静寂と恐怖。

 2週間ほどが過ぎたある日。黒板のある小さな教室の前をプラグが通りかかると

、黒板にこうかかれていた。

「青目と青髪」

 気になって教室にはいり、黒板消しで消そうとした瞬間。ふと背後に気配を感じる。教室の後方で人影が立ち上がる。

「なんだ、いたのか、クラン」

 ふりかえると表情のみえないクランがたちあがる。

「やあ……」

「ああ」

 振り向き治り、黒板の文字を消す。

「最近どうだ?なれてきたか?」

 沈黙に迷い、なんとか話しをしようとした。

「ああ、大分なれてきたよ……でもちょっと、合わないところもあるかな」

「合わない?ここが?」

「ああ」

「どうして?」

 クランは隅から隅へとあるいて、後ろの黒板に手を伸ばして、今度は後ろの黒板に何かを書き始めた。

“青の力、アシュヴァ”

「何ていうかな、皆本当はもっと力や実力を隠しているっていうか、何者かのせいで、鳥かごに収まっているっていうか」

「ふうぅん、君はずいぶん詩的にものをいうんだな」

「詩的かあ……僕はストレートなつもりなんだけど」

 すると、ぐいっと彼はプラグに顔を近づけてくる。胸元に手をやり、衝撃的な一言を放った。

「青の夜鳥って、君だろ?」

 プラグはあまりの事に声が出なかった。

「は?」

「青い目、青い髪、あからさまに“アルシュベルド人”を連想させる、まあそうした差別はもう30年前の戦争でなりを潜めたというが、だが……どうだ」

 踵をかえしてまた黒板に向かう、今度はこうかきたした。

“シスター・マルグリッド”

 ふと、プラグは自分の中に抑えきれない感情が浮かんでくるのを感じた。

「お前!!!」

「ふふ!!」

 つかみかかると、彼は奇妙に笑いながら両手をあげておどけてみせた。

「あはは!!“アシュヴァル”の力は人間の枠に収まらなかった“アルシュベルド人”の気性は荒く、かつ猟奇的で狂気、彼らの狂気はその魔力そのもの、あるいは魔力への好奇心からなり、同族同士の争いも絶えなかったという……まるで、まるで」

 その時、クランの前髪がゆれ片目があらわになった、それはどこかでみたような、ゴーグルのような、人工物のような瞳だった。

「君じゃないか!」

「!?」

 驚いて手を放した。

「まあ、冗談さ、君の本性が見たくて、君、あのアバズレから何を頼まれた?僕に関して」

「誰の事だ?」

「アバズレといったら、彼女しかいないじゃないか、シスター・マルグリッドだよ」

「!!」

 またもやプラグは彼につかみかかろうとしたが、マルグリッドの事を考えて、踏みとどまった。

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