第21話 番外編 アマーリエの恋 会いたくなかった

 いよいよ今日から学園だ。


「アマーリエ様! おはようございます」


「アマーリエ様、またお会いできて嬉しいですわ」


 去年短期留学した時に仲良くなった人達が声をかけてくれた。


 前は3ヶ月だけだったが今回は1年の予定だ。本当はもう少し長い期間いたいのだが、王女という身分なのでそんなに長い間城を空けるわけにはいかない。

 1年間も頑張って勝ち取ったのだ。それにまだベルメール王国の貴族学園にも籍はある。貴族の横の繋がりだけのために在籍しているつまらない学園だが仕方ない。一年下には弟のエーベルハルトや仲の良いシルフィアやデルフィーヌも在籍している。


 来年は最終学年だから、自国の貴族学園に戻り卒園しろと国王である父に言われている。


 初日からがっつり授業だった。


 この国の魔法学園は魔法に特化した学園で年齢は決まっていないが13歳になれば入学することができる。上は何歳でもいいらしい。しかも勉強のために何年在籍してもいいらしい。


 稀にロルフのように13歳以前でも飛び級で入学してきてあっという間に卒業する強者もいるそうだ。


 そして、私のように外国から留学してくる者も多いようだ。



「ベルメール嬢はこの学園でどんな魔法が学びたいのだ?」


 3ヶ月間の基礎課程を受け持ってくれる担任のヘルツ先生に個別面談で聞かれた。

 この学園では個人のやりたいことをできるだけやらせてくれる。今日はそれぞれの希望を聞いてくれる個人面談もあった。


「私は転移魔法、身体増強魔法、あと必要な魔法はなんでも学びたいです」


「そうか、去年、短期留学した時は鑑定の魔法を取得したと聞いた。あれを短期間で取得した君なら1年あれば色々取得できるだろう」


「ありがとうございます。それとは別に、私は国に戻ったら周りの者に魔法を教えることもしたいと思っています」


「なるほど、それなら教職課程も受けるといい。3ヶ月学べば教職課程を受ける資格試験が受けられる。それに受かれば半年間の教職課程が受けられる。1年後、国に戻ってから魔法使いを養成できるぞ」


 ヘルツ先生はくくくと笑う。


 魔法使いを養成というところが先生にはツボらしい。国が違うと笑いのツボも違うようで難しい。とりあえず嘘笑いをしておいた。


 先生との面談を終え、学園の中庭のガゼボで友人達とお茶を飲んでいた。

 皆それぞれ希望に燃えていて、やりたいことを語り合っていた。ちょうど昼時ということもあり、中庭は学生達で賑わっていた。


「アマーリエではないか?」


 後ろから頭越しに声がした。


「いかにもアマーリエ・ベルメールでございますが……」


 その声のする方に振り返るとそこには懐かしい顔があった。

 私が一瞬固まり躊躇していると、その人は残念そうな顔をした。


「どうやら忘れられてしまったようだな。アルフォンスだ」


 アルフォンス。忘れるわけない。忘れたいけど忘れられない人。私は平静を装った。


「あ、アル? アルなの? 髪型がかわっていたから一瞬わからなかったわ」


 嘘だ。すぐにわかった。


「そうか。久しぶり」


 アルフォンスは私の頭に手を置いた。


 アルフォンスはフリューゲル王国と並ぶもうひとつの魔法大国、ヨードル王国の王子だ。

私達は一昨年、ヒルシュ王国に留学していた時に出会った。留学生同士で共に王族ということもあり、すぐに仲良くなった。


 しかし、自国も魔法大国なのになんでここにいるのだろう?


「魔法なら自国でも学べるのになぜここに?」


 私は不思議に思いアルフォンスに聞いてみた。


「この国のマインラート殿と交換留学中なんだ。魔法の国同士の友好の為にね」


 マインラート殿? あぁ、王太子殿下。そういえば王宮にいなかったな。


「なら、アルも王宮にいるの?」


「いや、私は伯母がこの国の王弟のトレンメル公爵家に嫁いでいるので、そちらに滞在させてもらっている」


 同じ場所で宿泊していないと聞きほっとした。


「そうなの、私は1年いる予定なの。アルは?」


「私も同じだ。また一緒に過ごせるなんて驚いたな」


「ほんとにそうね。またよろしくね」


 私は心の中を悟られないように王女らしく微笑む。


 会いたいけど会いたくない人とこんなところでまた会ってしまうなんて。これではフリューゲル王国に留学した意味がない。それならヨードル王国にすれば良かった。


 魔法を学ぶならどちらでも同じだ。ヒルシュ王国でアルフォンスと出会い、我が国の魔法がいかに残念かを知った。


 我が国は魔法が使える国なのに、簡単な生活魔法くらいしか使っていない。ヨードル人のようにもっと魔法を使いたい。ヨードルに留学して魔法を勉強したい。しかし、ヨードルに行けばアルフォンスに会ってしまう。そしてアルフォンスの婚約者にも会ってしまう。それは嫌だ。

 だから同じような魔法大国のフリューゲルを選んだ。去年、お試しで短期で留学し、友達もたくさんできた。ロルフと出会い、魔法の世界を色々見せてもらい、楽しかった。だから今年から1年間留学することにしたのに、まさかアルフォンスがいるなんて。


 私はどんよりした気持ちになってしまった。



*お待たせしました。やっと本命の登場です。あと5話くらいで終わる予定です。よろしくお願いします。

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