黒聖女と白聖女の歪な事情

アイズカノン

これまでの渚と楓、今までの聖女たち

第1話


 このクラスには白聖女と黒聖女がいる。


 白聖女こと【市ノ瀬楓】。

短髪の白金の髪に、青い瞳。清潔な白いブラウスの美少女。

彼女は人当たりもよく。

皆からもしたわれていて。

イベントでは常に皆を引っ張っている。


 黒聖女こと【七瀬渚】。

短髪の黒髪に、赤い瞳。漆黒のような黒いブラウスが特徴の少女。


 そう。私である。


 桜咲。散る春の陽気も過ぎ去り。


  妙な暑さと湿り気がじわじわくる5月の中頃。


 私。七瀬渚は。


 読書をしていた。


 いや特にやることもないのよ。

だいたいは楓がやってくれるし。

常に友達なのか取り巻きなのかわからない人達に囲まれてるし。

特に理由もなく私たちは学級委員長やってるし。

いや。

私だけか。

楓は乗り気で手を挙げた。

私はついでで選ばれたようなものだった。

それもそのはず。入学してそうそうやりたがる人などいない。

楓のような人を除いて。


 「あのこのプリントのことなのだけれど。」


クラスメイトが私に声をかけた。

どうやら6月にやる林間レクリエーションのことらしい。


 「それなら…。」


 楓のところに誘導しようとしたけど今は忙しいそうだ。

この子の目的をまず把握しないと。


 「ごめん。なにかわからないことある?。」

 「あっ。いえ。このことなんですが。」


 4、5人の班を作って各地を回る行事があり。

今回の質問はそれみたい。


  「これはまだ通知の紙だから。詳しいことは今日の午後の授業で先生が伝えると思うからそれまで待ってて。」

 「ありがとうございます。」


 そう言ってクラスメイトは去っていった。


 時は過ぎて午後の授業。

林間レクリエーションの概要や必要事項はなんなく終わって。

班決めの地獄が始まった。


 私。これは嫌いである。

私はまだ楓とのペアで固定されてるから困らないものの。

元々個人の人は大概取り残されたりしている。

そして先生が良くない言葉で編成を促すのをもう何回。何千回と経験したことか。


一人の少女が目に留まる。

あの子はいつも図書室で読書をしている長髪の黒髪の少女。

名前は確か【二葉雪】だったか。


 身体が勝手に動いてた。


 「あのー。」

 「は、はいぃ!?。」


 驚かせてしまった。


 「突然話しかけてごめん。」

 「こちらこそすみません。」


 近くで見ると本当に可愛い子。

細身で、スレンダーな身体が、ストレートな長い髪が合わさって愛らしい雰囲気をかもし出してる。


 「あのすみません。」

 「あっ。あぁごめんなさい。」


 ようやく本題を口にした。


 「もし良かったら私の班にこない?。」

 「良いのですか?。」

 「えぇ。大丈夫よ。」


 何故か手を掴まれて腕をブンブンされた。

よっぽど嬉しいらしい。


 「あの黒聖女様と同じ班なんて光栄です。」

 「…そう…。良かったね…。」


 正直。私が黒聖女と言われるのはどうもなれない。

起源も発祥もわからず。私たちはそう呼ばれるようになったから。


 私は雪の手を引いて元の場所に戻る。

なんか顔赤らめているけど大丈夫だよね。


 私が戻ると同時に楓も一人の少女を連れて戻ってきた。

この子は確か【四宮玲】だったか。

長い右サイドテールが特徴的な子。

私はこのはちょっと苦手である。


 「これでうちの班は揃ったね。」


 楓が仕切る。

私は彼女のサポートに徹するのがもう染み付いてた。


 お互いに簡単な自己紹介を終えて、先生から渡された林間レクリエーションで行く自然公園の元に、希望するルートを決めた。

 楓が仕切り。私が相槌を打ちながらなごしつつ無事ルートは決まった。


 この間ずっと四宮さんは不満そうに私を見ていたのはなんでだろうか。


 今日も学校が終わった。

少し身体を伸ばす。


 今は楓の用事が終わるのを待っている。


 私たちは幼なじみ。でも楓はなんでもそつなくこなして。

正直羨ましい。

私もあれくらいやれたらと何度思ったことか。

でも口にはしない。

楓は楓で。私は私なのだから。

私はあくまで楓のおまけ。

完璧で究極のお星様の引き立て役の月なのだから。

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