これが日常である(蓮佳編)
ほんの『一部』の日常である。_朝
「………ん。あ、ウェ〜……?」
と蓮佳はヨダレを垂らしながら何故かソファで寝ていた。そして、片目を擦っていた。すると、
「ん?」
蓮佳の腰の辺りに今の身体では包められないカーキ色の毛布が掛けられていた。
「まさか………ぐぅ、頭がぁ」
と言い、蓮佳は速攻にキッチンに向かい、冷蔵庫を開けて麦茶を取り出した。垂れた麦茶を手で拭いては
「やべぇ……こりゃ、飲みすぎた…」
実は蓮佳は昨日、出張で帰ってきたので帰ってきたテンションが高かったのか久しぶりに居酒屋に行って結構な量の酒を飲んできたのであった。
「受李の忠告聞きとけば良かった……」
後悔の念を出ている蓮佳だが、すると
「その様子だと二日酔いだね」
向こうの扉から聞き覚えある声が降りてきた。蓮佳の雇い主兼相棒の愛川 受李である。受李がスマホでゲームをしてながら扉を開けてきたのだった。服はすでにパジャマではなく制服に変わっている。
「だから、言ったのに……。ま、自業自得だけど」
「うっせ、少しぐらいはハメ外してもいいだろ」
「そのハメ外しが油断大敵なのに……それにちゃんと風呂ぐらい入れ」
「ま、いいだろ別に」
「臭いのは女の敵だ」
受李はばたんと猫のように寝転んだ。
「へいへい……。それより、朝ごはんはどうする?適当なのを作ろうか」
「いいよ、菓子パンで」
と受李はゲームをやめてた途端にキッチンの棚からカレーパンを開けてはパクッと食べた。そして、玄関に用意してたカバンを持ちながらゲームを再開する。蓮佳は追いかけるように玄関に向かうと受李はもうすでに靴を履いていた
「今日何かあったけ?」
「今日は何も無い。普通に授業を受ける」
「そっか」
「じゃ、行ってくる」
と受李は振り返ってこう言った。
「……ちゃんと風呂は入るように」
そう言い顔をニヤケながら学校へと向かった。
「何なんだよ、ニヤケてよー」
と蓮佳は脱衣所へと向かう。するとそして、洗面所の鏡を見てすぐに分かった。蓮佳の顔には「バカ」「アホ」と猫の毛のようななどの落書きが書かれてた、しかも油性で
「……」
当然ながら蓮佳は絶句をした。そして、犯人は受李だと察し蓮佳はこう思った。あとで仕返しようと。
「ほい、これがあの矢凪のやつの資料だ」
「あ、ありがとうございます」
佐藤はすぐに矢凪の資料を見渡す。それは矢凪の履歴書である。年齢に学歴・遍歴、さらにはとってある資格も書かれてある。
「やっぱり……本名は書いてないんですね」
「しっかし、なんで矢凪を見ようと思ってるんだよ」
と言ってきたのは先輩刑事こと
「いや、通ってた警察学校のとこで少し異世界人の勉強をしたのですが……みんな本名はあんまり出さないそうで……それにあの事も」
「へぇ……、それは知らんわ……」
「なので、履歴書には書いてないかな……て思っていまして」
「そりゃ書かんだろ」
「ですよね……」
他には何かあるかな……と考えている佐藤をよそ目に海城は赤色にピカピカ輝く文字
「ここも随分、変わったな。本郷」
日本のどこかしらにある本郷町。異世界人が来る前は真面目かつ静かな町という印象だったが、異世界人が来た途端に明るく、派手な街並みに変わった。
「うーん、直接 本人に聞いた方がいいか…でも彼女、困惑しそうだし」
と佐藤がうーん、うーん、と唸っている。すると海城がある事を思いついた。
「もう、本人に聞くしかねぇだろ」
「え、でも、どこにいるかも分かりませんし…」
「場所は分かる。とにかく話さねぇと分かんねぇだろ」
「た、確かに……」
「ほら、行くぞ」
「あ、はい……」
と佐藤は海城のこれから行くところに向かった。
「ここだ」
「
と向かったのは人通りが少なくもはや穴場のスポット特集にでも出てきそうなレンガ造りの中世ヨーロッパ風のカフェだった。現在 成長中のつたに隙間から出てきたコケ。まるで小説にでも出てきそうなカフェでもあるのだ。玄関に吊るされてる看板は【OPEN】と書かれている。
「午前九時、今は九時でぴったし………まさか……ここで働いているんですか」
「ああ、ここでこいつに知り合っていてね。しかも、ここの店長だ」
「マジすか」
「そんじゃ、入るぞ」
と海城は煙草を咥えながら、ドアを開ける。ドアはカランカランとベルを鳴り、店内を案内してくれている。
「はーい」
濃い茶色のカーテンから黒色のエプロン姿の深緑髪の女性がこちらを見てきた。
「あ……矢凪さん……」
「あれ、海城。それに……佐藤さん……だっけ?」
「あ、はい……」
「さぁさぁ、どうぞ、どうぞ、座って」
と蓮佳が奥に入ってしまった。佐藤は辺りを見ると仲良くトークをしている。爺と婆の姿がばかり見かける。老人の人気のカフェかな……と佐藤は思いながら座ると蓮佳が円筒のロックグラスを二つ用意してきた。
「どうした?サボりか」
「ああ、そんなとこだ……ついでの用事もな」
「おお、さすが常習犯。華麗にサボりますな…」
