第14話商人の息子視点2
婚約者に初めて会った時は父親同士が友人だという事で紹介された。
男爵曰く「卒業後に顔のまったく知らない男性の元に嫁ぐのは不安だろう」とのこと。
なら、普通に婚約者として紹介しろと言いたかった。
こんな面倒な事をする必要はないからだ。
そんな俺の疑問に答えたのが男爵夫人。
俺の婚約者の母親で男爵の後妻。
「娘には私達夫婦のように愛し合った素晴らしい家庭を築いて欲しいの」
頭が湧いているのか?
そう思ったのは俺だけじゃない。
この男爵夫妻以外は全員思った筈だ。
特に嫡男の顔をみろ!
絶対零度の微笑みが恐ろしい。
因みに父さんは絶句して口を開けてアホ面を曝していた。有能な商人でもこのイカレタ夫婦には表面上だけでも取り繕えなかったようだ。
この時点で婚約をなかったことにすればよかったのだが、残念ながらそれはできなかった。
それというのも業務提携をしていたためだ。
うちとしては新規参入の絶好の機会。
これを逃す手はない。
「父さん、もしかして売られたのは俺の方か?」
そう聞いてしまったのは仕方ないことだ。
だってそうだろ?
事業提携の契約はうちの店が有利だ。いや、有利なんて話じゃない。うちにとってメリットしかない内容だった。これは新手の詐欺か、はたまた裏取引なのかと疑ったっておかしくない。
父さんの返答は―――
「結婚は多少の妥協が必要だ」
ふざけんなよ、クソ親父!! 何が「多少の妥協が必要」だよ! てめぇ!
俺はキレた。
そりゃあもう
ブチ切れたね。
店の拡大のために一人息子を男爵家の生贄にしたと言っているのも同じだ。
ふざけんじゃねぇーー!!
盛大に切れ散らかした俺だが男って言うのは美人に弱いどうしようもない生き物だと痛感させられた。
何故なら、彼らが絶賛するだけあって婚約者は大変な美少女だったからだ。
男爵家の娘といっても所詮は元愛人の娘。あの男爵夫人を見た後だったから美人は美人だろうが、そこまで期待していなかったのだ。
なのに実物を見てみれば超が付くほどの美少女。
しかも豊満な胸に細い腰回り。そして形の良いお尻ときている。
初めて会った時にあまりの可愛さに思わず見惚れてしまった程である。
言っておくが俺は断じてロリコンじゃない。彼女が可愛らし過ぎるのがいけないと思う。少女と大人の間の魅力っていうのか?そういう妙な色気まであった。
これが世にいう一目惚れという奴だろうか? 確かに外見は文句なしに良い女だと思う。
家族以外の男とはあまり交流がないようで、初めはおずおずとした受け答えしかしてこなかった。
市井で暮らしていたわりには世間なれしていなかった。
彼女は俺という存在に慣れてくると段々と饒舌になっていった。
そこで分かった事がある。
確かに、彼女とその母親は平民だ。市井で暮らしていた事も間違いなかった。
ただし男爵領内でそこそこ小綺麗な館で使用人付きで暮らしていたらしい。
つまり、貴族待遇だったという訳だ。
どうりで擦れてない筈だと妙に納得した。
正直なところエバは精神年齢が幼い。
夢見がちなところが目立つし、話す内容も貧相だ。
これでは商人の妻の役割は期待できないと思った。相手を楽しませる会話術ができない。なら婦人会などのサロンに出入りしてもらい上流階級の顧客獲得ができるかというと難しいだろう。知的な会話自体ができないのだから。
それでも俺はこの結婚には前向きだった。
何もできないエバだがそれを補ってあまりある可愛らしさだ。一緒にいると癒された。
エバとなら幸せな家庭を築くことができるのではないか。そう思ったのだ。
しかし、その淡い期待は打ち砕かれた。
彼女がよりにもよって王太子殿下と一部の貴族子弟を誑かしたからだ。
俺との結婚は当然ご破算。
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