脇役の道〜愛する者のために運命を超える〜

聖 聖(ひじり さとし)

成就しない恋は苦しいだけ

実らない恋は虚しいだけである。


これは俺が24年も生きてきて感じたことである。


俺は約8年前に恋をした。それは俺にとっては初恋であり今までで唯一の恋である。


しかし、その恋は実ることはない。なぜなら彼女は次元が違ったからだ。


人間としての次元とかではなく存在してる次元が違うのだ。


そう、彼女はゲームの中の一人の登場人物なのだ。


『エブクリフのリーブラ』


それは俺が愛したゲームの名前だ。このゲームは王道のロールプレイングゲームである。


現代の日本のような国で主人公達がダンジョンをクリアしたり戦争で戦ったりし、世界を平和に導くというベタなストーリーである。


そんな中最も注目されるのはその無数のエンディングにある。


戦闘あり笑いあり恋愛もあり18歳以上限定の場面もあると世間では神ゲーと称された。


そんな神ゲーをさらに神ゲーとするところはキャラクターに完璧な声が吹き込まれており、ストーリーが作られていて、見た目も最高であることである。


そんな神ゲーな中のあるキャラに恋をした。


彼女の名前はソフィア•クラリス。彼女は綺麗な翡翠色の目にきらめくう銀色の長髪が特徴的な美しく可愛く強い子であった。


しかし、彼女は負けヒロインであった。1万を超えるエンディングがある『エブクリフのリーブラ』において彼女のルートは存在しない。これはすべてを試した俺がたどり着いた結論だ。どんなに強化したり関係値を上げたところでいわゆる勝ちヒロインになることはない。


彼女が正ヒロインになることはない。それが俺の恋心をさらに強くした。


「俺なら彼女を幸せにできるのにな〜。」


そんな事を言っても叶わない恋だということは自分でも気づいている。しかし俺は諦められないのである。例え自分でなくていいから彼女を幸せにしたいと思える程に彼女に恋をした。そんな彼女に幸せがないというのはとても自分にとって辛かった。


「はぁ...俺が『エブクリフのリーブラ』の世界に入れたらな~。」


最近では親に結婚をせめられている。叶わない恋を最近諦めようとも思っている。


しかし、どうしても諦められない。


「よし、もう一回別のルートがないかプレイしてみるか。」


そうして再びPCの電源をつけ『エブクリフのリーブラ』を開いた。


主人公の見た目を設定して名前を入れ、プレイを押す。


すると普段は見かけない文章が表示された。


〘あなたは選ばれました。この世界を愛し常に真の終わりを求める貴方に送ります。〙


この文章とともにあるリンクが送られた。


「これは詐欺とかじゃないよな。」


どう見ても怪しいが好奇心が邪魔して見送れない。


「まぁ詐欺でもいいや。どうせこれ以上エンディングないし。」


俺はこのリンクを素直に開いた。


するとダウンロード中という表示が出た。


「どうやら詐欺じゃなさそうだな。」


一安心である。


「ダウンロードが終わるまでキャラクリ頑張ろ。」


ダウンロードが90%を超えたころにはとんでもなくイケメンなキャラクターができてしまった。鳶色の髪に空のようにきれいな蒼色の瞳で切れ長な目に高い鼻という顔だけでもスペックが高い。さらに、身長が183cmと高く、スラッとした細マッチョである。名前は天真(てんま)だ。


「我ながら素晴らしいキャラができたものだ。3時間も費やした甲斐があったものだな。」


自分の作ったキャラを見ているとダウンロードが終わったみたいだ。


〘ダウンロードが終わりました。特殊コンテンツ《モブの人生》を開始します。最近作ったキャラクターを見た目に反映します...成功。家系を決定します...上流階級蒼井(あおい)家に決定しました。続いてスキルを決定します...エラーもう一度会得を試みます...エラーもう一度会得を試みます...エラー...会得スキルをランダムにします。〙


とどんどんいろんなことが勝手に決まっていった。決まったことをまとめると俺はどうやら今から蒼井 天真としてプレイするらしい。見た目はさっき作ったキャラで持っているスキルは不明ということである。


「よし、プレイしよう。」


そう言うと体がまるで吸われるような感覚に襲われた。


「っ何だ.......あっ」


意識を失った。


――――――――――――――――――――

はじめまして。聖(ひじり) 聖(さとし)です。


まずこの作品は僕が初めて書いた作品です。楽しんでいただけると幸いです。


また誤字脱字の指摘は優しくしてもらいたいです。

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