第4話 クラス会と彼女
ゴールデンウィークが明けた頃、大学にもクラスというものがあるってことを僕は学生課の掲示板に張り出された案内を見て知った。良く読んでみると必須項目の授業を受ける学生を三つに分け、それをクラスとして呼ぶのだそうだ。
そう言えば先週、大学からのラインで僕はクラスBに属すというメッセージとパスワードが来ていたっけ。
僕は、掲示板に貼られた案内の下の方にあるクラスBのQRコードを読み取る。パスワードを入力するとクラスB用のWEBサイトへ飛んだ。
「クラスB親睦会開催決定!出席の方は、幹事の
WEBサイトに飛んだ途端、大きなポップ文字のタイトルと、その下に小さく書かれた幹事の名前と携帯番号が目に入って来た。
「あー、なんかやだな…」
もしかしたら声に出ていたかもしれない。
余り、コミュニケーション能力が高くない僕は、大人数でのイベントは特に苦手としている。高校の時も、出来る限りこの手のものは避けて通ってきた。
だが…、これを欠席したら、もしかすると早々とクラスの中で孤立するかもしれない。
正直、僕は、一人の方がいいというほど強くはない。だが、こんなイベントには行きたくないんだよな…、もうどっちなん!と言われてしまいそうな位、中途半端な気持ちをもった男なのだ。
僕は、自己嫌悪に陥りながらも、一旦回答は保留にして次の講義へと向かった。
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近鉄奈良駅からすぐの学生御用達の居酒屋に僕が着いた時には、すでに十数名の学生が集まっていた。僕は、大広間の入口に近い席で小さくなって座っている。
もう早速知り合いになったのだろうか…!?和気藹々と話をしているグループもいて、なんだか身をつまされるような気分だ。
「じゃあ、名前呼ぶから簡単に自己紹介してくださーい」
幹事の宮谷くんが順に名前を呼んでいく。
僕の名前が呼ばれた。僕は、ゆっくりと立ち上がると出身地と学部、そして奈良の印象など、当たり障りのないことを発して座った。
「高井くんって福岡なんね。私もそうなんよ」
自分は恥ずかしいと思って使ってなかった方言のニュアンスそのままに僕に話かけてきたのは、僕の隣に座っている女子だった。
「次、徳間さん。…あれっ?徳間さんいる?」
「あっ、ごめん。私の番だよね。私は、
徳間さんは、僕と同じ福岡出身のようだ。だが、さっき僕に話しかけてたような方言のニュアンスは全く感じないとても綺麗な標準語での自己紹介だった。僕は呆気に取られたように彼女を見てしまう。
「高井君、ほら、なんばしょっと?なに飲むん?もう
「あっ、じゃあ、梅酒ロックで」
「りょーかーい。すいません〜!梅酒ロックを二つ〜!」
彼女は、よく通る声で店のスタッフにオーダーをする。
「ごめん。ありがとう」
「いえいえ。ほら、福岡の女子って、こういうのすっごい気になるけんね。生まれた時から根っからの世話やきやけんしょうがなかろ。ふふっ」
徳間さんは少しはにかんだ笑顔で僕に話しかける。
恐らく彼女のコミュニケーションならすぐにでも日が当たるグループへと入っていけるだろうに、僕なんかと話をしてくれるなんて、凄く良い子だなと思っていた。
そんな時だった。
「以上、今日の出席は十九名。残念ながら用事で欠席したのは
「「「「カンパーイ」」」」
あちこちでグラスをぶつけて既に和気藹々の雰囲気が流れている。
「ほら、高井くん、これからも宜しく〜!!」
「あっ、うん。宜しく」
僕は、徳間さんが頼んでくれた梅酒ロックの小さなグラスを持ち上げ彼女のグラスにコツンと当てた。
「あ〜。良かった〜。私、知ってる人、一人もいなかったけん、正直今日凄くドキドキしてたんよ。でも、良かった!!高井くんと友達になれて。来たかいがあったっちゃ」
本来なら、こんな僕なんかと知り合いになれたと喜んでくれている可愛い女子が隣にいれば心の底から嬉しいのだろうけど、今、僕は…、今、この時でさえ、一人の女の子のことを考えていた。
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