29 アイテムボックスに拘って… その29
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──溜息を吐かれる甲司。いや、それ僕のせい?──
「これは全部……売れないわね」
「えぇーっ!?」
「だって……わかるでしょ?」
「何を……ですか?」
ひょっとしたら
「違うわよ」
と突っ込まれる。何を考えているのかわかるのだろうか?
「品質が高過ぎるからよ……」
と、逆と突っ込まれる。
「え?……でも普通品質って出てるけど……」
「素材としてはね。ちなみに同じ素材を使っても普通品質以上には評価されないわよ?……絹なんかの高級素材や化繊を使っても同じ」
「ふむふむ……」
「所謂、地球上の素材では低品質から通常品質までしかできないの」
「あー……矢張り、ダンジョン素材とかモンスター素材を使わないとダメなんだ……」
「うん、そう。で、この場合の高品質というのはね……」
「……付与したアイテムボックスの性能ですか?」
「それもあるけど……」
再びアイテムボックスと化した布袋を鑑定レンズで見る先生。
「この能力期限が長過ぎるのよ……」
「あぁ……さっきいってた……ベテランで1年って奴ですか」
「そう……普通、
「……5年って有り得ないんですか?」
先生が溜息を吐いて布袋と鑑定レンズをテーブルの上に置く。そして本棚の元へ歩き……1冊の本を取り出してパラパラとページをめくる。
「これを見て」
開いたページを受け取ってから読み始める甲司。
「……え?」
そこに書かれていた情報を簡潔に述べれば……
◎付与術で与えられる、無理なく付与して与えられた能力が持続する期間は……凡そ1年前後
◎命を削る勢いで付与された場合は……それでも3年前後
◎1度で生命を削り切った場合……永続付与となる。つまり……
「付与した有効期間分……寿命が削られる?」
「ようやく、何をいいたかったのか……理解できたようで何よりだわ」
既に15個の布袋と、11個の木箱で5年の能力期限が与えられている。それだと、単純計算で26×5年で……130年の寿命が削れてることになるんだけど……
「あの……先生」
「何?」
やたらつっけんどんな反応だが、真面目なことなので正直に答える。
「先程の計算ですと、僕……既に130年の寿命を削られてる計算になるんですが?」
「はぁっ!?…………確かに……あ、でも、1年の付与ならそれ程寿命は削れないって聞くわね……」
「……その、普通に仕事してて亡くなった方っているんですか?」
「んー……普通にね……天寿を全うしたって付与術師が居るとは聞いたことはないわね……」
先程の本を読む限り、無茶な付与を試した人がいきなり死んだ……ということ以外は書かれてないようだ。何しろスキルが付与されるようになってまだ10年も経っていない。大人なら戦闘系や仕事に関するスキルが自然に生えることはあるようだけど、付与術師になってたかが10年弱で死ぬとすれば無茶をするくらいだろうか?
「んー……もう1ついいですか?」
「今度は何?」
「付与術師の人の仕事するペースってどんなものでしょうか?」
「えっと……」
また本棚まで歩き、別の本を取り出してページをめくる先生。つか、家庭科室なのに何でそんな魔法関連の本があるんだろ?
※
「あぁあった……ここよ」
「えーっと……ほほう」
そこには、付与術師全般とあるが、多忙な者でも日に数個程度。年老いた術師は1日に多くても3つまでと規制されているらしい(そんなに年寄りが居るんだろうか?……と考えたら負けなんだろうか?)
つまり……1日で30個も付与した僕は……普通に無茶で寿命を大幅に短くする苦行だった……という訳だ。それも、1つでもかなり大幅に寿命を削る行為だったと……そりゃあ先生がキレる訳だ。
(でも、そんな「寿命が削れて苦しいー」とかなかったんだけどなぁ?)
なんて考えてたら、先生が鑑定レンズで僕を覗き込んでいた。
「何です?」
「君の寿命を見てたんだけど……全然、普通よね?」
「はぁ……」
ちなみに、79歳までは元気に生きられるらしい……
平均寿命はここんとこ短くなってて男性で56歳前後って聞くけど……
「僕も先生の寿命、見てもいいですか?」
「いっ……いいけど?……それ以外は見たらだめですよ?」
はいはい……といいつつ見てみたら、苦労してるのか……66歳と出た。
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ちなみに(この世界の)女性の平均寿命は69歳くらいだそうです。甲司の(予測)寿命が如何に常識外れに長いかが
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