第3話国王視点1

「なるほど。そこにいる娘が、フランソワーズに危害を与えられたと。クロード、お前は本気で言っているのか?」


「勿論です!」


 息子の言葉に溜息しかでない。


「そこの娘、王太子はこう申しておるが、それは事実か?もし虚偽の申告をするならばそれは王族を謀ったとみなされ厳罰に処される事となる。どうだ?」


「はい!もちろんですっ!クロード様の仰った通りです!あたしは何度もフランソワーズ様に虐められてきました!あたしを罵倒したり物を壊された事だって数えきれないくらいあります!!それだけじゃありません!あたしは学校で女子達から無視されてるんです!きっとフランソワーズ様に何か言われてるに決まってます!!」


「それは何時からだ?」


「入学して一ヶ月後から始まりました!」


「間違いは無いか?」


「間違いありません!!」


 男爵家の庶子は大きく頷く。

 よくもまぁ、そこまで堂々と言い切れるものだ。


「そうか、そなたたちの言い分はよく分かった」


「「では!」」


「そこで、聞くが。フランソワーズは学園に入学して直ぐに病で休学している。既に半年が経つが一向に回復する兆しがなかった。そなたたちが一週間前に学園祭で愚かな発言をしているその時間に息を引き取ったそうだ。そもそも公爵領にいるフランソワーズがどうやって危害を加えられるのか教えて欲しいものだ」


「「はっ……?」」


 息子とその浮気相手は私の言った意味が理解できないようだ。表情に出ている。何を言われたという顔だ。元庶民の男爵家の娘は兎も角、何故、王太子のクロードまでそのようなのだ。ポーカーフェイスは王族の必須だろうに。

 


「え?父上?フランソワーズが……え?し、死んだ?」


「そうだ」


「え?え?」


 肯定しても未だに理解できていない息子を冷ややかに見てしまうのは仕方ないことだろう。どうしてこうも察しが悪いのか。いや、その前に何故お前が知らないのだ。


「嘘です!!」


 悲鳴に近い声を上げたのは浮気相手だ。


「あたしは間違いなくフランソワーズ様に虐められたんです!!」


 そう言い切ると男爵家の庶子はポロポロと涙を流し始める。

 器用な事だ。

 ウソ泣きだと分かっていてもその儚げな容貌は庇護欲をそそるものがあった。

 現に、クロードは男爵家の庶子を慰めている。


 まさかこんな女に引っ掛かるとはな。


 ハニートラップの訓練は受けていた筈だ。

 なのにこのザマとは。

 今までの実地訓練は何だったのだ?

 それともアレか?

 訓練と本番は違うとでも?


 わからん。


 

 パチパチパチ。

 繰り広げられる茶番劇を終わらせたのはリズミカルな拍手だった。



「三文芝居もその辺で終わりにいたしましょう。クロード殿下」


 底冷えする声に嫌がおうにも背筋が伸びてしまう。


「モンティーヌ公爵……」


「国王陛下、大変素晴らしい喜劇を見せていただきありがとうございます」


「モンティーヌ公爵。私は喜劇を見せた覚えはないぞ?」


「おや?これは喜劇ではないと。ならば悲劇でしょうか?ふふっ。誰にとっての悲劇でしょうね。半年間の療養のかいもなく亡くなった娘でしょうか?それとも学園に居ない筈の娘に罪アリと公言した間抜けな王太子殿下か、冤罪を着せようとした令嬢が既にいないことにも気付かず終焉を迎える男爵家の庶子か。真偽のほどを確かめようとはせずに女の色香に走った学生達も多く居ましたね。愚かな事だ」


 その愚か者の中には親達も含まれているのだろう。

 公爵の隣にいる姉上の絶対零度の微笑みが恐ろしい。この場に王妃を連れて来なくて正解だった。


 


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