第14話 テオの暴走

「各国王がってロビンは言ってたからさぁ、ウィルス王国だけじゃなくてアレキーサ王国の王にもホー帝国の王にも話を聞きに行かないとダメなんじゃない?」

 私がのんびりとした声を掛けた。

 テオの動きが一瞬止まり、目が大きく見開かれる。数秒して、瞬きを始めたテオ。

「これは王しか知らないことなんだよね。例えば、うちの王国に向けてアレキーサ王国の王が魔物災害を引き起こすことだってできるってことだ。王のみが知る国同士の条約とかあるのか?その中でちゃんと他国へ魔物災害を引き起こすことを禁止されたりしてるのか?それとも国民は知らないうちに戦争が起こってる?これは王を倒すとか単純な話じゃないってことじゃないか」

 テオがブツブツと呟きながら思考の整理を始めた。こうなると、しばらくは自分の世界に入ってしまう。私はリックに目をやる。

「辛いね」

 私の一言にリックは少し悲しそうに頷いた。私を見て、尚顔をくしゃくしゃにする。

「フィラにとって王家のことは人ごとなんだな。いまだに兄上を父親とは思えないのか」

 私はリックが寂しそうにしているのは、同じように身内なのに、全然私が悲しそうじゃないからなんだとやっと気づく。言葉にされないと私はいつも分からない。

 私は目をつむり、ゆっくりと頭を横に振った。

「えっとね、現王に関しては、本当に他人事なの。でもハリーに関しては血のつながりを感じるし、生まれて七年目からだけど、父親っぽいことをたくさんしてもらったから、何も思わないことはないよ」

 そこでリックをもう一度しっかりと見た。愛情がよく分かっていない私だけど、幸せがよく分かってない私だけど、それでも、ハリーが私をとても大切にしてくれいることを知っている。私も多分、ハリーのことを育ててくれたゲオと同じくらい大切に思えるようになってきた。だからこそ、今魔物災害についてはっきりさせたい。

「現王から魔物災害に関しての認識を変えることができたらハリーは魔物災害を起こして人々を苦しめる必要はなくなるよね、たぶん。だから、今がすごく大事だと思ってるよ。うん、でも、本当に現王に関しては何も思わないなぁ。強いて言うとちょっと怖いかも」

「あぁ、怖いのか。そうか……」

 リックは寂しそうに頷いた。

 突然、テオが立ち上がった。椅子は倒れることはなかったが、勢いは良かった。

「これは各国の王に話をする必要がある。最終的には全員集めて話し合いをしなくちゃいけないよ!」

 目をギラギラさせている。

ーあ、これはテオが暴走してる。

「テオ、目がギラギラしてるよ。こういう時のテオは色々やらかすから、ちょっと深呼吸して」

 私が間髪入れずに声をかける。

「でも、これは僕の使命だ!絶対的にやるべきことよ。間違いは正さなきゃいけない!!」

 テオの拳がテーブルの上で握り込まれているのが見えた。体中に力が入っている。いつもの柔らかいテオとは違う。

「テオ、深呼吸!」

 私はもう一度、今度は大きな声で言う。少し、自分の声が低くなったように感じた。

 テオが私を見た。リックは私を見てからテオに視線を移す。私はと言うと、正面をまっすぐに向き、暗い森の先を見てた。

 テオが深呼吸の音が静かな森の中でやけに大きく聞こえた。

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