第18話 フランシスコと同じ香り

 私がミネバに合図を送ると、私に代わって副総裁に2つのダンジョン情報が欲しいことを伝えた。


「では、2つのダンジョン情報を頂くことは可能でしょうか?」

「はい、羊皮紙に情報が記載されてる物で良ければ直ぐに渡せます。情報料は2つ合わせて金貨150枚と、かなり高価な物になりますがよろしいですか?」


 副総裁は高額な情報料を気にしてるようだけど、金額に関してはなんの問題もないので、私がなにも言わずに頷くとミネバが返事をした。


「金額に問題はありません。なので2つのダンジョン情報を頂きます。支払いはギルド口座から差し引いてください」

「わ、判りました。あと大変申し訳ありませんが、次にギルドへお越しになる時は、事前に連絡を頂けませんか?」


 副総裁から意外な申し出を受けて、私達は思わず首をかしげてしまう。事前に連絡をするのはいいけど理由を知りたいので、ミネバではなく私が直接聞いてみた。


「えっと、事前に連絡するのは良いんだけど、理由を教えてもらっても良いですか?」


 私が初めて口を開くと、副総裁はミネバを相手にしてた時とは全く違う反応を見せた。その様はフランシスコが私に向けるものに近いように感じた。


「かしこまりました。我々冒険者ギルドはアリス様に対して、過去に何度も失態を繰り返して、大変ご迷惑をおかけしました。そのことで冒険者ギルドの代表である総裁から、アリス様へ謝意を伝える機会を頂きたいのです」


 副総裁は言葉を終えると、私の前で跪いてから深く頭を下げた。

(この頭の下げっぷりはフランシスコと同じだ。※アリスの心境)

(この男、フランシスコ殿と同じ香りがする。※ゼシカの心境)


 冒険者ギルドが私に対して犯した失態について、トップである総裁が直接謝罪を伝えたいらしい。せっかくの申し出なので受けることにした。

 ミネバに合図を送ると私の代わりに答えた。


「判りました。アリス様は来年よりグリエル英傑学園へ通われますので、その時に調整を致します」

「はい、ご配慮に感謝致します」


 しばらくすると、羊皮紙に記されたダンジョンの情報を手渡されたので、ミネバが挨拶をして応接室を後にする。

「では、失礼致します」

「あっ、アリス様、本日は誠にありがとうございました。神々しいまでのお姿を拝見できて感激しました」

「あっ、はい、またお会いしましょうね」


 そう伝えると、涙を浮かべながら感激していた。この人はフランシスコと同じだと確信したのだった。


 ギルドカードの更新と、ダンジョン情報を得たので、私達は【冒険者ギルド総本部】を後にしてホテルへと戻る事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る