第51話 謎の因縁
振り返ると、そこにはクリーム色の長髪が特徴的な少女――蒼井雫が立っていた。
俺の脳裏に、彼女との思い出がよぎる。
彼女と初めて会ったのは、俺が探索者になった二日目のこと。
初級ダンジョンのボスに挑戦する際、たまたまタイミングが被ったこともあり、パーティーを組んだのが親しくなったきっかけだった。
普段は二人の仲間と共に行動しているはずだが、今日は一人のようだ。
「雫か、久しぶりだな」
「はい、蓮夜さん」
簡単に挨拶を交わした直後、俺は彼女が持っているものに気が付いた。
「ん? その杖、もしかして……」
雫の手に握られているのは氷でできた杖。
俺はそれに見覚えがあった。
エクトールダンジョンの隠しエリア【氷風の雪原】のダンジョンボス、凍結竜を討伐した時に獲得できる報酬の一つだ。
俺も過去に討伐したことがあるが、その際は杖ではなく【魔力凍結】の魔導書を選択した。
だが、雫がそれを持っているということはつまり……
「雫たちだけで凍結竜を倒したのか?」
すると、雫は嬉しそうに頷いた。
「はい! 蓮夜さんに教えていただいた技術のおかげもあって、つい昨日、ようやくあのエリアを攻略できたんです!」
「……ほう、やるな」
その後、雫は詳細を教えてくれた。
なんでも、俺の教えをもとにあのエリアを探索することで急激にレベルが上昇。
特に彼女が新たに獲得した火魔術適性が【氷風の雪原】の魔物と相性がよかったこともあり、凍結竜を討伐。
その後、残された剣と杖のうち、杖を報酬として選択したんだとか。
以前の修行終了時、彼女のパーティーは全員40レベル未満だったにもかかわらず、この短期間でレベル60の凍結竜を討伐するとは大したものだ。
俺が感心して「うんうん」と頷いていた直後だった。
「ところで見ましたよ、蓮夜さんの動画」
突然、雫が身震いした。
「動画って……琴美とのコラボ配信のことだよな」
「はい、そうです。最初はトレンドに乗っていたから何となく配信を見たら蓮夜さんがいたのですごく驚いて。それだけでも十分衝撃的だったんですが、ことみんさんに色々と実践指導をしていたじゃないですか。アレを見て、私が教えていただいた時のことを思い出してしまったといいますか……」
「ふむ」
そう。何を隠そう、琴美に行ったのと同じような指導を、以前にも雫にしたことがあった。
その甲斐もあり凍結竜を倒せたことを考えれば、きっとこの彼女の震えは感動によるものなのだろう。
これだけ喜んでくれたのなら教えた甲斐がある。
俺は満足げに頷いた。
「そうだな。せっかくだし雫たちにも、より実践的な指導をしてや――」
俺が最後まで言い切ることはなかった。
突如としてドンッ! という爆音がギルドいっぱいに響き渡ったからだ。
それだけじゃない。
「――お前が、神蔵蓮夜か!」
「……ん?」
突然の叫びに、俺は反射的に振り返る。
するとそこには槍を背負い、整った顔立ちをした金髪の男がいた。
ソイツを一目見た俺はというと、
(誰アイツ、知らんこわ……)
そんな感想を抱くのだった。
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