朝焼けに 染まる雲の上 きみ一つ 上がって 真白な目玉焼きかな

風に触れると

毛羽立つような冷たさの日々が訪れて

目覚めてもまだ

辺りはほんのりと夜の海に沈んでいて

地平線の向こうに浮かぶ

雲が作る稜線の隙間から

赤紫色したとんがった朝の髪の毛が

ほんの少しのぞいて見えた


まだ眠りについてるきみを横目に

白い楕円の珠を二つ

冷蔵庫の中から取り出す


幾重に重なる夜の帳が

一枚一枚めくれてゆく中で

ちちちと鳥のような鳴き声をたてて

青くて赤い花びらが咲く


青白く揺れる光が部屋に広がると

濃くて大きな一つの影が

私の背後に立ち上った


こんこんと準備を伺う音を立てて

小さく白い珠を割る


黒いまんまるな花びらに

青くて赤いガクが広がって

その真中にはマーガレットの花のような

黄色い筒状花が咲く


こちらへようこそと喜ぶように

鉄の色したまんまる花びらが

歓迎の声を上げて迎えると

外に広がる暗闇からも

おめでとうという光が届いた


雲の稜線に挟まれるようにして

ほんの少しだけ顔を出す朝日は

オレンジのようなみかん色をして

ちょっとだけ卵の黄身にも見えた


あとほんの少し時間が立てば

鉄の花の上の黄色い花びらも

稜線に浮かぶ小さなみかんも

きっとまっ白な目玉焼きになって

美味しく出来上がっているんでしょうね


その頃には夢の世界のきみも

真っ白な色に着飾らないとね

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