第8話

 あれから数週間。


 ついに渚と一緒に帰ることは無くなった。


 これでいいはずなのに。


 「おかえり。」


 渚はどんな時でも一緒にいてくれる。


 「どうしたの?。」


 包み込む優しさに今日も甘える。


 「脱がしてください。」


 私は何をお願いしているのだろうか。

渚は何も言わずに私の制服を脱がしてくれる。


 「下着も?。」

 「下着も。」


 私はおかしい。

こんなことしてるのに、凄く興奮してる。


 「楓…?。」


 私は制服を着直した。

下着も着けずに。


 「楓……?。」


 渚にも同じようになって欲しい。

私は脱がす。制服を。

私は脱がす。下着を。

私は着させる。制服を。


 「何がしたいの…?。」


 私が聞きたい。


 「で、次は何をするの?。」


 キスをした。

ベッドの側面に押し付けて。


 渚の身体がそる。

抵抗されないように手を握る。

恋人繋ぎで。


 「はぁ…はぁ…またこれ……?。」


 私はこれしか愛し方を知らない。

愛してるのに。


 想像出来ないの。

手を繋いでデートとか。

一緒にイベントを楽しむとか。


 「もう終わり?。」


 渚は私を乱す。

知ってるはずなのに。

わかってるはずなのに。


 なのにあえて聞いてくる。

受け身で待ち構えている。


 私は…。

私は…。




――――――



 そこからの記憶はない。


 ただ疲れきった渚とか。

酷く濡れた手があった。


 あぁ。私は渚をまた壊した。

なのに彼女は全て受けいてくれる。


 「大好き。」

 「そう。それは良かった。」



―――――

 


 翌日。


 「どうしたの?。」


 あんなことがあったのに渚は私に普通に接してくる。


 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。


 「なんでもないよ。」


 渚は手を握る。

渚を壊した手を。


 私は怖い。

嫌って欲しい。


 どうしてあなたそこまで私を愛してくれてるの?。


 世界は廻る。


 学校では一緒にいることも少なくなった。

これでいい。


 それでもあなたは待ってる。

私の帰りを。


でも私は帰らない。

帰ろう。


 そう決めたから。

渚は待ってるよ。あの子の部屋で。


 だから。

素直になろう。


 私は…。

私は渚とずっと一緒にいたい。


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