第10話 問い詰め

レヤード副主任を呼び出し話を聞く隊長。

ここはお城の中にある一室だけど他の部屋とは違い武骨な造りで窓も小さな窓が一つあるだけだった。


「聞いてる話と違うようだな」

表情を変えない隊長だけど座っている副主任を見下ろしながら言う隊長はなぜかすごい威圧感だ。

「…」

副主任はマズイ、と言わんばかりの表情になっている。

そんな中、隊長はゆっくりと座り資料も机に広げる。

「ジルキン博士が揉めてるのはグスタフ兵長だけじゃないな」

言いながら資料の何枚かを見せ、指し示しながら問い詰める。

「言い合いしたな、原因は研究方針か?」

「そ…それは」

「掴み合いにでもなったのか?研究材料も壊したな」

「よ…よくある意見交換です!」

その言葉に隊長は2枚の資料を見せて言う。

そこには研究用材料、機材申請ともう1枚には廃棄、処分記録と書かれている。

「熱心な意見交換みたいだな。揉めた翌日に研究機材補填の申請と廃棄記録も出すほど。揉み合いになって壊したのか?」

「それは…手が当たって…」

「…」

「博士は頑固で!」

「それで研究機材を凶器にして殴り合いでもしたか?打ちどころが悪かった博士はあわれにも他人に見せられない状況に」

「ま、まさか!何も起こってませんよ!私が口論の末に殺して隠したとでも!?」

「閉じられた空間の研究所ではありうる事だな」

「そんな馬鹿な…とんでもない」

「じゃあなぜ嘘をついた!」

隊長は突然大きな声を出し強い口調に変わった。


副主任はうろたえながらも返答する。

「疑われると思ったんだ!あんな事のあとじゃ」

「普段から衝突があったんじゃないか?」

「それこそ、研究者同士ではよくある事です!」

反論する副主任に隊長はトーンを落とし問い詰める。

「長いようだな」

「何がですか…」

「副主任で8年目、そろそろ主任や所長の役職が欲しくなる頃だ」

「!?…待ってください!私が役職や名誉目当てに人と揉めるとでも?」

「違うのか?」

「博士とは意見の違いもありますが、国や、何より博士本人を思っての事です!」

「博士を思っての事だと?」

そう問いかける隊長に副主任はポツポツと語り始める。

「博士は今回、魔道具の研究をしていました」

「寄宿舎の博士の部屋の魔導書関連の資料はそれか」

「ただ…かなり高度な技術が必要な物らしく、作れたとしても私としては制御できるか…」

「危険性の高い物なのか」

「具体的な品物までは分かりません。ただ人間以外の力を借りた物であって」

「人間以外?」

「はい。精霊やその他の者です」

「…」

「よく分からない者に力を借りる魔道具など、しかも上手く行かなければ場合によっては魔族の力を利用してでもと言い出すので」

「魔族だと」

「この辺はさすがに言葉の綾だと思います。博士は興奮するとよく誇張したり大風呂敷を広げますので。ですが、博士や研究所の将来の事も考えると」

「止めざるを得なかった、と」

「誓って怪我をさせるような事はしていません。ただ、博士は思い立ったら一直線なので誰かがブレーキを掛けなければいけない時があるんです」

隊長の鋭い視線の先で、怯えながらもそう潔白を主張をする副主任だった。

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