第30話友情1
「あら?」
「どうなさいました?
「
私は長年の友人に新聞のトップ面を見せた。
「まあ!本当!」
「王家の求心力は低下、それに伴って国際社会から非難の対象になっているわ。主に貴女のファン達の攻撃が凄まじいわね。まるで仇討ちだわ」
過激なファンというのは恐ろしいとつくづく思う。
レオは気にしていないようだけど、一歩間違えればアレはストーカーだわ。
「それにしても気づくのが遅いですね」
「それは誰に対してかしら?国?それとも貴女のファン達?」
「両方です。私のファンだというのならもっと早くに気付いても良かったものを」
ふくれっ面のレオは本当に自分の価値を解っていない。
「いいえ、違うわよレオ。彼等は薄々感づいていたはずよ。あの子が貴女の息子じゃないって事はね。なにしろ全く似ていないんだもの。それでも表立って攻撃対象にはしなかった。本人が何も知らない子供だという事もあったんでしょうね。なにより、その子供は『レオーナ・ランジェリオン公爵夫人の息子』という事に誇りをもっていた。だからこそ余計に許せなかったファンも中にはいたでしょうけど、彼等はあくまでも『疑問が残る』程度に押しとどめていたわ。それによる効果をよく理解していたんでしょう。結果、十五年に及ぶ仇討ち計画は図らずも成功してしまったわけね」
「私、生きてますけど」
「世間的には死んだ事になっているの」
「あのままでも私的には特に不自由なかったんですけどね。画材は好きなだけ購入してくれましたし、毎日が自由時間でしたから好きなだけ絵を描く事ができましたし、窓から見える風景は創作意欲を掻き立てられました」
どうやら、あの幽閉生活はレオにとって最高の環境だったみたい。
まぁ、レオの画家としての才能は兎も角として、貴族令嬢が画家になることを彼女の両親は認めていなかった。絵を一枚描くだけでも大変だったようで、嫁ぎ先で漸く好きなだけ絵を描けるという環境はそれだけで最高の環境だったのでしょう。第三者から見れば「幽閉された憐れな女性」なのだけど、本人的には「籠の中の鳥」ではなく「巣で自由を満喫している」という認識だったのだ。
「あのままでいれば、殺されていたのだから脱出して正解よ」
「……それもそうですね。まさかミリアリア様が名ばかりの妻を殺しにかかるとは思いもしませんでした。なんで殺そうとしたのか今でも不思議です」
しきりに首を捻るレオに苦笑するしかなかった。
レオは本当に分かっていないようだわ。
彼女がレオを殺そうとしたのは
彼女はずっと王弟の妻になりたかった。
愛する恋人と結ばれる事を夢見ていたんでしょう。
それは他の男と結婚し、侯爵夫人となった時でも変わらなかった。
国内情勢を鑑みて結婚を断念した王弟。彼の最大の過ちは元恋人以外の女性と結婚しようと考えて実行に移したこと。国が安定しようと、周囲から結婚を勧められても断ればよかった。そうすれば、彼女は凶行に出る事はなかったはず。
王弟の親友であり、彼女の亡き夫の侯爵の死には不審な点は見当たらなかった。
それでも疑問が残るものがあったのも確か。
本当に些細な疑問で、感じた人も奥歯に物が挟まったような違和感を覚える程度のものだった。
彼女が実行犯なのかそれとも依頼人なのかは分からない。
だた、夫を亡くしたことによって本当に欲しかった「
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