剣聖ってなんなんだよ!俺の周りには、まともな奴はおらんのか

フィステリアタナカ

第1部 始動編 そして冒険者に

第1話 レオンと幼馴染のルイ

 俺はレオン、十歳だ。幼馴染のルイの隣で勉強している。小さい頃から一緒に遊んで、泥だらけになって呆れられたり、甘い農作物を勝手に食べて、めちゃくちゃ怒られたり、ずっと一緒に遊んできた親友だ。


 六歳の頃「なんで教会で勉強するの?」と父親に聞いたら「文字を読めたり、書けたり、友達もたくさんできるよ」って言われ、ルイと一緒に教会に行って勉強した。

 勉強する所が教会なので、孤児の子たちとも楽しく遊んだ。友達がたくさんできたけれど、幼馴染のルイの代わりはいないって感じた。読み書きが少しずつできるように、計算もできるようになっていった。


 最後の一年間は地理の勉強の他に、階級社会の事や適正の儀が十二歳にあること。

そして、どんな仕事があるのかを学んだ。農業をしてもいいし、弟子いりして鍛冶屋や大工などの職人になってもいい。学園に進学して、さらに勉強してもいいと。


 俺は来年、農業をすることを決めた、家の都合もあったし、お金を得て、お世話になった教会にお布施もしたいからだ。

 ルイは学園に行くことを選んだ。彼は小さい時から精霊が見えるらしく。その勉強をしたいと。

 心の中では(こいつ、頭いってるな)と思っているが、言わない。親友だし、言う必要もないし。

 ただルイと離れることは、少し思うところがあった。



「レオン、僕のこと忘れないでね」

「馬鹿、親友のことを忘れるヤツがどこにいる」


 ルイは学園に行く、俺はその見送りに来ている。ルイは学生寮に入るらしく、特別なことが無い限り、四年間は一緒に遊ぶことができない。


「じゃあ行くね」

ルイはそう言って、馬車に乗り込んだ。

「たぶん適性の儀で会えると思うから、そのとき、また遊ぼうな」


 馬車は進んでいって、見えなくなるまで、ずっと見ていた。


 俺は働き始めた。農業は思ったよりも重労働で、土を返したり、苗を植えたりする。場合によっては、木を伐り、焼いて新しく農地を広げることもあった。


 そして、適性の儀を向かえる。


 ◆


「ここが神殿かぁ、思ったよりも大きいな、あいつ見つけられるかな」


 神殿の階段を上り、ルイを探す。適性の儀を受ける者だけではなく、それを見守る者もいた。


「多いな」


 会えないかもしれないと思った矢先、奥にルイの姿があった。


「おーい、ルイー」

 ルイはこちらを見て、気が付いたようだ。

「レオン!」


 俺は近寄り、

「久しぶり、元気か?」

「うん、僕は元気だよ、それよりレオン、逞しくなったね。筋肉も凄い」

「ははは、農業をしていれば、こうなるよ。一生懸命やったしな」


 俺はルイと並び順番を待つ。途中、しゃべるなと注意されたが、知らん。

(だってよぅ、一年半ぶりだぜ、少しくらいいいだろ。)


 そして、俺らの番になる。

「どっちが先いく」

「ルイでいいんじゃね」

「じゃあ、先にいくね」


 ルイが前に行き、神託を受ける。

「ルイ、あなたは精霊術師です」


 周囲がざわめく。ルイはとても嬉しいそうだ。


「やった。やったよ。レオン、精霊術師だ」


 よくわからんかったが、

「おう、良かったじゃん。ルイ」

「うん、勉強が無駄にならなくてよかった」

「俺の番だな。行ってくるよ」

「うん、平常心でね」


 俺は前に進み、神託をうける。

「レオン、あなたは剣聖だ」


「おおーーー」


(なんだケンセイって、よくわからん。)


