第12話 バレる(途中からちょっとだけザラ視点)
あら、いいところにいるじゃない。
私はザラ嬢とアマーリエ様の後ろから様子を伺っているエミール様に気がついた。
エミール様に目でザラ嬢を捕まえろと言ってみた。伝わっているかしら?
エミール様はそっと近づいてきた。あと少し。
ガタン
馬鹿~。気づかれちゃうじゃないの。
音に気づいてザラ嬢が振り返る。
「ザラ嬢、助けに来たよ。一緒に逃げよう」
「ありがとう。でもあんたなんかと一緒は嫌だわ」
自白剤はそんなことも言っちゃうのね。
「私も一緒は勘弁してほしいな」
エミール様は素早く走り寄り、ザラ嬢を羽交締めにした。
「やめてよ! 気持ち悪い。あたしに触らないで! 助けて! 誰が助けて!」
ザラ嬢は足をバタバタさせている。エミール様は地味に蹴られているなぁ。しかも気持ち悪いって……。
「みんな、そろそろ出てきて」
アマーリエ様の声に護衛騎士達が姿を現した。
「エミール卿、ありがとう。あとは騎士に任せなさい」
「承知しました。お怪我は?」
「あるわけないじゃない。私を誰だと思ってるの?」
アマーリエ様はそう言っているけど、ザラ嬢に握られていた手首が痛そうだな。
騎士達はザラ嬢と殿下を連れて行った。
そのあとザラ嬢の自白どおり、屋敷を調べるとベッドの下から魅了の魔法の本が見つかった。
「どうしてよ! あたしは金持ちになりたかっただけなの! 贅沢したかっただけなのよ! 騙された方が悪いのよ!」
取調官にも魅了の魔法を使って懐柔させようてしているらしいが、取調官は無効化の魔道具を身につけ、耐性がつく薬を飲んでいるので全く魔法にかからない。
「なんでよ! なんで効かないの、あの女のせいね! あんな女、不幸になればいいのよ!」
あの女ってアマーリエ様? それとも私?
とりあえずザラ嬢は捕まり、尋問を、受けている。自白剤がよく効いているようでサクサク話しているらしい。
私はあれから毎日リハビリに通っている。
エミール様は、魅了のせいで婚約破棄した令嬢達のフォローに回っている。次の婚約者を見つけたり、仕事を探したり。自分だけ幸せになって申し訳ないと言っているそうだが、どこが幸せになっているのだろうか?
エーベルハルト殿下と、縄で巻かれて転がっていたパトリック様、アーノルド様は入院して、後遺症の治療をしているが、深くかかり過ぎていたので苦しんでいるそうだ。
そしてステファン様は行方不明のままだ。
何もなければいいのだけれど?
ーザラー
悔しいわ。このままだと死刑よね。
なんとかここから逃げたいけど、もうみんな魅了の魔法に引っかからないのよね。
それにしてもあたしなんでペラペラ喋っちゃうんだろう。
そうだわ。あのお茶会で殿下は毒みたいなのを盛られて苦しんでいたじゃない。きっとあたしのお茶にも何か入っていたのよ。
ペラペラ喋る薬なんてあるのかしら? もしくはペラペラ喋る魔法かしらね。
あの王女ならなんでもやりそうだわ。
あんな怖い顔で高飛車で、ザ・貴族みたいな女、嫌だ嫌だ。死ねばいいのよ。
「ザラ、逃げよう」
誰よ、逃げようだなんて?
「私だよ。ステファンだ」
あら、ステファン来てくれたの?
エミールは嫌だけどステファンならいいわね。やっぱりビジュアルは大切よ。
ステファンはなかなか魔法にかからなかったけど、かかったら抜けにくいのかしら?
ステファンなら美形だし、助けてもらって、次の高位貴族の獲物が見つかるまで一緒に逃げてもらうのもいいわね。
交わって、どっぷり私の魔法にかけちゃえば言いなりだし。
ガチャリ
「ステファン、鍵持ってたの?」
「ちょっと借りたんだ」
騎士達は眠っているようだ。やっつけたのかしら? カッコいいわ。
「早く行こう」
ステファンが私の手を引いてくれる。あら嫌だ、王子様みたいじゃない。
「ザラ、馬で逃げるよ。私に捕まっていてね」
「はい」
馬の2人乗りなんてロマンチックだわ。
もう王子様みたい。
本物の王子より、ステファンの方が素敵だわ。
どこに連れて行ってくれるのかしら。
楽しみだわ。
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