ああぁぁぁぁぉぉぁぉぉ」
“ドシャッ”
ドラゴンの頭にダイブした俺はドラゴンの頭を潰してしまったようだ。
「あいたたた…うへぇ」
ダンジョンのモンスターはドロップ品を残して消える。ドラゴンもドロップ品を残して消えていった。
「これは?」
一本の剣と鱗と肉と爪と魔石がドロップした。
もしかしてと思い卵があった場所に行くと指輪が三つにカードが一つドロップしていた。
「も、もらっていきます」
ドラゴンの巣から生還した俺は荷物を持って急いでその場から離れると、安全そうな場所を見つけて身を隠す。
ドラゴンを倒したので胸は張り裂けそうなほどドクドクいっているし、手足は震えている。
「、ほ、ほんとに俺がやったのか?!」
どうやら夢ではないらしい。
そう言えば体育座りなんかできないほどの体型だったのだがいまは普通にしている。ちょっとだけ痩せたのか?
身体を触るとぼょんと出ていた腹が引っ込んでいるし、プニプニの腕がカチカチになっている。
どうやら痩せたようだ。痩せるような思いをしたからかな?
それはどうでもいいか。いまは早く外に出ることが先決だ。
俺は荷物を背負って走って上へ続く道をひた走る。
途中出てくるモンスターは無視してとりあえず階段が見えたので階段で一休みする。
「はあぁぁぁぁ、怖かった」
「なにが怖かったの?」
「どわあぁぁあぁ」
「きゃあぁぁぁあ」
急に声をかけられビックリしたが、よくみると憧れの冒険者、レイナ様だった。
レイナ様はSランク冒険者で俺より四つ年上のお姉様で、ダンジョン配信者としても活躍している人気者だ。サラサラの金髪が綺麗でシャープな輪郭にプルンとした唇。胸も大きくて…
「す、すいません」
「いや、こっちこそ急に声かけてごめんね」
「あ。あの、ここはどこになるんですか?」
「ここはダンジョンの下層から深層への階段だけど?」
「やっぱり深層だったんだ」
「え?」
「俺たちのパーティー…って言っても臨時パーティーですけど、何故か落ちてしまって深層に落ちたらしいんです」
「え!大変じゃない!ランクは?」
「臨時のパーティー全員がCランクで俺はFランクです」
レイナ様は少し考えると、
「トラップを踏んだか、縦穴に落ちたかよね?他のメンバーは?」
「残念ながら俺だけ途中で引っかかったみたいで、下でみんな死んでました」
「そう。荷物が引っ掛かったのかもね、にしても運が良かったわね」
本当に運が良かった。
レイナ様が深層に行って確かめてくるそうなので俺はここで待機だ。
「…なさい、起きなさい」
「は、寝てましたか」
「無理ないわ、あんな深層の奥まで落ちたんだから」
「みんなは?」
レイナ様は頭を振って冒険者証のドッグタグを四人分見せる。
「あぁ、やっぱり」
「即死ね、でもあんなところからよく戻って来れたわね」
「はい、なんとか」
Sランク冒険者でソロでやってるひとはあまりいないが、レイナ様はついて来れる人がいないのでソロでやっている。
外まで連れていってもらい、ようやく気持ちが落ち着いた。
「貴方が生き残りね、話を聞かせてもらうわよ?」
「は、はい」
「レイナさんからあらかた聞いてるから事実確認のみね」
それから事情聴取を受けてすぐに解散となった。
俺はようやく外に出れた感動で涙が出た。
もうあんな怖い目には会いたくない。
でも俺のレベルとスキルがそう言うわけには行かなくなっている。今思うとステータスがとんでもない事になっていた気がするのだ。
秋葉原ギルドから出てワンルームのアパートへ帰っていく。
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