第25話 毒持ちスライム

宿で隊長に報告するハンス。

「誇張されてる部分はあると思いますが概ね聞いてる通りの証言です。ただ、体力回復については魔法や能力のような物ではないようです。相手の体にわずかに良い影響が出るような感じはしますが」

ハンスの報告に僕は付け加える。


「どうなんだろね…クイーンスライムは知らないって言ってたけどやっぱり弱い癒しの効果とかがあるスライムとか居るのかな」

するとローナが答える。

「ヒーリング作用をするって事?やっぱり聞いた事ないわね…」

その言葉にハンスが言う。

「お前が知らないだけじゃないか?まだまだヒヨっ子プリンセスだろ?」

「そうだけど…そんな珍しいスライムなら魔界でも噂にならないかしら」

僕は更に質問してみる。


「スライムの生態に詳しい人とか居れば話を聞けるんだけどね」

「そうね。でもそういう事に詳しい魔界博士とかもここからじゃ連絡取れないし」

そんな打ち合わせをしているとドアがノックされる。


女将さんの声で「ちょっといいかい?すまないね、伝言が来てるよ」と声がする。

ハンスがドアを開け応対する。

紙切れを受け取り、「ありがとうございました」と礼を言いこちらに戻ってくる。

紙の内容を確認して僕らに告げる。


「毒持ちのスライムの情報が入りました」

隊長は「見つかったのか?」と問うのでハンスは返答する。

「捕獲されたそうです。ギルドで保管されてると」

「すぐに確認しに行け」

こうして僕らはギルドへ向かった。


僕とローナ、ハンスの3人でギルドへ。

窓口でハンスは言う。


「調停官だ。新種のスライムを確保した件なんだが」

受付の女性は答える。

「討伐確保品の保管倉庫で保管してます。右の通路の奥ですので担当者に伝えておきます」

手続きをしてくれるようですぐにそのスライムという証拠品の確認へ。


「こちらです」と言う担当者の案内で目的の場所へ。

金貨や報奨品とは別の倉庫の中へ。

そこはいくつかの区画に分けられ、大小さまざまな檻などが設置されている。

討伐された魔物、捕まえられた野生動物など、生きていたり死んでいたりするけど様々な生き物を管理する倉庫のようだった。

担当者は一つの檻の前で止まる。

「このスライムですね」

そこには、檻に入れられたスライム。

それを見ながらハンスは言う。

「コイツか」

担当者は「気を付けてくださいね」と注意するので僕も言う。

「毒持ちなんだよね」

「そうですね、近づきすぎなければ平気ですが」

ハンスは尋ねる。

「檻はこれで平気なのか?スライム相手じゃ…」

「呪符が貼ってあります。隙間から出たりはできません」

「なら平気だな」

そう言いながらみんなで観察する。

ローナは言う。

「毒持ちだと、やっぱり新種かしら」

僕も観察しながら言う。

「どうだろうね。なんか少し色も付いてるみたいだけど」

ハンスは言う。

「そうか?透明に見えるが…」

「よく見ると色が付いてるよ」

するとローナは同意しながら言う。

「うっすらとだけどたしかに黄色掛かってるわね」

するとハンスは言う。

「…警戒色か?」

ハンスの言葉に僕は「毒を持ってる事を知らせるんだっけ」と聞いてみる。

「そうだ、相手に警戒させて食われないようにするんだ」

そんな説明を受けながらローナは言う。

「他に特徴はないのかしら…?」

僕は少しだけ近づいてみる。

スライムはプルプルしてるだけでとりあえずは大人しくしてるようだ。

そんなスライムを観察して僕はある事に気付く。

「少し、匂いがあるみたいだね」

僕の言葉に二人は不思議そうな顔をする。

「そうか?気になるニオイは何もしないような気がするぞ」

「私も。全然感じないんだけど」

「そうかな…?僕は少し感じるんだけど」

「どんな匂いなんだよ」

「どんなって言われても…ちょっと表現しにくいような」

僕の言葉にローナは言う。

「う~ん…やっぱり分からないわ。ラルスは他の人より鼻がいいのかしら」

僕は「匂いがするっていっても気になる程じゃないんだけどね」と付け加えた。

観察を終えたハンスは担当者に聞く。

「捕まえたのは2匹と聞いてるが」

「1匹は研究所へ送ってあります。変異種なのか原因を探る為ですね」

「分かった。ありがとう」

こうして僕らは毒持ちというスライムの確認を終えた。


宿屋へ戻った僕らは隊長に報告する。

ハンスは言う。


「特徴は毒持ち以外だとうっすらと色が付いてる事、そして匂いですね」

「色と匂いだと?」

そう聞く隊長にハンスは続ける。

「薄い黄色と、あと匂いですが、ラルスが気付きました」

「どんな匂いだ?」

そう聞く隊長に僕は言う。


「どんなって言われても、少し表現に困るんだけど…」

「刺激臭のような物か」

「そう…言われればそうだね。何か臭いというか…あとどこかで嗅いだような気がするんだけど…」

その言葉にハンスが言う。


「ホントか?どこで嗅いだんだ?」

「ええと…どこだったかな…最近なんだけど…あ…ファイアフィルドだ。前の冒険だよ」

今度は隊長が聞く。

「ファイアフィルドのどこだ?」

「う~んと…」

僕は記憶を思い出そうとしながらどこだったか思い出そうとする。

そしてなんとかその記憶を引っ張り出すことができた。

「そうだ!火山に行った時だよ」

その言葉にローナが聞く。

「火山?博士の捜索の時の事ね」

ハンスは「そんな匂いがしたか?あの時…」と半信半疑だけど隊長は言う。

「…なるほど。そういう事か」

何やら気付いた隊長は続ける。

「ラルス。よくやった。スライムを預けてある研究所へ行くぞ」

隊長はどうやら何かに気付いたようだった。

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