就活失敗したヒキニート、幼馴染JKの尻に敷かれる。

石油王

プロローグ

五年前まで私には仲の良い年下の幼馴染がいた。

もう彼是十年以上の付き合い。家族ぐるみで仲が良く、頻繫にお互いの家を行き来していた。

彼女は基本的に無口で感情表現が不器用な子。だから学校には友達が居らず、遊び相手はいつも私しかいない。私に暇さえあればいつでも遊べる状況だった。

しかし——、


「親友が欲しい……」


ある日の放課後。私の自室にて。

ポツリと口を衝いて出た彼女の一言。初めて自分の欲を出した瞬間だった。


「親友が欲しいってなに?」


激しく動揺した私は思わず変な質問をしてしまう。

幼馴染は顔色一つ変えず言葉を続ける。


「一人がさびしい。一人がこわい……。だから欲しい」


彼女の本音はあまりに弱々しく、儚かった。

淡泊な声音が少し震え、光の無い瞳を揺らす。


「なにそれ……」


私は親友としてカウントされてないの?

あの時の私はまだまだ余裕がなく、大人じゃなかった。

本音を聞いた直後。私の心はモヤッとして、イラッとした。


「親友の前にまず、友達でしょ?」


優しい言葉なんて掛けてあげられない。

感情的に心にもない言葉を吐き、彼女の地雷を踏み抜く。


「友達作らないと親友なんてできっこない」


ダメだと分かっているのに。こんな事言いたくないのに。

理性をコントロールできず、元も子もない発言をかます。

幼馴染はカッと目を見開き、私の顔を睨んできた。


「姉貴、大嫌い」


腕を小突かれ、後ろへ倒れる。

そして私に背を向け、部屋から飛び出していった。

去り際に見せたあの顔はいつもの彼女じゃない。

目尻に涙を溜め、感情を押し殺すように唇を噛み締めていた。


「ゴ、ゴメン……」


自分の過ちに気付き、後を追いかけたがもう遅い。

玄関には既に彼女の姿はなく、その場で項垂れる。


あれからその幼馴染とは会っていない。

合わせる顔がないと距離を取ってしまった。

後悔はない。これでいいんだと自分に言い聞かせ、この時の記憶を都合よく抹消した。

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