「レオン、凄いよ、凄い」

「ケンセイって、すごいのか?」

「うん、凄い」

「ピントこないな、じゃあ行くか」


 大人の人がこっちに何人が来たが知らん。それより、ルイとの時間の方が大切。

大人を振り切るように、ルイの手を握る。


「いくぞ、ルイ、走るぞ」

「ちょ、ちょっと」


 俺は全速力で走り神殿を後にする。ルイがどうなったかだって? なんか、風の何とらやを使って、ついてきてくれた。


 ルイとどんなことをしようかと思案していると。

「レオン、あのね、門限があって、移動を考えると、あと2時間しか遊べないんだ」

「えっ」

「なんか、ごめんね」

「まぁ、二時間でも一緒に遊べるし、いいんじゃね」


 二人で街を歩き観光。途中、屋台があったので遅い昼食をとった。

「ほい、ルイの分」

「ありがとう」

 食べ終わって、近況報告。

「僕は楽しく学んでいるよ。一生懸命頑張って奨学金をもらいたいんだ」

「なんだショウガクキンって」

「成績がいいと、お金が貰えるんだよ」

「そんなことがあるんだ」

「あともう少し頑張れば、いけるんだけどなぁ」

「ちなみに何人もらえるの?」

「三人だよ」

「だよな、お金もらうって大変なことだし」

「そうだよね、レオンも頑張ってお金得てるし」

「ちなみに、あとどのくらい頑張ればいけるの?」

「うーん、学年で五位だから二つ上げないとね」

「へー、そんなんだ。もうちょっとじゃん」

「でも、二つ上げるの大変なんだ。全科目九割五分以上とらないと無理なんだ」

(キュウワリゴブってなんだろ?)


「そういえば、レオン、剣聖って凄いじゃん!」

「ケンセイって、いまいちわからん」

「剣士の一番凄いやつだよ」

「そうなのか、農業やっていたけど、剣士が向いているのか」

「冒険者やれば、めちゃくちゃ稼げ……うぅん、何でもない」

「どうしたルイ?」

「……」

「俺たちの中じゃん、教えてくれよ」

「……あのね、冒険者って死ぬことが多いんだ」

(そうか、お金に目がくらんで、死ぬこともあるのか)


「その冒険者をやれば、ここに住めるのか?」

「うん……そうだよ。でも、お金ないでしょ、鎧とか剣とか」

「そうだな、一回、帰って親父と相談するわ」


「じゃあ、ここでお別れだな」

「うん」

「そんな顔すんなって、二年半後には一緒に遊べるんだから」

「うん、そうだね」

「じゃあ、戻るわ、またな、ルイ」

「うん、またね、レオン」


 こうして、俺は帰郷すべく、馬車に乗った。


 ◆


「ただいまー、親父」

「おかえり、それで、どうだった?」

「なんかよくわからん、ケンセイってやつらしい、ルイが言うには剣士だって」

「剣士か、農業やっているのもったいないな」

「ん?」

「農作物を荒らす、魔獣を殺したり、いろいろな人の役に立つ適性だよ」

「へー、剣士ってそうなんだ。親父、俺剣士ってやった方がいい?」

「適性が向いているとはいえ死ぬ可能性はあるからな」

「農業やってても、魔獣に襲われたら、死ぬんじゃねぇ」

「うーん、そうだな、ベネフィットとリスクを考えても、どっちがいいのかわからん」

「じゃあ、俺剣士になるよ。剣士になって、都会に住むよ」

「うーむ、それは困る、都会に行かれるとね」

「親父なんで?」

「お前の働きが無くなると思うとね」

(うーむ、そうだよな、あっ)

「親父、農業やりながら、剣士やればいいんじゃね」


 近所のおっちゃんらに聞いたところ、剣士をやるには、隣町にある冒険者ギルドで登録をしないといけないらしい。


(ここだな、どこにいけばいいんだ? 取り敢えず列に並ぶか)

