第4話 エピローグ4 私は悪くないと主張していたいじめの加害者を閻魔様を差し置いて地獄に行けと言ってしまいました

私が思い出に浸っている間、判決の間?ではふてぶてしいいじめの加害者がいかに自分が悪くないか延々と話していたのだ。

そして、これでは埒が明かないといつの間にか被害者の女の子の霊が連れて来られていた。


被害者の女の子の霊はオドオドしていて、加害者の女を見た途端、ピクリと震えるのが私には判った。


私も虐められている時は山田さんらを見た途端ピクリと震えたものだった。


それを周りの判決の順番待ちの霊たちは面白そうに見物していた。


「その方をいじめて自殺に追いやったのはこの者かの?」

疲れているのか、それともデリカシーの欠片も無いのか閻魔様はいきなり聞き出したのだ。


そんなの女の子がすぐに答えられる訳はないじゃない!

私は思わず心の中で叫んでいた。


「えっと……」

女の子はふてぶてしい女をオドオドと見ながら口ごもった。


「そのようにオドオドとしてても話は進まんぞ。その方の勘違いであったのか?」

いい加減に疲れてきたのか閻魔様がいかにも投げやりに言うんだけど。


何よ! このカバ!


良く見れば閻魔様が私のいじめを知っていながら無視していたカバ田先生とそっくりに見えてきた。


「そうですよ。閻魔様。この女の勘違いですって」

ふてぶてしい女はそう閻魔様に言いながら、か弱い女の子にガンを飛ばしているんだけど……

女は目でこれ以上言ったらどうなるか判っているでしょうねと脅している。


「そうじゃの、そろそろ判決を出そうかの」

いかにも面倒くさそうに閻魔様が言い切ったのだ。


「ちょっと、いいかげんにしなさいよ!」

私は我慢しきれずに、何も考えずに並んでいた列から飛び出していた。


「おい、いきなりどうしたのだ」

「カバは黙っていなさい」

「か、カバだと……」

閻魔様が私を止めようとしたが、私の叫びに固まっていた。


慌てて鬼たちが出て来たが、


「おい、あれは誰だ」

「いかん、あれは町田万智の縁者だ」

「や、やばい。今度は地獄の門も壊されるかもしれないぞ」

私を止めようとした鬼達は、何故かぎょっとして、私をあたかも化け物を見るように見ると、いきなり下がってくれたのだ。

何か外野が煩いんだけど、もうここまで来たら言うしか無い。


もう、私は躊躇しなかった。


私は自殺しそうになった時に町田さんに助けてもらったのだ。今度はこの子を助けてあげるべきだ。

珍しく私は妙な正義感に燃えてしまったのだ。こんな馬鹿なことをしたのは町田さんの事を思い出していたからに違いないのだが……


「あなた可哀想に、このふてぶてしい女に虐められていたのね」

私は泣きそうになっていた女の子を胸にだいてあげたのだ。

町田さんにしてもらったのと同じように。

「お姉ちゃん」

女の子はいきなり泣き出したのだ。

「よしよし、いい子」

私は女の子を抱きしめていた。


「ちょっとあんた。部外者は関係ないでしょ。勝手に出てこないでよ」

ふてぶてしい女が文句を言ってきた。


「何言っているのよ。あんた、この子を散々いじめて自殺させたんでしょ。それを誤魔化そうとするなんてカバ閻魔の目は誤魔化せてもこの沙季様の目は誤魔化せないのよ」

私は言い切ったのだ。


「ということで、そこのいじめの加害者。あんたは地獄に落ちなさい」

「何勝手に判決しているのよ。あんたに何の権限もないでしょ」

女は私に食ってかかってきた。

そして、後から冷静に考えるとその通りなのだ。

私には何の権限もなかったのだ。


「ふんっ! お前は、人一人の尊い命を死に追いやった。昔から一人殺すとその殺された者の苦しみを、二人殺すと二人分の苦しみを与えると三途の渡しのルールで決まっているのよ」

私は勝手に叫んでいたのだ。

「そんな勝手な意見がまかり通るわけ無いでしょ。ねえ閻魔様」

女は勝ち誇ったように叫んで閻魔様の方を見た。


「いや、その部外者の女の言う通りだ」

しかし、閻魔様は苦虫を噛み潰したような顔をして宣ったのだ。


「嘘! そんな事聞いていない!」

女はいきなりの閻魔様の豹変に蒼白になった。


「何を今更言っておる。その女の言う通り、『目には目を歯には歯を』はこの世の理なのじゃ」

閻魔様はムツとして言い放った。


「閻魔様、嘘ですよね」

慌てた女が閻魔様にすがろうとしたが、


「貴様は虐められた者の苦しみを地獄で味わうがよい」

やる気のないカバはいつの間にか精悍な閻魔様になっていた。


「そんな、いやです。閻魔様、何卒お助け下さい!」

女は泣き叫んで、閻魔様に縋ろうとした。


「ええい! しつこいわ」

閻魔様が指を鳴らすと、女は地面に吸い込まれた。


「キャーーーー」

女は悲鳴を残して墜ちていったのだった。


そして、後には正気に返って唖然としている私と怒り狂った目で私を睨む閻魔大魔王様が残ったのだった。


嘘、これ絶対に詰んだ。


私の地獄行きは決定?


私はさああああっと全身の血の気が引いたのだった。


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余計な事をしてしまい絶体絶命のヒロイン。


続きはどんどん更新予定です。

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