第十八話 女神エリアスの神託
教会内にある病室で休養を言い渡された俺は、ネムと戯れたり外の様子をスライム越しに眺めながら、ベッドでゴロゴロしていた。
……なんか、言うて普段と変わらんな。
まあ、そんな事はさて置きどうやら外ではキルの葉を喰らって、完全にキマっちゃってる魔物たちが大勢、攻め込んできているらしい。
ただ、レイン殿下の言ってた通り、割と何とかなっていた為、俺がスライムを使って手を貸すまでも無かった。
ノワールの件もあって、戦力が要所要所に集まっていたのが大きかったのかな?
国外の事まではまだ分からないが……まあ、大丈夫だろう。
「はぁ~……んむ?」
ごろ~りと子供らしくしていたら、なんか急にドアの外が騒がしくなったな。
何かあったのだろうか?
そう思った俺は、その付近にいるスライムの方に視覚を移して、何が起きたのか確認してみる事にした。
すると、そこでは――
「エリアス様からの神託だ!」
「ああ、私も聞いた。急ぎ、知らせねば!」
「ああ、エリアス様のお声……! あぁ……!」
「おい! ……ちっ 逝ったか」
この教会にいる女神エリアス教の信者たちが、神託が来たとか何とかで、大騒ぎしていた。
なんか一部、明らかにヤバそうな人も混じっていたが……て、そうじゃ無くて!
「全員神託を……? はっ まさか――」
もしやと思った俺は、他の街にある教会も確認した。
すると案の定そこでも、女神エリアスから神託が来たとかで大騒ぎしているのが見て取れる。
「こんな事、普通はあり得ない」
女神エリアスの神託を聞く事が出来るのは、基本教皇で稀に枢機卿、そして超極々稀にその他一般人という内訳だ。
ふと、ここで昨日女神エリアスから聞いた言葉が蘇って来る。
「『世界規模の事柄へは”世界秩序の崩壊”の未来が確定するまで説明できません』……か。多分、その関係だろうな」
あの時わざわざそう言ったって事は、つまりはそう言う事なのだろう。
今――神が、”世界秩序の崩壊”の未来が確定したと判断した。
そして、その確定した未来を女神エリアスは神託によって、人間たちに決められた道筋とは違った動き方をさせ、その未来を回避する。
こんな感じだろうか。
「……狂喜乱舞してる奴が多すぎて分かりづらいが、確かにそんな感じの事言ってるな……」
大勢の教会に居る信者に神託という異常事態が起こっても尚、冷静でいられる有能な信者の言動を観察したことで、出てきた仮説を確定させる事が出来た俺は、直ぐにシュレインの森に居るスライムへと視覚を移した。
そして、絶句する。
「……なんだ、これは――」
なんとそこには、シュレインの森の一部を削り取るように形成された、巨大なすり鉢状のクレーターがあった。
更にその中心からは、巨大な闇の天柱が、遥か上空まで伸びているのが見える。
「おいおい。マジで何が起こるんだよ……」
”祭壇”の術式の解析結果を既に知っているのにも関わらず、俺は気づけばそんな言葉を漏らしているのであった。
◇ ◇ ◇
レイン・フォン・フェリシール・グラシア視点
「レイン殿下! 女神エリアスから神託が下ったと、王都教会から連絡が来ました!」
「レイン殿下! 今しがたシュレイン教会からも神託が来たとのご連絡が!」
一体、何があったと言うのだろうか。
ほんの少し前から、一斉に届く女神エリアス様からの神託通知。
この様子からして、恐らく王国全ての教会――いや、世界全ての教会に神託が下されている事だろう。
「落ち着け! 一先ずグロリア枢機卿! 早急に神託の内容を纏めて欲しい!」
「承知しました。……皆、女神エリアス様からのお言葉を、順番に私に報告せよ!
私は一先ず、王都教会に居り、今しがた報告に駆けつけてくれたグロリア枢機卿に神託関係を丸投げすると、ファルスに声を掛ける。
「ファルス。王都の様子を上空から確認して欲しい」
「分かりました。殿下」
そして、その間に私は何か王都で異常が起きていないかをファルスに確認してくるよう命令する。
すると、早くも内容を纏めてくれたグロリア枢機卿が口を開いた。
「レイン殿下。どうやら女神エリアス様が各教会にお伝えしてくださったお言葉は、全て同じようです。では、お話いたします」
「ああ、頼む。簡潔に」
全て同じであった事に安堵しつつ、私は神託の内容を言うよう促す。
「はい。まず、どうやらこの世界は、嘗て激動の時代を生きた漆黒の魔法師ノワールによって支配されようとしている。この世界全ての人間に
息継ぎ無しで繰り出される神託の内容。
それは、大方私の予想通りであった。
ならば、やる事は決まっている。
「報告感謝する。では、至急動こう。そちら側も、早急に神殿騎士を集めて欲しい」
「当然です。敬愛する女神エリアス様からの神託――この命に代えてでも、成し遂げましょう」
そう言って、グロリア枢機卿は去って行った。
「よし。国王陛下へ緊急軍議の要請を出しに行こう。ファルス」
「分かりました、殿下」
そして私も至急、父上――国王陛下の下へ急ぐのであった。
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