第11話 食後のブリーフィング

 松本が会計を済ませるのを店前で待っているあいだ、こぶしは頭の中で子猫受入れセットのリストアップを始めた。

(ケージ、猫ちぐらかベッド、トイレ…は写真の子だとまだ使えないから、シートでいいかな。哺乳瓶とミルク、温度計、おしりふき、と)

 優先すべきは、飼育環境に関わるものだ。

(あー、どのみち固形フード食べるようになったらトイレも食器類も要るから、このさい用意したほうが良いかなー。あとコロコロ(粘着ロールクリーナー)!毛だらけの部長なんてイメージ崩れちゃうもんね)


 店の戸が開き、松本が姿を見せる。こぶしは勢いよくお辞儀し食事のお礼を述べ、子猫の受け入れについて話し始めた。

「部長、準備すべきものはだいたいリストアップできました。ただ、現物を見て判断したほうが良いので、病院の前にホームセンターへ行きましょう」

「もしかして、買い物に付き合ってくださるのですか?それは僥倖ですが、ご迷惑では」

「いえいえ、師匠の買い物を手伝うのは弟子の務めですので!」

 両手を前に突き出し、手のひらと顔を左右に振って松本の懸念を払おうとするしぐさが、こぶしのやや幼い容姿と相まって微笑ましい。

「それに私もフードとか猫砂とか補充しなきゃならないですし、お気になさらず!」

 右腕を胸前で左側へ回し、肘を曲げて力こぶをアピールするようなポーズを取りながら、バーターで勝ち得た蕎麦弟子の地位を早速アピールするこぶし。


「お言葉に、甘えさせていただきます。…正直助かりました。私では、商品名だけではどれが子猫に合っているのかまで分かりませんから」

「その辺は任せてください!ヤっk、…うちの子も、保護した時はまだ子猫でしたから」

 こぶしは腕時計に目をやって、時間を確認する。

「病院には8時に引き取りですよね?でしたら、6時半にアベルズに行って買い物すれば丁度いいですね」

 こぶしは大手ホームセンターの名前を上げ、予定を決めてゆく。松本はそんな様子のこぶしを微笑ましくも頼もしく思うのだった。


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