今日もまた生きてることを感謝して 寿ぎましょう 明日が欲しいから


暗闇の中で目が覚める

東の空は乾いた血の色


波打つ手首に指を這わせる

脈打つ音に今日の生を知る


昨日を終えるのは簡単なのに

今日の始まりはひどく困難で

いきたいと思うこの浅ましさが

かさぶたを破り赤く流れ出す

朝陽に染められた東雲のように


見えない傷痕がじくじくと痛む

絆創膏で隠しても無駄で

いい加減慣れてしまえばいいのに

忘れたと油断してまた思い出す


丸まったままで布団に閉じこもり

嘘で塗り固めた夜に籠もっても

「明けない夜はない」んだって

無理やりにでも朝はやってくる


このまま目覚めることがなければ

そう願うことは星の数ほど

照らす光を信じてないのに

星の光に祈るなんて

矛盾してると分かってるけど


終えた先に待つ暗闇と

朝の向こうに待つ暗闇と

どちらか一つを選ぶしかなくて

今日も仕方なく朝陽を迎える




くすんだ青い空を見上げる

全天は今日も色濃く濁る


澱んだ空気にいき苦しくなる

息をする度に吐き出したくなる


今日を終えるのは簡単なようで

明日を迎えるには恐ろしく遠い

消えないだけのこの浅ましさが

吐き出した息を白く染める

凍てついた冬の暁のように


癒えない傷痕がずきずきと響く

痛み止め飲んで誤魔化せなくて

いい加減諦めてしまっているのに

痛みは容赦なく胸を突き刺す




どうして今を繰り返すんだろう

「明日なんて」と投げ捨てたいはずなのに

手放そうとしてこの手を見る度

苛立つ程に浮かんでくるんだ


このまま自分が欠けたとしても

世界はきっと変わらず回ってく

そこには何も残ってなくて

それでもいいと思ってるのに

完全な無の訪れが怖くて


終えた先に待つ暗闇と

夜の向こうで待つ明日の日と

どちらか一つを選ぶしかなくて

祈るようにして夜を迎える

このままずっとあしたはきっと目覚めませんようにいい日であるように


波打つ手首に指を這わせる

脈打つ音に今日も生を知る


今日で終えるのは簡単なのに

明日の幸せを望みはしないのに

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