と蓮佳はニヤケながら海城、佐藤のところに水が入っているグラスを置いていった。
「んで、用事ってなんだ?」
「佐藤がお前のことを知りたいらしくってさ。今日はそれを解決に」
「へー、こいつが…」
と蓮佳がまじまじと佐藤を見つめる。すると海城がこう言った。
「ほら、俺が話の場を設けたんだ。有難く思え」
「え、ちょっと、先輩!?」
「うわ〜、上から目線。佐藤君、こいつを上司にするのはやめた方がいい。絶対、パワハラを受けるよ」
「先輩はそんなことをしませんよ!?」
佐藤はつっこむ。とこんなことをしてる場合ではないと佐藤は咳払いをした。
「え、えっと……ごほん、それじゃ、まずス…」
「スリーサイズはお断りだぞ」
と蓮佳が凄く冷酷な目で見下ろした。それを見た佐藤は即座に俯き
「ハッハッハー!冗談です。そんなことありません」
とすでに涙目になって気になっていたことを話した。
「あぁ………それは言えない質問だね。プライバシーの問題になるし」
「そうですか……」
とまぁ、当たり前かのように蓮佳は本名のことを断った。
「じゃあ、なんでここでカフェをやっているんですか?」
「金儲け」
「え!?」
「当たり前だろ?」
「えぇ……」
まさかの答えで佐藤は驚き引いた。まさか、金儲けのためにカフェを経営をしてるなんて思いもしなかった。
「ま、世はうちんとこの日本カシオペア連合の月給は安いんだよ。異世界人が金持ちじゃねぇんだよ」
「ええ……」
佐藤は蓮佳が言ってた日本カシオペア連合のことを思い出した。
日本カシオペア連合 約九割が異世界人で編成している。それはもちろん会長も異世界人である
(その番場っていう人がやばい人なんよな)
そう、番場という男はチート中のチート。その影響で各国の警察からも恐れられているほど。
(そして……近年、話題がよく上がる女が目の前にいる矢凪 蓮佳)
矢凪は最近、イタリアにいた超大型怪物を倒したばっかりでよく話題が上がっている。そして、
「八年前の全世界事変を止めた一人と呼ばれた女でもある……か」
「ん?今、なんか言ったか?」
「い、いえ、なんでも!」
「矢凪、いつもの」
「あいよ」
そして佐藤にはもう一つ気になったことがあったのだ。それは全世界事変である。
全世界事変 それは今から約八年前に世界各地で大爆破テロである。その同時に発生した災害級の魔物も出てきたのだった。これはまずいと思ったアメリカのFBIはとあるバスターコールを出した。それは世界で最強の十三人を集めた。その中には矢凪 蓮佳の名前とその写真があった。
(嘘だとは信じたい……)
その十三人のおかげで犯人ではあるグループは政府のもみ消しによって消されているがその十三人があまりにも強すぎて扱えないこと、そして、災害級の魔物を倒してしまったことからみんなはこう言った。
《異常者の鉄槌》と。
そして、全世界事変はミス・JACK事件、黒物の討伐を超える異世界人流出後の世界で最大の事件になった。
(本当はこの事を聞きたいが……)
と佐藤は冗談交じって話している蓮佳と海城を見つめる。この様子だと言いにくい。
「はい。コーヒーいっちょ上がり」
と蓮佳がコトンと海城と佐藤に一つずつコーヒーを置いた。「ごゆっくり」と言い、蓮佳は注文が入った方に向かう。佐藤はきょとんとした。
「あ、あの……」
「それは俺のおごりだ」
「え!?」
海城のおごりと聞いて佐藤は驚いた。
「な、何でですか!?」
「そりゃ、お前が考え事をしてることだよ」
「え……」
「お前、いっつも何かあったときは考え事をして、少し心配してたんだ」
「あ……すいません。ご迷惑でしたか……」
「そういう事じゃねーよ」
「え…?」
佐藤がまたもやきょとんとすると海城はすこし微笑みながら言った。
「確かに考えすぎるのはよくないのは分かるさ。だがな、少し周りを見て少し考え事するのはとてもいい事であるさ。あいつみたいにな」
と海城が向いている方に佐藤は向くとそこには笑顔で老人に話しかける蓮佳の姿があったのだった。
「お前、全世界事変のことを気になってただろ?」
「ど、どうしてそんなことが分かるんですか!?」
「大体のことは顔に出るんだよ」
「もしかして、全世界事変以前にも出会ったんですか?」
「んまぁ、そんなとこかな?」
とそんなにも驚く佐藤をよそ目に海城は続ける。
「全世界事変の捜査をした時、あいつと同行しててさ、その時に「ガキの癖になんでこんな事をするのさ」って聞いたんだよ。そん時にあいつはこう言ったさ。「守りたい奴がいる。それを守んなくてすっげぇ悪いだろ?」ってさ。今を思えば、あいつらしいのが混ざってるなってな」
「そうなんですか……」
そう言い、佐藤は海城に奢ってもらったコーヒーを飲んだ。そのコーヒーには深い味わいが広がっていて、なかなかの大人のような味わいであった。
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