偶然

 壁から壁、身を隠すように裏路地をいくペペロ、プラグもまた、彼女とは違ったふうに後を追う。

(あいつ、何してんだ?まさかまじでヤバイ連中と関わってんじゃ)

 ある開けた空間に出たとき、あしをとめ聞き耳をたてプラグはたじろいだ。大人たちの話声がする。グイン神父の声もしたのだ。アイリーンも一緒か?まさか何かの罠か?そう思ったプラグは宙にとび、やがて民家の屋根上に上った。

“シーン”

 静まり返った夜の街中。見下ろすとまるで世界の支配者になった気分になれる。それが、まるで“青の夜鳥”そのものだと思ったのだった。


 一方ペペロは、ある人影を追っていた。それはプラグによくにた姿で、はじめは孤児院の裏手で眠れず夜空の月をみていたのだが、突然“何か”が教会の屋根の上に飛び乗ったのをみて、それがプラグそっくりだったので、ふと連想したのだ。

(あいつ、何してんだ?まさか……青の夜鳥って……)

 そう思うと、なぜかいてもたってもいられなくなって布団を這い出して外にでてその影を追ってきた。だが、その影はぼろ布のような服にマントをきてフードをかぶり、正体がつかめない。

(プラグ……プラグ!!)

 ある路地裏にきたとき、突然ソレはこちらをふりかえり、その顔をみせた。どこか異国の奇妙な、ピエロ風の仮面をしているが背丈はプラグに似ていた。それはこちらをふりかえると肘や肩をまるで操り人形のようにゆらゆらゆらして、足をロボットダンスのように内側と外側に奇妙に動かした。

「人……なのか?」

 月に映し出されたそれは一層怪しさをもっていた。そして、それは飛び上がり、民家の屋根上にのぼった。


 プラグは自分の前方でそれが屋根に上ったのをみて、ひるんで身を隠そうとした。だが時はすでに遅かった。敵はこちらをみて、首を奇妙にかしげる。月夜の番、屋根上で二人の似た人間の邂逅。やがて、大きく息を吸うように体と頭を反り返らせて、目の前の“敵”と呼べる人間は勢いよくその姿勢を前傾状態にかえた。とともに、奇妙な音がひびいた。

「ピィイイイイイエエエエエ」

 それは、プラグには最初、何かわからなかった、あまりにも人間ばなれしていたし、夜間動く工場の機械音かとおもったが、違った。それはあきらかに人の声に“似せるように音を調整する”と、こう叫んだ。

「プウウウウゥウウラァアアアアアアアアグゥウウウ???」

 やがてそれは、首をひねり、手足を奇妙にくねらせ、プラグに目標を合わせたのだった。

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