06 アイテムボックスに拘って… その6

 無事に無罪放免となった僕氏。そして休日の日課を始める……

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──ようやくスキルの熟練度上げの話になった件──


 此処ここは空き地だ。周囲は破壊されて粗方撤去された住宅地があり、ダンジョンも遠く離れた場所にある。代わりに生え始めた草や低木がちらほらあって、ぱっと見にはサバンナみたいに見えなくもない。一応、建材の集積地もあって、そちらには監視カメラとかもあるんだけど……


「まぁ、訓練してるのは見られたくないし……」


 と、カメラの死角を選んでそこに座り込んでる訳だ。布袋と小箱合計10個を両手で持つには結構嵩張るので……


「んー……誰も居ないな?……よし」


 と、小さなポーチ……見た目は小銭入れみたいな蓋をボタンで留める簡素な物をベルトから外す。


パチン……


 蓋を外し、ひっくり返す。


ぼとぼとぼと……


 中から、ポーチの口より大きな布袋と、木箱が落ちて地面に転がる。


「……うん、問題無く取り出せたな」


 小銭入れ型のポーチは、今まで唯一……偶然にアイテムボックス付与に成功した一品だ。中の物を取り出すにしても手を突っ込めないのでひっくり返して取り出すしかなく、その場合は中の物を全部取り出すしかないし、余り大きな物は入らないし、入れられる物は口の大きさの倍程度まで。


 内容量は10個までと個数制。使い辛いっていうか……ちなみに小銭を入れたら500円玉だろうが1円玉だろうが10枚までっていうね……小銭入れとしては使えないっていうのが結論(財布を使えばもっと一杯入るけどさ……)


 鉛の文鎮とか重そうな物を10個入れてみたけど、文鎮以外はそれより軽い軽金属とか鉄だったので正確にはわからんかった……大きな鉄骨とか入れられたら便利だったんだけどねぇ(でかくて入らんし)


 ちなみに入れる前のそれらは重くて持てなかったけど、入れたら殆ど重さは感じなかった。小銭入れとしての重さくらいか?……それ考えたら割と優秀なんだろうと思う。


(偶然できちゃった奴だから、量産できなけりゃ意味無いし……)


 こうして素材を持ち運べないと大変だからなぁー……と考えながら素材の布袋と小箱を並べていく。


「さて……アイテムボックス付与」


 最初の一発目。普通に内容量拡張と重量軽減を込めながら付与する……。特に何も考えないと、大体倍容量で軽減具合も50%となる……と物の本に書いていた。有名な付与術師の書いた本で、最初に貯めていた貯金は……それで全部消えた。


(小学校の頃から貰ってた小遣いとお年玉全部ぶちこんだんだよな……)


 まぁ、小遣いつっても、月に500円くらい。お年玉も両親から合わせて数千円って程度だ。6年間、1回も値上げされなかったけど……あ、6年生の1年だけ、100円上がってたっけ……。お年玉も小学生最期だからって、2人合わせて1万円になってた。お陰で、中学生になる前に何とか……ね。


 小さく光が布袋に吸い込まれ……消える。


「……失敗かな?」


 口に手を入れてみる。何も感じ取れない。試しにその辺の石を拾って入れてみる……


「入らないか……失敗っと」


 取り敢えず「失敗」って書いた地面に置いておく。そして次の袋へ。袋が終わったら小箱と試していく。全て終えたら、最初の布袋を手に取る。


「……うん、込められた魔力の残滓は抜けてるね」


 成功していれば口の奥に、付与したアイテムボックスの魔力の渦が見えていて、触れるだけで様々な情報が頭の中に浮かぶんだけどね……


(浮かばないし何も感じないから失敗したと……)


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 まだまだ熟練度が低いから失敗した。使ってる奴は偶々成功したっていう……成功率とか成功失敗がランダムなのか……それとも成功する為の前提条件があるか……その辺も本には書かれてない。きっと書いた人は運任せ……と思ってたのかも、なぁ……ヤクニタタネーッ!

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