私の好きな俳句たち
佐伯 安奈
たかの知れし一生叮嚀にレース編む(山田みづえ)
作者:山田みづえ(1926-2013)
最初はやっぱりこの句。理屈抜きに大好きである。私は小説でも俳句でも女性作者のものが好きで、とりわけストレートな気質の人が好きだ。文飾の影に本音を潜ませるよりも、素の自分を衒いなく提示する人。
レースを編むというのは夏の季語になるらしい。手先の細かい作業をしていると、頭の中は無になる一方で、普段は眠っている思いもかけない考えがむくむくと起き上がる。
ふと、自分の一生なんかたかが知れている、とこの人は思ったのだ。
そんなこと言いなさんなと思いながらも、でも自分だってそうかもしれないと思う。唐突な言葉が意表を突きながら胸をえぐる。
しかし作者は、レースを編む手を止めない。そして「
一生という大きな範囲では、自分にできることなんか先が見えているが、いまこのレースを完成させるという小さな営みは、いい加減には済ませない。つまりは日々の小事を蔑ろにしないことが、「たかの知れし一生」への抵抗なのだ。
山田みづえさんは、国文学者山田
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