 俺の番がくる、

「今日はどのようなご用件で」

「剣士で働くには、登録しないといけないと聞いたもので」

「そうですか。じゃあ冒険者登録しますので、こちらの用紙に書いてください」

(教会で勉強したのは、そういうことだったのね)


 書き終わり、受付の姉ちゃんに渡す。

「はい、わかりました。ギルドカードを作るので、ちょっとお待ちください」

「ちなみにどんな仕事があるんですか?」

「あちらにあるクエストボードの依頼書がありますので、それを受付に持って頂ければ」

(あとで見てみるか)


「お待たせしました。ギルドカードです。FランクからになりますのでEとFの仕事ができます」

「ほう」

「それとこのカードはお金を貯めた金額も記載されるので失くさないように」

「わかった、ありがとう」



「ちょっと、そこのあなた」

 振り返ると鉄っぽいのを身に着けて、槍を持っている女がいた。

「私とパーティー組まない?」

「パーティー?」

「一緒にクエストやらないかってこと」

「あぁ一緒に仕事ね、どうして俺なんかと」

「誰も組んでくれないのよ」

「どうして?」

「わからないわ、私はスワン、ジョブは神官なの」

(神官って神官服着るんじゃね)


「俺はレオン、剣士だ」

「へー、剣士ね。剣士なのに剣じゃなく斧持ってるんだ、変な人」

(神官なのに槍持ってる、お前に言われたくねぇ)


「あぁ、実家が農業やっていて木を伐り倒すのに使ってたやつなんだ」

「そうなのね、新人さんみたいね」

(あぁ、新人だ。それが何か悪いか)


「じゃあ、パーティー組んで、クエストのやり方を教えるわ」

(危険だ。危険な香りがする)

「じゃあ、クエストボードにいきましょ」


「どれがいいかしら」

「俺Fランクだから、EかFしかできないぞ」

「私もFだから大丈夫。これなんてどう?」

(あのですねスワンさん、聞いてました俺の話。これCランクですよ)


「これじゃないのがいいですね、これなんかどうですか?」

「ホーンラビットね。あなた意外と腰抜けなのね」

(いや、あんたが無謀過ぎるんですよ)


「いいわ、これをやりましょ」

(わかった。これだから、誰も組もうとしないんだ) 



 俺達は草原に出てホーンラビットを探した。


「たぶん、あっちの方にいるの。ゴブリンが」

(俺らホーンラビット探しているんですよね)


「いきましょ」

(ゴブリン倒しに行くのね)


 そして、(何故かゴブリンを倒しに)草原を歩く。

「一応、言っておくわ、私「ヒール」使えないから、怪我しないでね」

(教会で教わったよ、神官はヒール使えるって。)


ギャアギャア

ギャアギャア

ギャアギャア


 ツッコんでいたら、五体のゴブリンに囲まれた。


「じゃあ、あなたのお手並み拝見ね」

(戦わないのね、こいつヤベーな)


 俺はゴブリンの首めがけて斧振り切る。襲ってくるゴブリンをかわして、次々と首を飛ばす。


「あなた、凄いわね。じゃあ、討伐証明部位と魔石とりましょ」

 スワンさんに教わり、難なく集めることができた。


「あっちにコボルトがいるの」

(おいおい)


「いきましょ」

(帰ろう)


「ちょっと、どこ行くのよ」

「ホーンラビットを討伐するんですよね」

「そうよ、文句ある?」

(あります。目的がずれているのよ、あんた)


 結局、スワンさんは俺の後をついてきて、無事にホーンラビット倒した。


 ギルドに戻り。クエスト成功を報告。魔石も換金

「じゃあ、授業料として、私が七、あなたは三でいいわね」

(スワンさん、あなた何体倒しました? 全部俺ですよね)


「じゃあ、明日もって……、どこ行くのよ」

(もうこの人に関わるのは辞めよう)


 そして俺は、この世界の洗礼を受けることとなった。

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