第60話黒髪の勇者視点2

 さて、そんな厄介事に巻き込まれてしまった私達だが、一応、命の保証はされた……と思う。

 魔法契約なので安心して欲しいと言われたが、些か不安だ。


 こちらの世界の常識は分からないし、戦い方も分からない。


 魔法と剣のファンタジー世界なだけに……。

 本当にアニメの世界だと思った。


 うちの国のアニメ世界に迷い込んだんじゃないだろうな?


 はぁ。

 思わずため息が漏れる。

 不安がないと言ったら嘘になる。

 しかし、どうすることもできないわけで。

 とりあえず、戦いの仕方を教わるしかない。



 ……

 …………魔法ってつかえたんだ。


 どうなっているのかは全く理解できないが、私達は魔法が使えた。

 手から炎が出たときは驚いたな。

 それともボーナス得点か!?と思わず叫びそうになった。

 身体能力が飛躍的に上がっている。

 ちょっとやそっとじゃない。

 どこのヒーローだというような力。


 これは異常だと感じた。

 重力とかの問題かもしれないが、体が軽く感じる。

 持久力が半端ない。

 

 う~~~ん。

 

 なるほど。

 勇者が召喚されるわけだ。


 ただ、問題は……。



「は?剣ですか?」


「申し訳ないが、私はこちらの世界の剣はどうも合わないようで」


「そうですか。他の方々は普通に使いこなしているのですが……」


 軍のお偉いさんが困った顔をする。

 まあ、そうだろうな。

 きっと、私以外の皆は使いこなせるだろう。

 だが、私は剣道をしていた身だ。いきなりフェンシングをしろと言われても無理がある。


「こういう剣はあるだろうか」


 私は描いた絵を見せてみる。

 なんの変哲もない日本刀の絵。


 片刃で反りがある。


 もしかするとこの世界では日本刀のような剣はないのかもしれない。

 それでも一応聞いてみないと。


「これは……」


「ありますか?」


「……本当にコレを扱えるのですか?」


「私の国では一般的な剣です」


「そうですか……」


「無理ですか?」


「……いえ。一応、ありますが……使用者は極端に少ないもので、殆どが美術品としての保管されています」


「美術品……」


 まあ、現代でも美術館で日本刀が展示されていたりするしな。

 こっちの世界でも似たような現象が起こっていてもおかしくない。


「魔王討伐の日までなんとか用意させます」


「お願いします」


「しかし、本当によろしいのですか?」


「はい。私は剣ならこちらの方が使いやすいので」


 軍人の皆さんは微妙な顔をしたが、とりあえず納得はしてくれたようだ。

 剣が来るまでは木剣を使って訓練した。

 この木剣もわざわざ作ってもらった代物だ。





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