第58話勇者召喚6

 召喚された勇者たち。

 年端もいかない少年少女……と思ってました。

 なのに蓋を開けたら、あらビックリ。本物の少年少女ではない。


 老齢ってなんですか?

 しかも既に死んだ身、って……どういうこと?



「つまりね、老齢で亡くなった異世界人が勇者として指名されたってわけ」


「死んでるのにですか?」


「うん」


「でも皆さん若かったですよ?」


「老人に魔王退治は無理だからね。召喚した異世界人達は基本若返るんだよ。まあ、どこまで若返るのかは未知数なんだけどね」


 たまたま召喚する時期に亡くなった人達。

 召喚される勇者の条件にあった人物が選ばれる。そう言う事らしい。


「それで、彼らは全員、魔王退治を引き受けてくれるの?」


「一応ね。というか、元の世界に戻る方法なんてないし。元々死人だからね」


「あぁ、そうでしたね」


 元の世界には戻れない。

 だからといって魔王退治を引き受けるかどうかは別だと思う。


「黒髪の勇者も説明には一定の理解を示してるけど、それでも魔王退治を余所の人間に任せるのはどうなのかって、最後まで渋ってたよ。正論過ぎて誰も反論できなかったのだ笑えるよ」


「それで結局どうなったんですか?」


「かなり交渉した。最終的に、魔王退治はするけど、各国の軍も出動させる事態になったよ」


「それはまた……」


「全く関係のない人間に世界を守ってもらうのってプライドは無いんですか?って言われちゃうとね」


「言ったんですか?」


「はっきりとは言わなかったけど、態度で解るよ。彼、ドン引きしてたしね。全部他人任せってことに憐れむような眼差しを向けられたらね」


「それは……ちょっと……」


「各国のお偉いさんたちは、まぁ、プライドはズタズタだっただろうね。でも、魔王退治はするって言質は取ったよ」


「……なるほど。それで改めて私に後見人になれと?」


「うん」


 ゴールド枢機卿が頷いた。


「大聖女の後ろ盾があれば、勇者達も魔王退治に本腰を入れてくれるだろうしね。それにフランならあの黒髪の勇者と馬が合いそうだし」


 なんの根拠があってゴールド枢機卿がそう言っているのかは不明だが、私に拒否権はなかった。

 それにしても傍観者でいてくれって話はどうなったの?

 まったく真逆の方向に進んでいるんだけど。

 勇者は神殿側の管轄だったんじゃないの?


「どうしてこうなった……」


 思わず口から洩れてしまったぼやきは、誰にも聞かれることは無く消えていった。




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