第38話 不可抗力

私、ローナとヴァリーはカエル王国へ。

謁見の間でヴァリーはカエルロッド王子に聞く。

「大使には毒物による肌荒れが見られた」

「え、それは…」

「何か聞いてないか」

「確か少しだけ問題があったと聞いてますが」

「なぜ話さなかった?」

「大きな問題ではないと思ってたので」

そこまで言うとカエルローズ王女が言う。

「何よ? まさか私達が毒を盛ったとでも言いたげね」

「事実を確認してるだけだ」

「確認…ね、随分手厳しい聴取に聞こえるけれど」

そこまで言うと側近の一人が口を出してきた。

「恐れながら天界の使者様、その件は疑われるような事柄でもないのです、突然の口出しをお許しください」

王子はそれを聞いて言う。

「こちらは詳しい経緯を知ってる者です」

ヴァリーはそれを聞きそのカエルの亜人の方に視線を向ける。その人物は続ける。

「王子、差し出がましい真似、ご容赦ください」

「構わないよ、説明をお願いする」

そう言うとそのカエルの亜人は説目を始めた。

「あれは、大使が数回この国へ訪れた時の内、最近の頃の事です」

彼の回想ではこうだ。


大使は言う。

「王国の中を見学させてもらってたんだが少し道に迷っていたんだ、助かったよ」

「いえ、道案内を出来て光栄です」

 森の中を進む大使とカエルの男性。

王国へ着き、王子へ挨拶。

「王子よ、いやすまない。少し遅れてしまった。道を外れてしまいまして」

「お待ちしておりました」

「ウォートンは?」

「資料や王国の歴史書などを見てもらってます、さあ、打ち合わせを行いましょう」

「ありがとう。道案内してくれた君も。ご苦労だったね。感謝しているよ」

そう言って大使は彼の手を握った。

「あっ」

声を上げたのは手を握られたカエルの男性。そして彼は大使の手を振りほどく。

カエルの男性はそれから慌てたように言う。

「も、申し訳ありません!」

大使はそれを見てやや申し訳なさそうに言う。

「いやいや、人間と握手をするのは抵抗があったかな…?」

「違います、申し訳ありません。私は分泌物に毒性があるので」

「おや、そう言えば手が少しピリピリと」

「お薬をお持ちしますので…」

「はっはっは…珍しい体質の方もおられるのですな」

「こちらの不注意で…」

「お気に召されるな。種族が違えばこういう事もありましょう。大使として仕事する為にお互いに色々見聞を深めたい所ですな。はっはっはっ」

「そう言っていただけると」


そんな回想をしてくれた。それを聞きヴァリーは尋ねる。

「不可抗力か」

「はい、大使は優しい言葉を掛けてくれました」

私も言う。

「単なる不注意から来た事だったのね」

ヴァリーは「事件性はないな」と言うので王子は続ける。

「大使に傷を付けてしまった事は失態です。しかし軽い物ですので」

ヴァリーは納得したようで言う。

「分かってる。毒物が検出されたから確認しただけだ」

私も謝る。

「お付きの人は知らない場面だったから気付かなかったのね、早とちりしそうになったわ。ごめんなさい」

「いいんですよ。それより、色々調査の方は進んでそうですね」

「ええ、もう一組の方も調べ物をしてる最中よ」

「手掛かりがあればいいですね」

ヴァリーはまとめるように言う。

「大使の体調が戻ればもっと詳しい話も聞けるだろう」

こうして私達のカエル族への聴取は終わった。

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