あれ、小説ってどうやって書くんだっけ?
残機弐号
こんなの小説じゃない
小説っぽい小説を書くのは割と簡単だ。自分が好きな作家の真似をすればいいのだ。
その作家の書いた作品を全部読む。気にいった作品は何度も音読したり写経したりする。そうすれば、その作家の文体が模倣できるようになる。そして、文体模倣ができれば、それっぽい物語も自然に出てくる。
ただ、そうやって自分で書いた作品を読み返して納得できるかどうかは別の話だ。書いているときは楽しい。すらすら言葉が出てきて、まるで自分が天才であるかのように思えてくる。でも、それはたいていの場合、錯覚だと思う。
人真似の作品でも、オリジナルを知らない人相手なら面白がってもらえるかもしれない。でも、書いた本人は、その作品が空っぽであることを知っている。何一つ自分の心で書かれた文章はない。ChatGPTのように、オリジナルを大量に学習して、それっぽく言葉を並べてみただけだ。
小説を書く人の中には、他人とのずれを日常的に感じている人が多いのではないだろうか。他人と会話をしていてもどこか焦点がかみ合わないとか、他人と一緒にいてもなんだか上の空になってしまうとか。他人といても、自分がぼやけてしまっている感じがするから、自分の輪郭を確かめるために、文章を書くのではないか。それなのに、その文章さえもが誰かの模倣でしかないとしたら、そこには空しさしかない。
小説っぽい小説なんて書かなくていいのだ。こんなの小説じゃないんじゃないかな、誰かに怒られたり笑われたりしないかな、と他人の目ばかり気にしていては、きちんと孤独になることができない。小説を書くのは、きちんと孤独になって、自分で自分をマッサージするためだ。人間嫌いでない人でも、いつも他人と一緒にいると、正体不明の焦燥感に駆られることはあると思う。そういう焦燥感の強い人ほど、小説を書く時間が必要だ。そこに他人のジャッジを持ち込んではいけない。小説は、自分の中に潜んでいるまだ見ぬ自分のために書くのだ。
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